よろしくマネージャー
泣きたい。
転校初日にしてテニスボールを手ひどくぶつけられ、あげく強制的にテニス部のマネージャーにさせられ、
あげくレギュラーみんなを名前で呼ばなければならなくなるなんて!
人見知りの私には残酷すぎた。泣きたい。しかも合宿にも参加しなければならないとか・・・泣きたい。
あわよくばあの10m先にいる幸村・・・いや、精市の後頭部にボールをぶつけてやりたい。やったらやったでこわいからやらないけど。思うだけにするけど!
「いま、何か変な事考えてなかった?」
「ひいぃっ!!?」
どこぞの魔王様の声が背後からして振り向くと、そこには幸村精市大魔王様が。あれ?じゃああっちは?
まさか瞬間移動してきたのか?と思って前を見てみる。確かにそこには精市の後ろ姿が。
あれ?あれ?と思ってきょろきょろ見比べてたら、理解してくれたのか、精市が「あぁ」と声を漏らした。
「あっちを俺だと思ったのかい?一架!」
「いちか?」
呼ばれた、前方の精市(?)が振り向く。あれ?顔は精市っぽいけど、あれ?
近づいて来て、また違和感を感じる。
「・・・背が低い」
「それでも夏歩より大きいよ、一架は」
「・・・胸が、ある?」
「女の子だからね、一架は」
「でもおんなじ顔」
「双子だからね、俺と一架は」
「ほぉ、双子・・・双子!?」
改めて二人を見比べる。確かに、同じ顔。でも、一架、さん、はちょっと女の子っぽい顔をしている。
精市も女の子っぽ・・・いや、なんでもないですその微笑みはこわいです。
「その子が、今朝弦一郎がボールぶつけて気絶させちゃった子?」
「そう、吉井夏歩。B組の転校生」
「幸村一架です。マネージャーやってます、よろしく」
にこりと笑う一架さんは精市と同じ顔なのに精市と違って純粋な笑顔だ・・・。て、あれ?
「マネージャーいるなら私いらなくね?」
「え?」
「うん、いらないじゃん、そんじゃ!!」
「はいストップー」
「ぐえぇっ!!」
首!首!しまってる!!
逃げダッシュしようとしたら首根っこ掴まれた。え、ちょっと待って今全力疾走だったのにこんなあっさり。
しかも片手でつかんでるとかおかしくないか。
「マネージャーは二人くらいいるのがちょうどいいのよ。人数も多いしね。まぁ、弦一郎にボールぶつけられたのが運のツキってことで」
訂正。一架さんはやっぱり魔王の血筋のひとでした。
「えー・・・でも一架さんいるならほんと私いらなくない?だって敏腕マネージャーでしょ?」
「敏腕かどうかはわかんないけど・・・でも夏歩も前の学校でもマネージャーしてたんでしょ?」
「それ蓮二からの情報だろ、ねえ!?あいつ一体どんだけ人の情報漏らしまくれば気が済むんだ!!?そしてあっさり名前呼びですか一架さん!!」
「呼び捨てでいいよ、タメなんだし」
だから人見知りなんですってば私いいいいいいい!!!
「呼ぶよね」
「・・・はい、一架・・・」
「敬語は?」
「・・・うん」
負けました。
「でもさ、ほんと、よろしくね」
「うん?」
突然の真面目モードな一架に首を傾げる。
「マネージャーって、みんなを支えるのが仕事だからさ、練習面でも、メンタル面でも」
「・・・うん」
「だから、夏歩の明るさでみんなを元気にしてあげて」
「一架は?」
一架だって、別に暗いってわけじゃないのに。そりゃ、私のほうがやかましいし、明るいん、だろうけど。
「私は夏歩みたいに盛り上げて元気にしてあげるってのはできないから」
言って苦笑する一架は、やっぱ女の子だなって思った。精市とはまた違う笑い方。
「なりゆきでなっちゃったマネだけど、みんな夏歩を必要としてるのは確かだから」
「・・・うん」
必要としてるって言われるのは、嬉しい。
「やれることは、やるよ」
「うん、そうね。やれることをやろう」
お互いに笑顔になる。あ、なんかいいな。こうやって女友達と笑い合うのって。やっぱ。
不安もいっぱいだし、めんど・・・いろいろ大変なこともあるだろうけど、やれることをやってみよう。
「あ、ちなみにサボったりしたら容赦なく引きずってコートに連れてくからね」
「・・・・・」
この、パワーSな同業者さんと一緒に。
――――――
オチが!見つかりません!でした!
彼方さんとの相互記念!
4人娘さんたちの中からお借りしようと思って、夏歩ちゃんにしました。一番好きです、夏歩ちゃん。
ただ、ツッコミとか魔王幸村とか書き慣れないんでイマイチ・・・w
そして夏歩ちゃんのキャラが迷子ですいません・・・^q^しかも夏歩ちゃん視点・・・
ともあれ、これからもよろしくお願いします!
2012.01.14 冴えることも偶には有る 冴刃