同じ職に就任
放課後。私はスミレちゃんに、男子テニス部のコートに連行された。
「今日からマネージャー兼練習相手とある越前だ」
「スミレちゃん、私の意志は?」
「嫌なのかい?」
「ううん、別に」
ならいいじゃないか、とつっこまれる。強制的になるだろうことはわかっていたし、とりあえずの確認をしようかと。
しかし、最初から兼任業を付けて大丈夫だろうか。納得していないと言う顔がちらほら見えるが。
「はこう見えて実力者だ。プレイヤーとして、もマネージャーとしてもな。1、2年のときも氷帝で兼任業を務めていた」
確かに過去の経歴を例に出すのは一番わかりやすいことだけど、スパイと思われないかが心配である。
あと、プレイヤーとしてもはいらない。
現にざわめきが大きくなったわけだし。
「納得いかない奴もいるようだね・・・。よし、それなら誰かと試合させよう。それなら実力もわかるだろう。手塚、どうだい?」
「いやいやいきなり全国区とか勘弁してください」
全国区と試合するのは楽しいけど疲れるから嫌だ。
「なら、不二はどうだい?」
「なんでNo.2?なんで強い順なの?」
「おや?跡部くんに勝ったときいたが」
「あれは景吾が腹下してて・・・!!ってその情報どこから!?」
どこかで誰かの眼鏡がキラーンと光った気がした。あ、なんかごめん、景吾。余計な情報流したかも。
しかしつっこみばっかだな私。こんなにつっこみする子だっけ・・・?
「俺がやります」
「え、結局?」
名乗り出たのは青学テニス部部長手塚国光。左利き。全国区。
本人は何故かやる気満々でコートに入っていった。前にやった時、国光が勝ったのに。
逃げられないと悟り、ため息をついてラケット片手にコートに入った。
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
強い・・・!!前とは比べ物にならないくらい強くなっている。2年もたてば当然と言えば当然だけど。
「ちょ、待って!相手が悪すぎる強すぎる!!」
「さぁ、油断せずに行こう」
「油断なんてしてな・・・え、なに、あんたボケキャラなの?」
私もつっこまれることが多いけど、それは Going my way だからであって・・・国光は本当にボケキャラなのかもしれない。
「全国区の相手はさ、疲れるんだよ?」
「1ゲームとっといてよく言うよ」
スミレちゃん、これは独り言だから。
それに1ゲームとっていると言っても1−4。今からひっくり返すのは無理だ。
「・・・前は、6−4だったか」
「あらー・・・よく覚えていらっしゃいますこと」
あのときはものすごく必死だったから。力を見せるだけの今は、『本気』はいらない。
「こんなものではないだろう、お前の力は。・・・『本気』は、出さないつもりか」
「こんなとこで出したくないからねぇ・・・。でもまぁ、このまま1ゲームしかとれないのは寂しいから・・・」
ぐっとラケットを握りなおす。
「もうちょっと、やる気見せようかな」
サービスは、私。
やはり、というべきか。ただのラリーでは落としてくれない。ツイスト打っとくべきだったか。
私は、ロブを上げて誘った。国光は思った通り誘いに乗ってくれ、スマッシュを打つ。決まる、と誰もが思っただろう。
「えっ・・・!?」
しかし私が返したボールは大きく弧を描き、ラインギリギリに落下した。
「不二の、羆落とし・・・?」
「え?」
誰かが言った。『不二の』って、あれ?
「え、これって侑士の・・・忍足のじゃないの?」
「・・・不二も羆落としを使うんだ」
「へー・・・」
1年の始めから使っていたのを見ていなかったら、侑士がパクッたと思ったかもしれない。さすが氷帝の天才と青学の天才。
「ッはー!!疲れたぁー―っ!!」
「はしたないねぇ・・・」
大の字に寝転ぶとスミレちゃんに溜息をつかれた。大丈夫、スカートじゃないから。
試合の結果は、追い上げはしたものの、結局3−6で私の負け。まぁ当然と言えば当然だ。お互いに本気でなくても、国光の方が実力が上なのだから。
起き上がって握手すると国光は何か言いたそうだったけど、あえてこちらからは何も聞こうとしなかった。
国光に3ゲームとったということで実力を認めてもらい、晴れて(?)青学男子テニス部マネージャー兼練習相手に就任。
これで中学最後の年もテニス生活だ。
「私の事は名前でよろしくー。苗字で呼んだらボディーブローね」
「「!!?」」
☆がつきそうな笑顔で言ったら、顔を青くされました。
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