浪速へGO!





















明日はフリー。休日だ。リョーマと遊ぼうかと思ったけど、明日は3人組と一緒に出掛けるらしい。残念。
どうしようかな、と携帯電話を持て余していた時、不意に携帯が震えた。このにぎやかな音楽は。


「はい」

『あぁ、ちゃん?今えぇか?』

「うん、いいよ。どうしたの?謙也くん」

『明日ヒマか?ヒマやったら来ぃへん?俺ら部活あるけど、そのあと約束しとった美味いたこ焼き屋連れてったろう思うてな!』


相手は大阪四天宝寺中の忍足謙也くん。氷帝の天才眼鏡、忍足侑士の従兄弟だ。
それにしても、明日ヒマかって東京にいる人に突然きくのはどうかと。


「ヒマだけど・・・急だね」

『あー、すまん!最近忙しゅうてなかなか連絡できんかったんや』

「まぁ、大阪までならなんとかなるけどね。それじゃ、明日行くね」

「おう!待っとるで!ほなな」


ぷつ、と電話が切れる。連絡、電話じゃないとダメだったのかな。謙也くん、メール派じゃなかったっけ?


「・・・ま、いっか」


1つ息をついて、私は明日の準備を始めた。
























急な予定だったから指定席はとれなかったけど、休日にしては自由席も空いていて助かった。
窓の外を見てみれば、東京タワーのような大阪のシンボル、通天閣が見えていた。

























やってきました四天宝寺中!
この門をくぐるときは笑いを取らなければならない、らしいけど、私は四天宝寺の生徒じゃないから謹んで辞退する。
何度目かでもう慣れてしまったテニスコートまでの道を歩く。ひょこっとコートをのぞいてみれば、誰もいなかった。


「・・・あれ?」


ランニングにでも行っているのだろうか。それとも休憩?なんにせよいないのでは外側から来た意味が無い。入口側へ行こうと踵を返す。


「・・・・・」

「・・・・・」


と、誰かがそこに居た。視界に入ったのは、顔では無かったけど。


「・・・でかっ」

「でかくて悪かね」

「あ、いや、悪い意味で言ったんじゃなくて・・・」


思わず口に出してしまったのが、気に障ってしまったらしい。
だって、この人ホント、でかい。190はあるよ。樺地とどっちがでかいかな・・・。


「ここの生徒じゃなかよね?」

「あ、うん。ていうか、あなたも違うんじゃ・・・?」


大阪弁じゃないし。この人のは、どこの方言だ?ん・・・?待て、この人どこかで・・・。


「俺はこの春大阪に越して来たんよ。俺、3年の千歳千里ばい」






千歳千里





 
「って、獅子楽中の・・・?」

「よぉ知っとぉねぇ」

「九州二翼の一人だし・・・」

「んで、あんたは?」


おっと、驚いて忘れていた。


「私は青学3年、越前

「あぁ、あんたが噂のちゃんたいね」

「・・・噂、って」

「謙也が話とったとよ?今日はちゃんが来るから楽しみやーってはりきっとったばい」

「へー・・・」


変なこと吹き込まれてなければいいけど・・・。まぁ、ここの子たちはそんなことしないか。


「で、みんなは?」

「あぁ、みんなは「あー――っ!!スパイやー―!!!」

「「は?」」


千歳の言葉を遮るようにして発せられた大声に、そろって間の抜けた声が出る。声のした方を見てみれば、またもや見知らぬ少年がいた。
リョーマくらいの身長で、なぜか豹柄のタンクトップ、背には木製のラケット。新入生だろうか。


「千歳を呼びにきたらスパイにあうとは・・・ワイ、白石に知らせてくるで!」

「ちょ、待ち金ちゃん!!・・・あー・・・行ってしまったばいね」

「・・・・・」


スパイ扱いがなんか懐かしい、なんて思っちゃった私は・・・ダメなやつだな。




























「こっちや白石!」

「なんやねん金ちゃん。千歳おったんか?」

「千歳と一緒にスパイがおったんや!」

「スパイ?」

「せや!なんやこう・・・背は財前よりちーと低くて、白い帽子かぶっとって、目は猫みたいな・・・」

「・・・なぁ白石」

「・・・なんや謙也」

「俺、めっちゃ心当たりあんねんけど」

「奇遇やな、俺もや」





























「やっぱちゃんか」

「あ、蔵」


しばらくすると、さっきの子に続いて、蔵と謙也くんがやってきた。


「悪いなぁ、ウチのゴンタクレが変な言いがかりつけてもうて」

「(ゴンタクレ?)いいよ。まぁ、今日の格好が格好だし」


今日の格好は、以前立海に行った時のような・・・Tシャツにズボン。まだ夏じゃないけどなんとなく暑いから、髪は帽子の中。
どこかのスパイと間違われてもおかしくはない。


