急なドシャ降り 君と雨宿り
















さすがはお金持ち校氷帝学園。登下校方法は様々だった。


「車とか・・・」

「あーん?文句あんのかよ?」

「イエ、別に・・・」


跡部景吾坊ちゃまの登下校は、高級車での送迎らしい。後のメンバーは徒歩や電車、亮に至ってはチャリ。
きくところによれば亮は私と帰る方向が同じらしい。そこで、1つ提案してみた。


「亮ちゃん亮ちゃん、ニケツしようよ、ニケツ」

「ちゃんで呼ぶな。マウンテンバイクのニケツってキツクないか?」


主に後ろの人が。確かにマウンテンバイクは、俗に言うママチャリなどとは違って、足を掛ける場所は小さいでっぱりのみだ。


「大丈夫、私は亮を信じてる」

「あのな・・・意味わかんねぇし」


真顔で言うと、亮は呆れの溜息をついた。それでも乗せてくれるあたり、亮はいいやつだと思う。















「・・・あ」


ふと、顔に冷たい物が落ちてきた。


「亮、雨」

「あ?」


直後。


「うわっ!?」

「げっ!」


大量の雫が私たちを襲った。














滑り落ちないよう落ち着いてマウンテンバイクから降り、急いでどこかの店の屋根下へ避難する。シャッターが閉まっているから休みなのだろう。


「あーびっくりしたー・・・」

「まったくだ・・・大丈夫か?

「うん」


氷帝の通学鞄は防水加工がしてある為、ほぼ無傷。さすが、高いだけある(値段が)。
ラケットバッグの方は怪しいが・・・まぁ、洗うものばかりだから大丈夫だろう。


ふと、亮がこちらを見て目を見開き、盛大に顔を逸らした。


「?」


亮はそのままがさごそとラケットバッグを漁り、ジャージを私に押し付ける。


「それ、着てろ」

「え、寒くないし、大丈夫だよ?」

「・・・・・ん」


顔を逸らしたまま、亮の指先は私の顔の下を示す。そこで初めて、納得した。
雨に濡れたせいでシャツがすけて、下着がうっすら見えてしまっていたのだ。私は亮からジャージを受け取って羽織り、前を荷物で隠した。
それを確認して、亮がこちらに顔を戻してくる。その頬は、ほんのり赤かった。


「ありがと、亮」

「・・・おう」


突然の大雨で驚いたけど、亮の優しさを知れて、嬉しかった。














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お題配布元
はちみつトースト
choice 101〜200


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