噂の娘たちが出会いました
7月上旬。四天宝寺中3年雨宮大河は、東京にある氷帝学園中等部を訪れていた。
氷帝の音楽教師榊太郎が、大河にぜひ榊グループ主催のコンクールに参加してほしいと、四天宝寺中に申し出をし、
大河はその詳しい説明を聞きに来たのだった。
コンクールに出られることは嬉しい事だ。大河にとって異論はない。コンクールの内容も魅力的なものだった。
満足そうに校門に向かっていた時、大河の目に驚くべきものが映った。
あれは、見間違えようのない人物で、彼が何故此処に居て、何故そんな、氷帝のジャージを着ているのか全く分からず、混乱した頭のまま、
自分が運動音痴な事も忘れて、大河は衝動的に駆け出していた。
「白石くん・・・っ!?」
「へ?」
振り向いたその人物はやはりそのままの顔で、大河の混乱は一層深まる。
「どう、して・・・!?」
「えーと・・・確かにうちは白石やけど、くん、とはちゃうよ?」
「えっ?」
ぴたり、と大河の動きと思考が止まる。彼、もとい彼女はそんな大河の様子に苦笑した。
「あいつの知り合いなん?顔同じやさかい、間違えたんやね」
「えっと・・・もしかして、双子の妹さん・・・?」
大河が言うと、彼女の顔がぱっと明るくなった。
「なんや、うちのことしっとるん?確かにうちは、蔵ノ介の双子の妹のや」
なんだ・・・と、大河の肩が安堵感で落ちる。それを見ては小さく笑った。
「蔵ノ介は今頃あっちで練習しとるやろうし。見間違えるんはわかるけど、近寄うてみて何もおもわへんかった?」
「え?」
「背、あいつよりだいぶ低いねんで」
「・・・私はそれよりもっと低いから」
「あんま違和感感じひんかったんか。で、自分はもしかして、噂の雨宮大河ちゃん?」
え、と大河の顔が上を向く。そうして、確かに白石より少し低い位置に目線がある、と今頃になって気づく。
「どうして・・・というか、噂って・・・?」
「蔵ノ介からきいてんで、自分の事。大事な親友や!って自慢してくんねん」
「そうなの・・・」
「おおきに、大河」
「えっ?」
突然のお礼の言葉に、大河が目をぱちくりさせる。
「蔵ノ介のこと、いろいろ」
「そんな・・・白石くんには、私の方がいろいろ助けてもらってるもの。私のほうこそお礼を言わなきゃいけないのに」
「せやけど、蔵ノ介が笑ってられるんは、大河のおかげでもある。うちは、蔵ノ介が楽しく過ごせとるんが嬉しいんや。せやから、ありがとう」
「どう、いたしまして・・・」
なんだか照れくさくて、大河が視線を落とす。
「これからも、蔵ノ介と仲ようしたってな。あと」
「あと?」
「うちとも、なかようしてくれる・・・?」
今度は、が照れたように言う。大河は小さく笑って、こくりとうなづいた。
「もちろん。よろしくね、ちゃん」
「でえぇよ。ちゃん、とかってなんやむずがゆいし」
「それじゃ、よろしく、」
「よろしゅー!」
―――――
大河ちゃんがニセモノな気がしてならない・・・wwww
ぎゅっサバ序章・出会い編
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