新しい、嵐の予感
陽気が眠気を誘い、おもわず欠伸が出てしまう、春の日。欠伸をすると、はしたないぞと隣から声がかかるが無視をする。生理現象なのだから仕方がないだろう。
2年に進級した彼らは、渡り廊下を歩いていた。
「今年はどんな子が入るかな」
「さてな。骨のある奴が入ってくればいいのだが」
「昨年全国優勝の肩書だけ見てくるミーハーも結構いそうよね」
「まぁそういった連中は早々と辞めていくんだろうが・・・ん?」
ふと、一人が足を止める。自然と残りの三人も足を止めた。
「どうしたの?蓮二」
「あれを見てみろ」
あれ、と示されたのは、校門。・・・の、上に立つ少年。
「何をやっているんだろう、あの子」
「けしからんな!」
「あ、何か言おうと・・・」
大きく息を吸って、少年が、言葉を吐いた。
「この学校で、全国NO.1になったテニス部に入って、俺はNO.1になる!!」
一瞬、時が止まる。と、少年が先生に注意されて校門から降り、再び時が回り始める。
「・・・NO.1になる、だって。どうする?ビッグスリーのみなさん」
にや、とでも効果音がつきそうな笑みを浮かべて三人を見やる。
「挑んでくる、というのならば相手をしてやるまでだ」
達人、柳蓮二。
「無論、大人しくやられてやるつもりもない。全力で叩きのめしてやる」
皇帝、真田弦一郎。
「ふふ、威勢のいい子は嫌いじゃないよ。入部してくるのが楽しみだ」
そして神の子、幸村精市。
「そうだね、楽しみだね」
言って幸村は、慌てて走って行く少年を見て笑った。
放課後。部活の時間となった。新入生の入部受付が始まり、行列ができている。ざっと去年の三倍らしいが、骨のある子はそうはいなさそう。
そこでふと、彼≠フ姿がないことにきづく。校門で叫んでいた、あの子が。
あの様子だと必ず来ると思っていたのだが、何か別用でもできたのだろうか。
「・・・・・」
「どした?」
列整理をしていた丸井ブン太が首を傾げる。と、は顔を上げた。
「私、ちょっとそのへん見てくる」
「へ?おい!」
もしかしたら迷子になっているのかもしれないと、は走り出した。
英語のテストの間違い書きをしていてすっかり遅くなっちまった!しかも、なんか場所違うとこ教えられるし!
まったく、ついてなさすぎるぜ・・・!
はぁ、と一息ついて顔を上げる。と、何かが視界に入って、思わず目を奪われた。
夕陽に照らされたその姿は、そのまま飛んでいっちまうんじゃないかと思うくらいきれいで、目が離せない。
ふと、それが動いて、こっちを向いて・・・笑った。
一瞬、心臓がとまっちまったのかと思った。けど、それは気のせいで、あのヒトが示した指先を視線で追う。
「あ!!」
そっちはテニスコートの方向だった。礼を言おうとあのヒトの方を見たけど、あのヒトがすでに、そこからいなくなっていた。
「誰、だったんだ・・・?」
夕陽に照らされてかどうか知らないが、なんだか顔が熱い気がする。ぼーっとなりかけた頭を思いきり振って、テニスコートへと走った。
なかなか見つからないから屋上へ上がってみると、夕陽と風が心地よかった。
一瞬探していることも忘れて夕陽を見ていると、なにか見られているような気配がして、そちらを向く。
と、そこには探している対象人物がいた。こっちを凝視しているように見える。
ふっと笑って、テニスコートを示してやると、彼は勢いよくそちらを向いた。これならちゃんとテニスコートに辿り着けるだろう。
「さて、どうなることやら」
屋上から下りて、見物しようか。
―――――
幸村双子の姉。
赤也夢ってことで立海烈伝から!
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