遭難して
食事が終わり、船室に戻ったと大河。やけに揺れる船に、二人の気分は落ち気味だった。
「大河、酔ったりはしてへん?」
「今の所、大丈夫・・・」
どうやら外は嵐らしい。運が悪かったとしか言いようがないが、これほどの大型船なら大丈夫だろうと、船で大人しくしていた。
だが、そんなときだった。大きな衝撃があり、船が止まった様な感覚に陥った。
「まさか・・・」
が立ち上がり、部屋のドアを開けると、外はパニック状態だった。
「亮!何があったんや!?」
「船が座礁したらしい!おまえらもはやく救命ボートに向かえ!」
「なんやて!?」
部屋に戻り、大河の手を掴む。
「?」
「船が座礁したらしいわ」
「えっ!?」
「救命ボートに乗って脱出せなあかん。大河、うちの手離すんやないで!?」
「・・・うんっ!」
廊下を走る二人。途中で他のメンバーと合流しながら、なんとか救命ボートに乗って船を脱出した。
「・・・・・が・・・・・い・・・が・・・・・・いが・・・・・」
誰かが呼ぶ声がする。
「大河っ!!」
パチッと目が開く。と、目の前にはの顔があった。
「よかった・・・大河、なかなか気づかへんから、どないしようかと・・・」
「・・・ごめん、ありがとう・・・」
身体を支えて大河を起き上がらせ、は大体の事を説明した。選手たちだけが、今この場にいる。先生方や船長とははぐれてしまった。
今からこの小島を離れ、近くの大きな島に移動する。大河はの説明に納得して頷いた。
「・・・堪忍な」
「え?」
頭を垂れて謝るに大河が首を傾げる。
「大河はそのまま船に乗ってコンクール行けたっちゅーのに、こんなことに巻き込んでしもた。大河は、こんな目に遭う必要あらへんかったのに・・・」
「・・・それで、どうしたが謝るの?」
「やって、大河は、合宿には関係あらへんやん。こんな島に放り出される必要なんて、あらへんかったのに」
「、顔を上げて」
「・・・なんや?」
顔を上げたは、大河の厳しい表情に、一瞬たじろいだ。
「が謝る必要なんてない。あれは事故だったの。それをどうしてが謝らなくちゃいけないの?むしろ、は私を守ってくれたわ」
「せやけど・・・」
「、私ね、怒ってるの」
「・・・大河」
「は、私はこんな目に遭わなくてすんだのにって言うけど、それはだって同じでしょう?
だって、普通にこの島に上陸して、合宿するはずだったんだもの。それなのに、そうやって自分を責めるなんてやめて」
「・・・ごめん、大河」
「・・・いいのよ、わかってくれれば」
二人の目が合う。ふ、と同時に笑った。
跡部の声がかかり、向こうに見える大きな島への移動が開始した。
―――――
怒りの大河ちゃんの巻
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