素直になれない
山側の薬草ポイントを地図に書き込み、ある程度把握したは、昼食が終わると海側へ向かった。大河は蔵ノ介と薪拾いに行ったようなので丁度いい。
どうも大河と跡部は険悪のようだから。大河には言ってないが、手塚には言ってきたから大丈夫だろう。
「お、じゃねぇか」
「亮」
海側に着いて最初に出くわしたのは宍戸だった。
「どうしたんだ?」
「こっちの薬草ポイント調べとこ思うてな」
「あぁ…なるほどな…」
「なんやねん」
「いや、なんでもねぇよ。薬草大事だよな」
じろり、と睨むと宍戸が目をそらす。まぁいい。
「ほな、うちは行くで」
「あぁ、頼むぜ」
午前中とおなじように、薬草を見つけては地図に書き込んでいく。途中幸村が「何してるの?」と声をかけてきた。
「薬草あるとこチェックしてんねん」「へぇ…薬草か。使えそうだね」「せやろ?」などと少し会話をして別れる。幸村も暇ではないようだ。
「こんなもんやろ」
ある程度書き込み終えたは、跡部を探した。
「あ、おった。景吾ー」
「」
跡部がに顔を向ける。心なしか嬉しそうだ。
「薬草チェックしといたさかい、なんかあったらつこうてや」
「あぁ、助かる」
地図を跡部に渡す。ほな、と戻ろうと踵をかえすと、待てと声をかけられる。
「なんや?」
「それだけで帰ろうってのか?あーん?」
「はぁ?」
振り返るとそんなことを言われ、眉をひそめる。
「そないなこと言われても、とくに話すことあらへんし…」
「……」
話題を探しているのか、跡部が沈黙するが、がしびれをきらすほうがはやかった。
「あらへんやろ?ほな…」
「無くても、いいじゃねぇか。もう少し、ここにいろよ」
「…跡部?」
視線をさみしげに落とす跡部に、はさすがに罪悪感を感じ、跡部に向き直る。
「あー、えと、景吾…」
跡部が顔をあげる。そして口を開きかけた、その時。
「」
後ろから声がかかり、は振り向いた。同時に跡部の眉間にシワが寄る。
「手塚くんが、そろそろ時間だからを呼んできてくれって」
「もうそないな時間か。わざわかざおおきに、大河」
ううん、と大河が首を振ったとき、不意に、大河と跡部の目が、合ってしまった。
「…なんか用か、雨宮大河」
「私はを呼びにきただけであなたにはこれっぽっちも用は無いわ、跡部景吾」
バチバチと火花が散る音がきこえてくる。幻聴なのだが。
「あーもう二人とも落ち着きや。そういうことやから、うちは戻るで、景吾」
「…さっさと行っちまえ」
「すねんなや、可愛いないで。またこっちにもくるさかい」
「…」
は苦笑すると、跡部の肩を拳で叩いて背を向けた。すぐに大河が、のあとにつづいた。
「なんだい跡部。フラれちゃったのかい?」
「ハッ、何寝ぼけたこと言ってやがるんだ、幸村」
「恋敵は女友達、か。手強いな」
「…黙れよ」
「あの子と仲悪いのかい?」
「たがら黙れって言ってるだろ」
「そうやって、表にだせばいいのに。そのほうが白石さんにもわかりやすいと思うけど?」
「…それができりゃ、とっくにやってる」
跡部は一息ついて、と大河が立っていたところをしばらく見つめていた。
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