大阪里帰り〜跡部様と一緒〜その3
の大阪里帰り最終日。
「今日はどこいこか」
「お前に任せる」
「ちゃん、通天閣は?近いし」
「せやなぁ」
普段は使わない観光マップを見ながらがうなる。
「通天閣にしよか。ビリケンさんにお願い事でもしに」
「ビリケン・・・?」
首をかしげる跡部に「行けばわかる」と笑う。
「ちゃん、次はいつ帰って来るん?」
「んー、冬休みには帰るやろ」
「まだまだ先やねぇ」
「その前に文化祭があるさかい、蔵ノ介連れて遊びに来ぃや」
「そうする!」
嬉しそうに笑う友香里の頭をなで、は背を向けた。
「景ちゃん、また来てな」
「あぁ」
跡部も薄く笑い、友香里の頭を軽く撫でる。
「・・・景ちゃん、それ、うちやのうてちゃんにせんと」
「・・・そうだな」
友香里の言葉に小さくため息をつき、跡部はのあとを追った。
家を出て少し歩くと、すでに大きく見えている通天閣。
「本当に近いんだな」
「四天宝寺中もこの近くやで。行く?」
「・・・いかねぇ」
苦虫を噛み潰したような跡部の表情に、は乾いた笑いを漏らす。
今朝は蔵ノ介が部活のためにはやく家を出て、出る間際に跡部に言葉をプレゼント。
「ほな跡部クン、今日でお別れやなぁ。向こう帰ったらが跡部クンとふたりってことも無くなるやろうし嬉しいわぁ」
言いすぎやろ、と妹二人心の中でツッコんだものだ。跡部が何か言う前に駆けだしたものだから、完璧な言い逃げだ。
「まぁ、蔵ノ介のアレは忘れて、今日は楽しもや」
「・・・そう、だな」
跡部は通天閣を見上げた。先ほどよりも大きく立ち伸びる通天閣を。
入場して、エレベーターであがっていく。幸い今の時間は人が少ないようで、すんなり入れた。
「5Fはいま工事しとって、3Fにビリケンさんがおるんやな」
「だからなんだよそのビリケンってのは」
「あとのお楽しみや。まずは景色楽しもか」
エレベーターを出ると視界に広がるのは大阪の街。
「あのちっこいのが大阪城やな。あっちが大阪ドーム。景吾も目ぇいいから見えるやろ」
「・・・あぁ」
「まぁ、景吾はこんな風景見慣れとるかもしれへんけど」
なんせ彼は財閥の息子。専用ヘリやジェットも持っているくらいだ。
「いや・・・」
そんな彼がふとこぼす。
「ヘリとはまた違う風景だ。見下ろすんじゃなく、見渡す。こんなのも、いいかもな」
「・・・そら、よかったわ」
の顔に笑みが浮かんだ。
エレベーターで3Fへ降りる。ここは喫茶店と土産屋のようだ。
「土産はあとで買うとして・・・お、ビリケンさんおった」
「・・・・・あれがビリケン、なのか・・・?」
の視線の先には、足を放り出して座り込む像。
「ビリケンさんは通天閣の守り神なんやで。足触って願い事をおもうと叶うって言われとるんや」
「・・・守り神、か」
跡部がビリケンさんを見る。にこりと笑うビリケンさんに、跡部は歩み寄った。
「お写真撮りますか〜?」
「お、どないする?記念に撮っとく?」
「そう、だな」
「ほなこちらへどうぞー!」
促されて、ビリケンさんの両脇に移動する。
「いきますよー。ビリケ〜ン!」
パシャ、とシャッター音がきこえた。
「「この笑顔、めっちゃえぇや〜ん!」」
「・・・なんだこのノリは」
「まぁ、気にしたらあかんて」
ノリきれない跡部が、小さく息をつく。
「ほな、ビリケンさんの足に触ってお願い事してくださいね」
(願い事・・・)
跡部の頭に浮かんだことはふたつあった。ひとつは、来年こそは全国優勝。こちらは実力を上げ、勝ち抜くしかない。
もうひとつは。
(・・・こいつが・・・)
ちらり、と目を閉じてお願い事をするを見る。
(が、俺と、これからも、ずっと共に、ありますように)
伝え終って足から手を離し、ビリケンさんを見る。なんとなく、さきほどよりも笑みが深くなった、そんな気がした。
新大阪駅でレギュラーたちへのお土産を買い、席に座る。
「どや?楽しめた?」
「そうだな、おもったより、よかった」
「そらよかったわ。連れて来た甲斐があったっちゅーもんや」
嬉しそうに笑い、はノビをした。
「・・・」
「ん?」
「・・・ありがとう」
「・・・おん」
気が晴れたようで、よかった。
―――――
跡部様と一緒シリーズ終了。
通天閣のは実際に行ってから書いてます(笑)
次の日どうしようかなーって考えて、あ、べたまと一緒に通天閣行こうって。
写真撮る時のやつも、うろ覚えだけどあんな感じでした。正直、ノれませんでした(苦笑)
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