可愛い後輩
















越前、中学2年生になりました。
今年も多くの新入生が入部して、私の前には有力者≠ェ並んでいる。そして、私の手元にはチェックボード。さらに、案の定。


「亮ちゃん先輩!」

「誰が亮ちゃん先輩だ」

「読めません!」

「えっ」

「・・・またかよ・・・」


読めません!(2度目)
ちなみに驚きの声を発したのは、列の中の灰色っぽい髪の子。亮が呆れているけど、読めないのだから仕方がない。


「あ、樺地は読めるよ。というか知ってるよ。『かばぢむねひろ』。うん、大丈夫」

「・・・ウス」


樺地は景吾によく付き従っている子だ。イギリスにいた頃のからの幼馴染だとかなんとか。
去年から度々中等部に来ていて会っているから知っている。それにしても、やけに背が伸びたな。


「読めねぇのは?」

「これ」


ほうおうのほう≠チてのはわかるんだけど他の読み方がわからない、と言うと、亮から馬鹿にしたようなまなざしが。ヒドイ。


「・・・名乗ってやってくれ」

「は、はい!『おおとりちょうたろう』です!」


元気よく声を上げたのは、先ほどの灰髪の子だった。勘だが、この子は背がよく伸びると思う。


「うーんと・・・『チョタ』ね」

「え、は、はいっ」


ちょうたろうって長いし、チョタの方が可愛いし。
という思いは心の中に潜めておく。彼は戸惑いがちにも返事をしてくれた。


「次はね、ファミリーネームは読めるけど、ファーストネームが読めない」

「どれだ?」

「これ。日吉・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・・亮ちゃーん?」

「・・・・・」


どうやら亮にも読めないらしい。『若』が『わか』と読むのはわかるが、名前にする時の読み方がわからない。


「日吉・・・」

「・・・『わかし』です」

「え?」


薄茶の髪を切りそろえた子が呟いた。『わかし』と読むのか。


「へー、またひとつ勉強になりました」

「忘れねぇうちに両方読み仮名書いとけよ」


言われなくてもそうしますとも。


「なんかしっくりくるねぇ、わかし。うん、若って呼ぼう」

「・・・・・」


今度は何も言わなかった。だが否定しないという事はOKということだろう。

1年の中で榊監督が目をつけているのはこの3人と数名のようだ。なんとも少ない。


「ま、みんな頂点うえを掴むためにがんばろう!」


また新たな1年のStart
今年も楽しくなりそうだ。















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お題配布元
はちみつトースト
5title 先輩

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