私の可愛い王子様


























本日は晴天。絶好のテニス日和。私、越前は、今年から氷帝学園ではなく、青春学園に通う事になる。
家族がアメリカから帰国してきて、弟が青学へ通うから、私も青学に転入することにしたのだ。家もおじさんの所ではなく、家族と同じ家になる。
奈々子姉は大学がウチの方が近いから、逆にウチに居候することになったり。
転入の件でやっぱりというか、アイツらがうるさかったけど、私の人生なのだから、とやかく言われる筋合いはないということで放置してきた。
ちなみに今日は弟の試合。なんだっけ、『柿ノ木坂ジュニアテニストーナメント』だっけ。あのおばかさん、12歳なのに16歳以下の部に登録しちゃった。
私も久しぶりに出場しようかと思ったけど、リョーマのテニスを見るのも久しぶりだし、そっちを優先させた。
で、リョーマとは別行動で、後から柿ノ木坂テニスガーデンに来たわけだけど・・・。


「・・・リョーマがいない」


試合はもう始まるというのに。時間にルーズな子ではあるけど、間に合うように起こした。起きたなら、試合に遅刻することは、無いのに。
そしてリョーマは時間内に現れず、結果、失格デフォとなった。



















何やってんだか、と思いつつ歩いていると、試合をしていないはずのコートで誰かが打ち合っているのが目についた。
見た感じ高校生と、背が低くて白い帽子の・・・


「リョーマ!?」

「えっ!?」


ガシャン、と音を立ててフェンスにしがみつくと、ベンチに座っていた、リョーマと同じ年頃の女の子を驚かせてしまった。


「あぁ、じゃないか」

「あ、ども、竜崎先生」

「おばあちゃん、知り合い?」


中に入ると、女の子がじっと見てきた。・・・・・おばあちゃん?


「え、竜崎先生のお孫さん?え、ちょっと、可愛い子じゃん、なんで?」

「どういう意味だい・・・?」


竜崎先生に睨まれる。いや、ゴメンナサイ。昔の写真見たけど、竜崎先生おキレイでしたよ。おキレイです。


「・・・まぁ流してやるよ。この子は桜乃。で、桜乃。こっちはリョーマの姉でだよ」

「よろしく、桜乃ちゃん」

「よ、よろしくお願いしますっ」


ぺこりとおじぎをすると長いおさげが跳ねて可愛い。


「そうだ、リョーマ、デフォになったんだけどどうしたの?」

「わ、私が間違った道を教えたせいで遅刻しちゃって・・・」

「あらー・・・」


悪気はなかったのだろう。どちらにせよ、出なくて正解だったかもしれない。今リョーマが相手をしているのはおそらく16歳以下の出場選手。
この程度のレベルなら、出ても面白くなさそうだ。


「あの高校生弱いねぇ。私でも勝てるよ」

「言うねぇ


ホントのことを言ったまでです。だがふと、妙な事に気づく。


「・・・リョーマ、頭から血、流してない!?」

「あぁ、さっきヤツがわざとラケットをすっとばしてねぇ・・・」

「・・・I smash it・・・」(ぶっ潰す・・・)

「まぁ落ち着きな、


足を踏み出そうとした時、竜崎先生に首根っこを掴まれた。


「ええい止めてくれるなスミレちゃん!あの三下ザコぶっ潰す!!」

「(スミレちゃん・・・?)落ち着けって言ってるんだよ、。リョーマはピンピンしてツイストサーブ打ってるじゃないか」

「・・・そうだけどさー」


そういえばあの子、右手でプレイしている。よくよく見てみれば、ヤツの顔にはボールの跡があった。ツイストが跳ねて当たった跡だ。
ラスト一球、ツイストに恐怖し、頭を抱えしゃがみこんだヤツにリョーマがゆる球を打ち、ゲームはリョーマの勝利に終わった。


「リョーマ!!」


ダッシュでリョーマに抱きつきに行く。


「あーもう相変わらずかわいくてかっこいい・・・って違う違う!リョーマ、怪我は!?」

「なんでいんの?

「怪我は!?」

「・・・何でもないよ、こんなの」

「何でもないわけないでしょ!頭の傷を甘くみちゃいけません!!」


ごしごしとウェアでこするリョーマの手を奪って絆創膏を貼る。血は落ちにくいんだよ・・・!


「待てよコノヤロウ!もう1セットだ!」


ヤツが吠えている。こりないなぁ。


「諦めの悪い男だねぇ。何度やっても越前リョーマには勝てないよ!!」


スミレちゃ・・・竜崎先生・・・いいや、これからはスミレちゃんって呼ぼう。そうしよう。
スミレちゃんが言うが、リョーマは気にした様子もなくラケットを手にコートへ。
そして、ラケットを持つ手を、右から、左へ。ヤツの間抜けな「あれ?」が聞こえた。


「リョーマは左利きだよ。弱い高校生さん」


リョーマの本来のサーブが決まり、ヤツは取り巻きと共に逃げて行った。

























「それじゃスミレちゃん、また学校で!」

「何が『スミレちゃん』だい!突然馴れ馴れしくしおって。教師を敬いな!」

「敬ってるよ。でも、ほら、私、あの人の娘だから」

「・・・ったく」


あの人こと我が父南次郎からスミレちゃんを敬う言葉を聞いたことがない。


「さ、帰ろう?リョーマ」

「うん」


あと数週間もすれば始業式、そして入学式。
新しい生活の Start だ。
















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