彼女の特技
翌朝。早くに目が覚めたは、まだ眠っている大河を起こさないよう気を付けて外に出、散歩していた。そして前方に、ある人影を見つける。
「手塚クン?はやいなぁ」
「白石妹か・・・お前もはやいな」
「うちは目が覚めてしもうてん」
「そうか、だがちょうどよかった」
「ん?」
手塚は手にしていた紙に目を落とした。
「探索にお前を入れるかどうか決めかねていたんだ」
「あぁ、なるほど。入れてもかまへんけど、今日は入れんといてもらえる?」
「ん?なにかあるのか?」
「合宿所内見て回ってチェックしときたいもんがあんねん。で、合宿所の地図写させてもらいたいんやけど」
「写すのは構わないが・・・なにをチェックするんだ?」
手塚が軽く首を傾げる。
「あんな・・・」
は手塚に説明し、合宿所の地図を写させてもらった。
朝食が終わり、朝のミーティングの後、は地図と、昨日見つけたメモ用紙、ビニール袋を手にして合宿所内を散策し始めた。
「?なにしてるの?」
しゃがみ込んで草を見つめるに大河が声をかける。
「んー、あんな、薬草探してんねん」
「薬草?」
大河が首を傾げる。
「おん。大河は四天生やから、蔵ノ介が毒草に詳しい事はしっとるやろ?」
「・・・えぇ・・・」
思わず視線が斜め下に。白石は四天宝寺中の学内新聞に、『毒草聖典』というタイトルで連載小説を載せている。
謙也にきいたところ、白石は200種類以上もの毒草に詳しいのだとか。
「もしかして、は薬草に詳しいの・・・?」
「せや。うちら、オトンが薬剤師でな。薬剤本とか薬草辞典とか、植物辞典を読み物にして育ったさかい、自然と詳しゅうなってしもうて。
おもろいし。まぁ、蔵ノ介がなんで毒草に走ったかは知らへんけど・・・」
「それで、は薬草を探してるのね?」
「おん。ただの雑草に見えても、薬草になるんは多いからな。すり傷や切り傷、腹痛にえぇもんかてあるし。
救急箱があったゆうても数に限りがあるし、こういうもんはあったほうがえぇやろ」
「確かに、そうね・・・」
ちょこん、と大河がの隣にしゃがみ込む。
「今は何を探しているの?」
「せやな。今はこれや」
「これ・・・ヨモギ?」
が示したのは、どこにでもあるような野草だ。「クサモチにしたら美味いなぁ」なんて言いながらヨモギを摘んでビニール袋に入れていく。
「ヨモギは、切り傷、虫刺され、かゆみ止めなんかにえぇんやで。他にも効能あるし、結構役立つやつなんや」
「へぇ・・・知らなかったわ」
「普通はあんましらへんやろな。クサモチも、自分ちで作るかってきかれたら、作らへんやろ?」
大河は少し考えたあと、こくんと頷いた。さて、次にいくかとが立ち上がり、大河も慌てて立ち上がる。
「ねぇ。私に手伝えることない?」
「ん?せやなぁ・・・ほんなら、今採ったヨモギをキレイに洗ろうて乾かしといてもらおうかな」
「うん、まかせて」
からヨモギの入ったビニール袋を受け取り、大河は小走りに炊事場へ向かって行った。
「ころばへんとえぇけど」
軽く笑い、は次の地点へ向かった。
――――
さんは薬草にお詳しい。兄が毒草なら妹は薬草。オトンが薬剤師だからのはまだ納得できるはず!なぜに毒草・・・w
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