「元気なルーキーが入ったじゃん」

「あぁ、こいつはごっつ強いで!」

「へぇ・・・」


リョーマとどっちが強いかな。

ふと話のタネの彼を見てみると、きょとんとして蔵、謙也くん、そして私を見ていた。


「なんや?知り合い、なんか?」

「せやで。この子は越前ちゃん。俺らの友達や」

「なんや!そうやったんか!てっきりスパイかと思うてもうた!」

「あはは・・・」


乾いた笑いしか出ない。


「ごめんな。ワイの勘違いで、イヤな思いさせてもうて」

「いいよ。悪気があったわけじゃないし、謝ってくれたし。私は気にしてないよ」

「・・・・・」

「?」


首を傾げる彼に、私も首を傾げてしまう。・・・この子可愛いな。


「・・・ねーちゃん、なんか・・・?」

「え」

「は」


は、は誰だったんだろう。謙也くんかな。


「え、ちょ、金ちゃん?まさかちゃんのこと男やと思うとったんか?」


蔵がきけば、こくんと素直な頷き。・・・あぁ。


「スパイ疑惑納得・・・」

「あああ・・・ほんま堪忍なちゃん!このアホ性別の判別もできひんとは・・・!!」

「あー・・・いいの謙也くん。慣れてるから」


悲しい事に。
そういえば立海でのスパイ疑惑も、2回とも男と間違われたんだっけ・・・。


「二重に失礼な事を・・・金ちゃん」

「ま、待ってや白石!ワイほんまにわからんかったんや!せやから毒手はやめてぇな・・・!!」


・・・毒手?蔵の左手の包帯の下、毒手だと思ってんのか、この子。

思わず笑ってしまうと、みんなの視線がこっちに向いた。


「じゃあお詫びに、君に自己紹介してもらおうかな」


言うと、彼はぱぁっと顔を明るくさせた。


「四天宝寺中1年の、遠山金太郎や!よろしゅー!」

「私は青学3年の越前。よろしく、金ちゃん」


みんな金ちゃんって呼んでるようだし、金ちゃんでいいよね。で、あとは・・・。


「?どげんしたと?」


じっと千歳を見ると、こてんと首を傾げられた。・・・でかいのにかわいいな。


「よし、『ちーちゃん』で」

「へ?」

「ちーちゃんてかわえぇなぁ千歳!」

「けどあんま違和感あらへんのが不思議や・・・」


けらけらと謙也くんが笑い、蔵はうんうん頷いている。


「よろしく、ちーちゃん」

「よろしく頼むばい、


にっと笑うと、ちーちゃんも笑ってくれた。
四天宝寺はやっぱ楽しいなぁ。























その後四天宝寺の練習を見物、また混ざってみたりして、時間を過ごした。
部活後に食べたたこ焼きは、今まで食べた中で一番おいしくて、勢い余って謙也くんに抱きついてしまった。見事に固まっちゃったけど。
























そんなこんなして、帰らなければいけない時間で。


「もう帰ってまうんか」

「今日は泊まりの準備してきてないしね。また今度、泊まりで来るよ、蔵」

「来てくれておおきに。また来てや」

「こっちこそ誘ってくれてありがと、謙也くん。今日来てよかった」

ちゃん、今度はワイとも試合してぇな!」

「いやー・・・金ちゃんパワフルすぎて・・・」

さん、今度は俺とぜんざい食いに行きましょ」

「うん、楽しみにしてるね光!」

ちゃん、次来た時こそガールズトークやで!」

「あはは・・・トークのネタがないけどね、小春ちゃん」

「次こそは完璧にマネたるからな!」

「・・・期待して待ってるよ、ユウジくん」

「もし、鉄に会う事があったらよろしゅういってくれ」

「不動峰は同じ地区だから会うかもね。了解、銀さん!」

「気ぃつけてな」

「ありがと、健ちゃん」

「今日、に出会えて良かったばい」

「私もちーちゃんや金ちゃんに出会えてよかった」


そして新幹線の扉が閉まり、手を振って彼らと別れた。





























「・・・千歳」

「なんね?謙也」

「何一人だけちゃんのこと呼び捨てにしてんねん」

「俺がどう呼ぼうと俺の勝手たい。ばってんもどうこう言わんかったとよ」

「そ、れはそうやけどなぁ・・・!」

「まぁまぁ落ち着き、謙也。呼び方なんて気にしたらあかんやろ。千歳なんて『ちーちゃん』やで?」

「・・・それもそうやな。って・・・自分が呼び捨てされとるからっていい気になっとるんやろ白石・・・!」

「別にえぇ気にはなってへんけど。呼び捨てなら財前かて呼び捨てやし」

「財前は年下やろ!」

「年下やからって狙ってへんとは一言も言ってないすわ」

「な・・・!」

「呼び方で勝敗決まる訳じゃなか。ようはにどれだけ気に入られるかたい」

「なんやこの言い争いにメンツが増えたなぁ」

「もう、ほんまちゃんは罪作りな子なんやから!」

「健ちゃん、銀。罪作りってなんや?ちゃん悪い事したんか?」

「金ちゃんはまだ知らんでえぇわ・・・」

「せやな・・・」
























―――――

最後の台詞の嵐を完璧に判別できたらお見事(笑)わかるとは思いますが。
ちなみに四天メンバーの呼び方呼ばれ方補足↓

白石:ちゃん/蔵
謙也:ちゃん/謙也くん
ユウジ:ちゃん/ユウジくん
小春:ちゃん/小春ちゃん
小石川:ちゃん/健ちゃん
銀さん:はん/銀さん
財前:さん/光
千歳:/ちーちゃん
金ちゃん:ちゃん/金ちゃん
オマケで、オサムちゃん:ちゃん/オサムちゃん

7割「ちゃん」呼び(笑)
なんとなく四天メンバーはちゃんづけしてそう。
金ちゃんに「ねーちゃん」とは呼ばせません。だってリョーマがいるもの!←

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