ND2018 レムガーデン・レム・21の日
月日が流れるのは早いもので、・がマルクト軍へ志願し、約二年がたっていた。また、小尉だった彼女はいつしか少佐へ昇進し、ジェイド・カーティス大佐の右腕、『死霊使いの影』と言われるようになっていた。は目を凝らし、先を見つめる。もうすぐ上司があの場所から出てくるだろう。早急に乗船させなくては。やがて、小船がその街の方角からこちらへ向かってきた。は声を張り上げて部下へと指示をする。
「大佐がお戻りよ。急ぎ乗船準備を!」
は!と声をあげる部下を見送り、また小舟へ視線を戻す。風になびくジェイドの栗色の髪と、ツインテールの少女の黒髪、そして、高貴なる人物の緑色の髪。
「・・・本当にまた会うことになるとは」
正直、思わなかった。は小さく息をつき、自分も彼らを迎える為に甲板を離れた。
帰還したジェイドを敬礼で迎える。少年少女を引き連れた彼はまるで保父のようだったが、彼に保父はライス一粒ほども似合わないので口にはしないでおいた。心の内を読まれたのか意味ありげな笑みを向けられたあと、ジェイドは少年少女らに顔を向けた。
「イオン様、アニス、彼女は・。私の補佐官です」
「初めまして。道中よろしくお願いします」
「え?」
思わず声をもらしてしまい、三人の視線がリンデロイに集中する。思わず「あ、いえ」とつなぎの声を入れ、しばし考えたあと、言葉にした。
「イオン様とお会いするのは実は、初めてのことではないので・・・」
「えっ」
今度はイオンが声をもらす番だったが、イオンは身に覚えがないという意味合いでとり、は続けた。
「思えばイオン様のような方が私ごときを覚えていらっしゃるはずもありませんでした。ご無礼致しました」
「あ・・・いえ・・・」
イオンも何か思うところがあったようだが、続きはなかった。は次に、少女のほうへと視線を向ける。
「そちらは初めましてですね。新しい導師守護役ですか?」
「信託の盾騎士団導師守護役所属、アニス・タトリン奏長です!」
ピシッと背筋を伸ばす姿は、幼いながらにしっかりした印象を受ける。
「マルクト帝国第三師団所属、・少佐です。イオン様、アニス、ともによろしくお願いいたします」
「ではもう夜も更けていますし、お部屋まで案内しましょう。二日ほどでマルクトに入る予定です」
「はい、よろしくお願いします」
イオンとアニスがジェイドに連れられて歩いていく。その背中を見送りながら、は感じた疑問と違和感を思い出していた。
(なんだか雰囲気が違うし、側付きの守護役も違う・・・二年経って変わったということかしら・・・?)
疑問をぶつける相手がいないためは頭を振っただけで終わらせ、休息をとることにした。