はじまりの少女




















「今日からおまえもこの家の一員だ」





















ある晴れた日のこと、歳の離れた可愛い弟たちが家を出ていくのが見えて、は二人に声をかけた。


「アスベル、ヒューバート、どこにいくの?」

「げ、姉さん」

「げ・・・?」


兄であるアスベルが肩をすくめてゆっくり振り返る。弟のヒューバートも目を丸くしてを見た。


「ちょ・・・ちょっとそこまでだよ」

「どこまでよ?」

「そ、そこまでだよ!」

「だからどこまでよ?」

「う〜〜〜〜」


慌て、ごもり、意地でも口を割らない態度。言いつけをやぶろうとしているのは明白だ。禁じられている裏山へ行くのだろう。は弟たちの行動を把握してため息をついた。


「・・・二人だけでいくの?」

「そう、だけど」

「はー・・・シェリアを巻き込もうとしていないだけマシ、か。怪我しないように気をつけなさいね」

「!うん!いってくる!!」


が許してくれたのがわかると、アスベルたちはうれしそうに駆けていった。弟たに甘いなぁと思いつつ、は街の見回りに向かうのだった。




















数時間後、帰ってきた弟達が、彼らの幼なじみであるシェリアを含めても三人ではなく四人になっていて、は目を丸くした。


「アスベル、ヒューバート、その子は・・・?」

「あー、えーっと・・・」

「兄さん、姉さんは知ってるんだし、正直に話そうよ」

「うー・・・」


アスベルはちら、とその、アスベルよりも少し年上と思われる少女を見た。少女は状況がよくわかっているのかいないのか、首を傾げている。


「じつは、裏山の花畑にいたんだ」

「花畑に?」

「それで、記憶喪失みたいだから連れてきたんだよ」

「・・・あんたは」


が額を押さえてため息をつく。なにも考えずに連れてきたのだろう。指の間からちら、と彼女を見る。にも覚えのない少女だった。


「それで、もし街の人間ならフレデリックにきくのがいいってシェリアが言うからさ」

「確かにフレデリックは街の人に詳しいけど・・・アスベル、ヒューバート、父さんに怒られるのは、覚悟しなさいね」

「げ」

「ひゃっ」


忘れてた、とでも言うようにアスベルが顔を歪める。ヒューバートが想像したのか身を縮こまらせた。


「ともあれ、まずはフレデリックね」


は弟達と妹のように可愛がっているシェリアと、見知らぬ少女を連れて屋敷の庭へと進んだ。



















フレデリックにも少女の素性はわからなかった。フレデリックが街の人にきいてみると申し出たのをアスベルは断り、自分達できいてまわるといった。そして三人を連れて街の方へ戻っていく。その後ろ姿をはフレデリックと共に見つめていた。


「いったいどちらのお嬢様なのでしょうか・・・」

「さてねぇ・・・アスベルはなんか兄貴風吹かせちゃってご満悦みたいだし・・・」

「大事にならないとよいのですが・・・」

「それだけが心配ね・・・」


はぁ、とひとつため息をつく。の手前行動には起こさないが、おそらくフレデリックもため息をつきたいところだろう。少年少女たちの無事を願いながら、二人は屋敷の中へと入っていった。




















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