オレンジのナンパ師
地区予選が終わり、またいつもの風景に戻った・・・と思いきや、そうもいかなかった。
「嫌なくらいいるなぁ、偵察。私もしてこようかな」
「お前のはサボリだろう」
「失礼な。遊びに行くと言ってちょうだい」
「・・・・・」
駄目だろう、って目で見ないでよ、国光。それにしても偵察が多くて嫌になる。しかも堂々と。隠れても嫌だけど。
氷帝の時はギャラリーの方が多くて気にならなかったもんなぁ・・・。
ふと水飲み場の方を見ると、英二と周助がいた。周助が蛇口を押さえて・・・。
「うわっ!カ、カメラが・・・!!」
水をホースで撒くみたいに偵察員にぶっかけた。
「うわぁ・・・周助えげつなー・・・」
さすがというかなんというか。
休憩が終わって練習が再開されようとしているが、リョーマはまだ来ていない。図書委員だからって、堀尾は言っていたけど。
「・・・・・」
お迎えに行くべく、私はこっそりコートを離れた。
女子テニス部付近。なぜか制服のままゴムひも付きテニスボールを打っているリョーマが。
ピンクのラケット、リョーマが持つとすごく違和感。桜乃ちゃんのだろうか。
「リョ・・・」
声を掛けようして止まる。リョーマたちの前にいる白い学ラン・・・あのオレンジ頭は、Jr.選抜にも行った、山吹中の千石清純だ。
ボールの最高飛距離を見切って立ち止まっているようだ。でも、リョーマは使っているのは右手。
左に持ち替えて力を込めたら・・・思いっきり顔に当たって気絶してしまった。
「あーあ・・・なにやっちゃってんの・・・」
「さん」
完全にのびてるな。後で冷えタオルでも乗せてあげるか。
「リョーマ、はやく終わらせて練習行きなさい」
「はぁーい」
パサ、というよりポテ、かな。水で濡らしたタオルを千石の顔に乗せてやる。
広げると・・・うん、白ランの効果もあって冗談キツくなっちゃうからやらない。
ちなみに木陰に引きずっておいているので通行の邪魔にはならない。
「リョーマが悪い事したねぇ。放置しといても大丈夫だとは思うけど・・・」
ここは女子テニス部の近くだ。千石はナンパ師としても有名、だったはずだから、心配だ。
「千石清純ねぇ・・・実力者ではあると思うんだけど」
「俺のこと知ってるの?」
「へ?」
ガバッと千石が起き上がって両手を握ってくる。気付いてたのならさっさと起きなよ・・・それから手を離して。
「君も知っての通り、俺は山吹中の千石清純!君の名前は?」
「・・・越前」
「ちゃんだね!俺のことは『キヨ』って呼んで!」
うーん・・・やっぱりナンパ師、軽い男だ。
「はいはいキヨ。で、青学に何の用?」
「もちろん偵察に!」
「女テニの?」
「・・・あは☆」
かわいくなーい。
「ちょちょ、ちょっと待ってよちゃん!」
放置して立とうとしたらキヨに止められた。
「何?私練習に戻らなきゃ」
「ちゃんは女テニ?」
「あいにくだけど違います」
「じゃあ、男テニのマネージャー?」
「そ」
だから離して。
「ウチに来ない・・・!?」
「行かない」
「ぐはっ・・・!!」
ボディーブローをかまして黙らせる。丈夫そうだから問題ないだろう。
あの軟派なところが無ければいいセンいってるんだろうけどなとおもいながら、私は練習に戻った。
「勝手にどこへ行っていた?グラウンド10周!」
「げ」
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