「花っていったら、全部バラになるのかよ・・・」
「、花は好きか?」
「え?好きだけど」
「そうか、楽しみにしてろよ?」
何を、と聞く間もなく景吾は離れていく。
嫌な予感しかしないんだけど・・・。
翌朝。校門前に跡部家の車が停まっていた。うっすらと、中に人影があるのが見えるが、降りてくる様子はない。
どうしたんだろうと思いつつ車の横を通り過ぎようとした時、車のドアが開いた。
「よぉ、」
「・・・おはよう、景吾」
待ち伏せていたとしか思えないタイミングで出てきた景吾に、呆れの声しか出ない。
溜息まで出てきたとき、ふわりと何かの香り、そして視界に入ってきた赤。顔を上げると、景吾の手には赤いバラの花束。
傍観していたらしい女子たちから、黄色い声が上がっているようないないような。
「花が好きだって言っただろ?」
「言ったけど・・・あんたの中では花=バラなわけ・・・?」
「あーん?花っつったらバラだろうが」
バラってね、高いんだよ?
・・・と言おうとしてやめた。こいつはバラなんて100本でも1000本でも楽に買えてしまうほどのお金持ちだ。
「どうした?受け取れよ」
「・・・うん、ありがと」
正直、今くれて帰るまでどうしていろというんだと思ったけど、『好き』と言ったものをくれた、その気持ちは素直に受け取っておくことにした。
そしてそのバラは、部活が終わるまで音楽室に飾られていた。
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お題配布元
はちみつトースト
台詞 251〜300
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