読めない・・・!!















氷帝生活3日目。レギュラーはほぼ確定していた。今日はその名簿を見ながらのチェックだ。しかし・・・。


「・・・・・」


私は、チェックボードとにらめっこをしていた。


「どうした、。チェックボードを睨みつけて」

「・・・めない」

「あ?」

「読めない・・・!!」

「・・・は?」


景吾が間の抜けた声をもらす。だが、事実なのだから仕方がない。アメリカにずっといた私は、漢字が苦手である。
いや、それはただの言い訳に過ぎないが。景吾にしても、イギリスにいたのだから。それでも苦手なものは苦手。というか、弱い。


「どれが読めねぇんだ?」

「ほとんど読めない」

「まさか俺様の名前も読めない、なんてことはねぇよな・・・?あーん?」


景吾にジト目で見られて私は慌てた。


「いや、『あとべけいご』は読めるよ!ほらコレ!あとべけいご様様!」

「馬鹿にしてんのか・・・?」


景吾に溜息をつかれた。呆れないでください。


「で?他に読めるもんはあんのか?」

「無い」

「お前な・・・」

「コレが『おしたりゆうし』っぽいかなーって思うんだけど、どう?」

雰囲気かよ


『忍足侑士』の字を示しながら言うと、「まぁ、合ってはいるがな」と返ってきた。


「後は宍戸、向日、芥川だな、とりあえず」

「コレでコレでコレ?」

「お前また雰囲気で選んだだろ・・・」

「いや、『戸』と『日』と『川』で」


それくらいならちゃんと読める。「小学生レベルか」と言われたけど、無視だ。


「よぉし・・・なら、ファーストネームを読んでみろ」

「うぇ・・・!?」


読めないって言ってんのに・・・!!
チェックボードを再び睨みつける。宍戸のファーストネームは『亮』だ。えーと・・・。


「あきら?」

「そっちかよ」


景吾ではない声が聞こえた。噂の宍戸だ。


「確かに『あきら』とも読むけど、俺のは『りょう』って読むんだよ」

「りょう、か。よし、書いとく」

「お前な・・・」


読めない漢字にはよみがなを書いておくのがいいときいたから。教科書に、だった気もするが。


「よし、呼び方も亮でいいね」

「え゛」

「亮もって呼ぶこと!じゃあ次、むかひ・・・」


どうしたものか。これは本当に読めない。


「むかひ・・・」

「『がくと』だっ!!」

「うわっ!?」


後ろから突然飛びつかれてこけそうになる。赤紫の髪が視界で揺れた。


「『がくと』?」

「そーだっ!」

「へー、格好いい名前だね」

「へっ!?」


背中で向日が目をぱちくりさせている。素直な感想を言ったつもりなのだが。


「あ・・・あんがとよっ」


背中で向日がもぞっと動いた。どうやら照れているようだ。可愛いと思ったのは黙っておこう。


「呼び方はがっくんでいい?」

「格好いいって言ったくせに!」

「嫌?」

「別にいいけどなっ」


いいんかい。


「はい次ー。あくたがわー」

「はぁーい」

「ぐぇ」


背中にのしかかる重みが増した。今度こそ倒れそうになるのを、片足を前に出して踏ん張る。


「おぉ、持ちこたえた」

「さすがに男子2人はキツイんだけど・・・!!!」

「俺は『じろう』!よろしく、!」

「はいはいよろしくジロちゃんはやく降り「「あ」」


べしょ。


効果音をつけるならこれが最適だろう。


「激ダサだな」

「情けねぇなぁ

「なんやオモロイことやっとんなぁ」

「あーあ、俺知らねー」

、大丈夫ー?」

「・・・・・」


これからこの個性豊かすぎるやつらと一緒か。楽しそうではあるけど、大変そうでもある。










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