コンビニ
「亮、コンビニ寄って帰ろー」
「おー、いいぜ」
部活後、気分的にコンビニに寄って帰りたくなった私は、帰り道が一緒の亮に言った。亮は快くOKしてくれて、コンビニ寄り道決定である。
「はいはーい!俺も行きたいCー!」
「俺も行くぜ!」
するとジロちゃんとがっくんも手を挙げた。この2人も途中までは一緒なので問題は無い。侑士は今日は早々と帰ったので、あと残っているのは景吾。
一応、ちらりと景吾の様子をうかがう。景吾は何とも面白くなさそうな顔をしていた。
(うわー・・・明日不機嫌になると面倒だな・・・)
思って、ピンと思いつく。私はにっと笑うと、景吾の方に歩み寄ってその腕をとった。
「よし!今日は景吾にコンビニ体験させてあげましょー!」
「んなっ!?」
「おー、いいな!」
「楽しそうだCー!」
「ほら、行くぞー」
みんなノリノリである。景吾の右腕を私が、左腕をジロちゃんが引いていて、先頭にがっくん、後ろに亮だ。
帰りの事を考えて、帰り道途中ではなく、氷帝近くのコンビニに行くことになった。
「はーい、コンビニとうちゃーく」
コンビニの前で景吾を解放する。景吾はぽかーんと口を開けていた。予想通り、コンビニは初めてのようだ。
中に入ると景吾はきょろきょろしていた。まるで小さい子どもみたいだ。
「、買うもんはもう決めてあんのか?」
「私あんまーん」
「俺肉まーん」
「俺からあげー」
「があんまん、ジローが肉まん、岳人がからあげな。後でちゃんと金払えよ?」
「「「はーい」」」
こうしてみると、亮がみんなのお兄さんみたいだ。上はいるけど下はいないと聞いたから、元々そういう性分なのかもしれない。
「跡部はどうする?お前の口に会うかは知らねーけど」
「・・・」
「肉まんおいCーよ!」
「コンビニのからあげも美味いぜ!」
ジロちゃんとがっくんが自分の食べるものをすすめている。
「ピンときたものにすればいいと思うよ。初めてなんだし」
「・・・豚角煮まんに、するか」
「おぉ、リッチ!」
「跡部は豚角煮まんな。じゃあ買って来るぜ」
まとめて買ってきてくれた亮に、小銭を渡して物を受け取る。小銭を持ち歩かない景吾の分は私が払った。連れ回し料ということで。
コンビニの外に出たと同時にがっくんとジロちゃんがそれぞれの獲物にかぶりつく。私もあんまんにかぶりついて・・・じっとしている景吾を見つけた。
「食べ方?」
「・・・・・」
無言は肯定と取り、景吾に食べ方を教える。
お金持ち、外国育ちの景吾がコンビニに来たことがないのは頷けるし、肉まん系を食べたことがないのも納得できる。だから馬鹿にせずに教えてあげる。
「どう?」
「・・・・・」
豚角煮まんを口にした景吾は無表情だ。言葉を探しているのかもしれない。
「・・・到底、俺様の舌に合うもんじゃねぇな」
「あー・・・」
「だが・・・」
だよね、と言おうとしたが、景吾の言葉には続きがあった。
「こういうのも、悪くはないな」
ふ、と微笑んだ景吾に、思わず目を奪われる。なんだ、こんな微笑い方もできるのか。
「・・・なんだよ」
「別にー?」
そんな景吾の一面を見れて、私も微笑った。
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