「・・・・・また迷った」
「・・・・・また迷った」
ついこの間来たばかりだというのに、また神奈川で迷子になってしまった。
なぜだろう、立海に辿り着いてしまうのは。何か不思議な吸引力でもあるのだろうか。
そろーっと東門からテニスコートを覗く。駄目だ、私の視力ではブン太の頭くらいしかわからない。
精市とはメールアドレスも携帯の番号も交換したが、練習中に携帯電話は持っていないだろう。
かといって練習の邪魔をしに行くのも忍びない。しかし頼りは此処しかない。
「あーっ!スパイがいる!」
葛藤していると叫び声が聞こえた。しかも、またスパイ呼ばわりだ。背丈や身体つきからして、1年生だろうか。
彼は、「部長たちに知らせねぇと!」と言って走って行った。結局、面倒をかけてしまうようだ。
「部長!副部長!東門のとこにスパイが来てるっス!」
「スパイ?特徴は?」
「白い帽子かぶった、猫目みたいな感じのヤツっス!」
「「・・・・・」」
見つかってしまったから門の内側で大人しく待っていると、先ほどの彼が2人を連れて戻って来た。
「あいつっス!」
人を指差してはいけません。
「あぁ、やっぱり君だったんだね、」
「へ?」
「あはは・・・ごめん」
「どうせまた迷ったのだろう。まったく、たるんどる!」
「えぇ?」
私たちが会話をしている中、1年生は目をぱちくりさせて私たちを見ていた。
「知り合い・・・なんスか?」
「彼女は越前。俺たちの友達だよ」
「えっ、そうだったんスか!?てか、彼女=I?」
精市が言うと、彼は驚いて私を凝視した。二重の意味で。確かに、以前と同じような格好だが・・・。
「それで、今日はどこに行こうとしたんだ?」
「・・・前と同じトコ☆」
「・・・たるんどる!」
ごめんなさい。
「は地図を持ち歩くべきだね。会えるのは嬉しいんだけど」
面目ない。
「とりあえず案内役が必要だな。そうだな・・・今日は赤也に行ってもらおうかな」
「え、俺っスか?」
この1年生、『赤也』という名前らしい。
「赤也はブン太とよくあの店に行っているようだから、覚えているはずだよ」
「そっか、それじゃあよろしく、赤也」
「了解っス!」
ケーキ屋まで行く途中でいろいろ話した。赤也のフルネームは『切原赤也』。立海の期待の新人、らしい。
他にも精市や弦一郎、他のメンバーの話。立海も楽しそうだ。
ケーキをごちそうし、今度は駅まで送ってもらう。
「ありがとね、赤也」
「また来てくださいね、さん!」
赤也に手を振り、私は駅へと入って行った。
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お題配布元
はちみつトースト
台詞 451〜500
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