お祝いのキス





















移動教室で次の教室に入ると、置いていかれたらしいふわふわした物体が、そこにいた。


「・・・慈郎?寝とるん?」


近づいてみるが反応は無い。


「慈郎、はよ起きんと次の授業遅れてまうで?」


ただでさえ授業中寝てるんだからせめて時間内に行け、という含みを込めて身体を揺すると、ようやく反応があった。


「ん〜?あー・・・、おはよ〜」

「おはよ〜、やないやろ。授業遅れてまうで?」

「んー・・・そだね〜・・・」

「あんたね・・・」


まだ寝ぼけ気味な芥川はへらへら笑っている。


「あー、そうだ、。今日、誕生日だよね」

「ん、せやで」

「おめでと〜」

「ありがと」

「でも・・・」


途端、芥川がしゅんとする。


「プレゼント用意しようと思ったんだけど、寝てばっかで用意できなかったんだよねー・・・」

「あー・・・別にえぇよ?気持ちだけでも嬉しいし」


忘れていた奴もいるし、と心の中で付け足す。


「んー・・・でもなぁ・・・あ、そーだ。、ちょっとかがんでー」

「ん?こう?」


言われたとおりに芥川の方にかがむと、芥川が少し上体を起こす。
次の瞬間、頬に温かく柔らかい感触。


「お祝いのキス〜」

「・・・おおきに」


驚きつつ、戸惑いつつもそれだけ返す。と、ドアの方でがたんっと大きな音がした。


「ジロー・・・でめぇなにやってやがる・・・?」

「あー、跡部ー。なにって、誕生日プレゼントあげたんだよ〜」

「誕生日プレゼントだぁ?今のがか?」

「うん、そ〜」


跡部はしばし何かを考えていたが、大きくため息をつくと二人に近づいた。


「ジロー・・・て、寝てんのかよ」

「あーもう慈郎。せめて自分とこのクラス戻って寝ればえぇのに」








そしてクラスメイトが集まり担当教科の先生が来ても、芥川は眠ったままだった。


















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ジローは天然なのか計算なのか・・・よくわかりませんです。はい。そして書きにくいw

跡部様はちょっと嫉妬。でも相手はジローなので抑えました。

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