明日を掴む
















試合当日。約束の時間に遅れたが、練習をしていたからだ。
将が本間キャプテンに皮肉を言われていたが、全く気にした様子はない
その後夕子ちゃんが勝に頭を下げていた。夕子ちゃんの早とちりも原因の半分だからな。だが将は、訂正をさせる気は無い。
やがて、準備が整った10人がフィールドに立つ。


「大丈夫だよ、夕子ちゃん。あいつらは負けない」


心配そうに将たちを見る夕子ちゃんに声を掛け、あいつらのベンチ位置に移動した。


ピィィィィィ


そして始まりのホイッスルが鳴り響いた。














マンマークが上手く作動し、ボールは先輩たちの陣地から出ていなかった。時間だけが過ぎて行き、苛立った先輩が将を強引に弾く。
すかさず竜也がこぼれ球を拾い、攻撃のチャンスが来た。狙い通り竜也に数人付き、将がフリーになる。


「今だ!」


ゴール前に走った将に、マークを振り切った竜也がパスを出す。追いかける形になる少し遠いパスに、とびかかるように将が滑り込んだ。
ザンッ、というゴールネットが揺れる音が耳に入った。


「よし!」


将が見事にスライディングシュートを入れ、先制点を獲得した。


「やったあー!!」


声を掛けに近寄った高井の顎に将のグーパンチが繰り出された時、前半終了のホイッスルが鳴った。














ハーフタイム。後半の作戦を話し合う。


「次は竜也を潰しにかかって来るだろう。竜也を潰せば何とかなると思ってるに違いないからな」

「これからは風祭に限らず、フリーになったらあがれ。そいつにパスを出す」


後半は少々荒れるだろう。正念場だ。


「大丈夫。お前達は勝てる」


全員が頷いた。そして、後半開始のホイッスルが鳴った。














思った通り、後半は竜也の足を狙ってきた。何度も何度も、痛めつけるように。竜也はそれでも立って走るが、あれは捻挫してしまっているかもしれない。
竜也が痛めつけられているのが見るに堪えなくなったのか、将が走った。だがすぐに取り返され、カウンターを食らい、同点となった。


「落ち着け、将。お前が背負いすぎてどうする」


派手に吹っ飛んだ将に、竜也が声を掛ける。ぱんっと顔を叩き、将が再び走り出す。顔つきが、変わった。














花沢が竜也にパスした。ボールの先には竜也と、その先に、将。すかさず竜也にマークが動いている。これは、いける。


「「水野(竜也)、スルー!!」」


俺と将の声に反応し、受け取ろうとした足を引っ込めて竜也はボールをスルーした。先輩達は竜也に気を取られ過ぎていて、将が完全にフリー。


「「いけー!風祭(将)!!」」


将がボールをゴールにたたき込む。そして、後半終了のホイッスル。竜也たちの、勝利だ。














これで晴れて竜也がキャプテンになったわけだが。
竜也の練習メニューを見て、3年が全員、1年も脅されてかどうかわからないが、ほとんどやめた。2年も残っている者はほとんどいない。
仕方がない、と言えばそれで終いだ。竜也の練習メニューは確かになかなかきついだろう。
人数が減った事はさておく・・・ことはできないが、ひとまず別の所へ目を向ける。
人影の少ない公園で、ポーンとボールを跳ねさせるたびに揺れる金髪。


「お前は戻らないのか?」


声を掛けると、そいつはボールをこっちに蹴って来た。


「まだや。もう少しおもろうなってからやないとな」


パスされたボールをポーンと返して、次の言葉を口にする。


「そうか、待ってるよ、シゲ」


佐藤成樹


ずばぬけたサッカーセンスをもつ天才型。こいつは元サッカー部で、サッカー部がつまらないからという理由で辞めた。本当は、それだけじゃないはずだが。
だが今なら、これからなら、戻って来てくれるかもしれない。こいつが戻れば、桜上水はもっと強くなる。

もっと、上へ行ける。














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名前変換が、な、い・・・←

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