四天宝寺という存在
越前、中2、全国大会後の9月。今日は一人、大阪に来ている。
さらに、現在地は今年全国大会でベスト4という結果をおさめた四天宝寺中。
立海大と当たった四天宝寺中は、2年部長白石蔵ノ介までオーダーが回らなかった。つまり、白石くんの実力は不明のまま。
やっぱり実力は気になるもので、こっそり様子見に来たと言う訳だ。
あと、侑士の従兄弟がここにいるらしいので、彼にも会ってみたいと思って。
テニスコートは3面。なかなかの設備だ。なんとなくこそこそとテニスコート脇から少し離れると、誰かが座り込んでいた。
黒髪で、耳にはピアスが5つもついている。四天宝寺テニス部のユニフォームを着ているという事は、サボりだろうか。それにしても・・・。
(かわいい・・・!!)
素通りしても良かったけど、きゅんと来ちゃったし、なんとなく気になったので話しかけてみる事にした。
「キミ、テニス部でしょ?」
「・・・何すか、アンタ」
「通りすがりのやつです。サボリ?」
「関係あらへんやろ」
ふいっと顔を背けられる。そんな反応も可愛い。可愛い・・・ではなくて。
「!何すんねん!」
「サボりは部長に引き渡すもんでしょ〜」
彼の腕を掴んで無理矢理立たせ、テニスコートへと連行する。
暴れてるけど、1年半ジロちゃんを引きずって歩いている筋力を舐めてもらっちゃ困る。
「サボりくん1名お届けでーす」
「ほんま何やねんアンタ!」
少年を引きずっていくと、テニスコートが騒然となった。まぁ無理もない。見知らぬ女子がサボりを引きずって来たのだから。
「お、おおきに・・・やなくて、どちらさん?」
「初めまして、白石蔵ノ介くん。東京氷帝学園2年の越前です」
白石くんのことは全国大会で姿を見たから知っている。
「氷帝・・・ってことは、偵察か?」
「いや、全国大会で見れなかった白石くんの実力と、侑士の噂の従兄弟を見に?」
「ゆうしの従兄弟っちゅーと、謙也のことかいな?」
「うん、どの子が謙也くん?」
「俺やけど・・・侑士に何言われてきたんかが気になるトコやな・・・」
・・・え?
「どないしたんや?」
「あ、ううん、なんでもない」
思わず一時停止してしまった。似てないなぁ・・・。侑士と違ってさわやか系だ。
「俺の実力見に来たっちゅーことは、やっぱ偵察とちゃうんか?」
「見に来たって言っても、個人的にだからね。個人的に気になって見に来た。だから、別に見れなくてもいいよ」
謙也くんに会えたらなんかよくなっちゃった。少し。
「それよりさ、サボリくんのお名前は?」
「・・・・・財前光ッス」
「光ね!ねぇねぇ、この子もらっていい?」
「「あかんて!!」」
光の腕にしがみついて言ってみたら白石くんと謙也くんにツッコまれた。
「ウチの天才は渡せへんわ」
「へー、光、天才なんだ?」
「そうっすわ」
お、自他共に認めるってやるか。
「ウチの侑士と同じかぁ」
「侑士と同じにされんのもなんか複雑やけどな」
「あぁ、せや、謙也ならえぇで」
「なんでやねん!」
「え、いいの?」
「「え?」」
え、なんでそこで「え?」なの。
「謙也くん何月生まれ?」
「3月やけど・・・」
「よし、OKOK。謙也くん弟にできるわ」
「「は?」」
だからなんで「は?」なの。
「まさか、もろうてえぇかっちゅーのは、弟にしたいってことか?」
「うん」
「「「・・・・・」」」
なんで黙るかな。なにかおかしなこと言った?
「あらぁん。ちゃん、罪なオンナやねぇ〜」
・・・えっと、ここ男子テニス部だよねってか外見はまんま男子だね。あれ、でもイヤな感じがしないのは何故だろう。
「金色小春や。こう見えてもIQ200の頭脳はなんやで」
「よろしゅーv」
「よろしく、小春ちゃん」
IQ200って・・・頭のデキが違いすぎる。
「ついでに、そっちのは一氏ユウジ」
「ついでってなんやねん!」
「小春とダブルス組んでんねや」
「無視しないでくれる!?」
「!?」
え。え?今の、私の声じゃなかった!?
「ユウジの特技はモノマネなんや」
「さすがに女子の声出すんわキツイなぁ」
「へ、へー・・・」
モノマネというか、声そのまんまだった。ユウジくんは白石くんや謙也くんのモノマネをして遊んでいる。
結局白石くんの実力は見れずじまいだったけど、侑士の従兄弟謙也くんにも会えたし、可愛い子の収穫もあったし、結果オーライ!
それからレギュラーはあと2人いるらしい。タメで、石田銀、小石川健二郎というのだとか。今日は会えなかったけど、今度は会えると良いな。
「なんか面白いね、四天宝寺中」
「せやろー」
「また遊びに来てもいい?」
「もちろんや!歓迎するで!」
大坂に来て良かったと思える一日になった。みんな、ありがとう!
―――――
お題配布元
蒼の道
テニスの王子様 あいうえお作文 白石蔵ノ介で9題 し
Created by DreamEditor