転校先には懐かしきひと
青春学園中等部の始業式の日。つまり、転校初日である。
「失礼しまーす」
職員室より音楽室のほうが縁があって職員室に入り慣れない私は、なんとなくおそるおそるドアを開けた。
すぐに「おぉ」という、聞き覚えのある声が耳につく。
「よく来たな、。こっちだ」
「スミレちゃん」
「学校でくらい先生と呼ばんかい」
でも学校以外で会う事ってあまりないと思うけど。とりあえず、この言いつけは守りません。
「まさか、スミレちゃんが担任・・・?」
「残念だが違うよ。なんだい?あたしが担任だと不都合でもあるのかい・・・?」
「い、いや、別に」
サボりにくいじゃん、なんて口が裂けても言えない。
そのあとスミレちゃんに担任の先生を紹介してもらい、教室に行くことになった。
どうやら私が入るクラスは1組らしい。誰かテニス部がいればいいなと思いながら、教室内からの先生の言葉を待つ。
おそらく男子テニス部マネージャーは確定事項だから、テニス部=男子テニス部だ。
しばらくしたら呼ばれたので中に入る。
「越前です。あと1年ですが、よろしくお願いします」
挨拶して軽く礼をする。と、頭を上げたときに一人の男子と目が合った。
眼鏡の彼はそのレンズの向こう側お驚きの色にしていて・・・
「え、国光?」
「やはり、か・・・」
教室内がざわつく。なぜ、と思っていたら先生が答えてくれた。
「手塚を名前で呼ぶ奴も珍しいが、手塚が誰かを・・・それも女子を名前で呼ぶなんてもっと珍しいなぁ。ちょうど手塚の隣が空いているし、あの席が越前の席な」
そういえば名前で呼んでほしいと言ったときも、戸惑いがちだったような。
改めて国光を見てみる。なるほど、確かに、堅そうだ。
初めて会った時も同じ歳とはおもえなかったけど、益々年相応から離れているような気がする。
「えーと・・・2年ぶり?」
「そうだな。姿をみかけてはいたが、直接きちんと話すのは2年ぶりだ」
そう。試合会場で見かける事はあっても、するのは軽い挨拶程度で、会話はしていない。今思えば、なぜしなかったのだろう。
「これからよろしく、国光」
「・・・あぁ」
表情が変わらなくて読み取りにくいけど、再会を喜んでくれた、ということにしておこう。
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