大阪里帰り 〜跡部様と一緒〜 その2
「ほな、ここが客間な」
に促され、跡部が客間に入る。
「適当にくつろいどいてぇな。オカンに知らせてくるから」
「あぁ、わかった」
返事を聞くと頷いて、はパタパタ駆けて行った。それと入れ違うように、玄関の方から「ただいまー」と声がかかる。
足音がだんだん大きくなり、客間の前でぴたりと止まった。
「いらっしゃい、跡部クン」
にこりと笑って白石が言う。が、笑顔の裏に負のオーラが滲み出ていることを跡部は感じ取った。
「・・・邪魔してるぜ」
「せやなぁ、わざわざ東京からご苦労さんやー」
「・・・てめ」
「あー、蔵ノ介帰っとったん?おかえり」
「おん、ただいま。もおかえり」
「ただいま」
が戻って来て二人の会話に割って入る。口論になりかけるのを止めた形になるが、本人にはそのつもりはゼロだった。
「夕飯出来るのもう少しかかるさかい、先風呂入ってもらいてオカンが」
「そうか。なら、そうさせてもらうか」
跡部が入浴道具を鞄から出して立ち上がる。は風呂の場所と使い方を説明するために跡部を引きつれていった。
風呂から上がった跡部は、夕食の席に呼ばれた。今日白石家の大黒柱は不在のようで、客人である跡部が上座に座る。
「跡部くんの事はからきとったけど、こんなに男前とは思わへんかったわ〜」
「ありがとうございます」
白石家長女・美香奈の褒め言葉を跡部は素直に受け取る。
「口にあわへんかったら堪忍ね〜。どんなもんが好きかわからへんかったさかい」
「いえ、とても美味しいです」
薄く笑ってみせる跡部。こんな、礼儀正しく愛想のいい跡部を見て、は正直驚いていた。
監督以外にもこんな対応ができたのか。
母が、えぇ子やね〜と笑っている。
なんて、談笑しながら、夕飯時は過ぎるのだった。
「ほな、うち風呂入ってくるさかい、なんか用あったら蔵ノ介にでも友香里にでも言うてな」
「わかった」
言っては客間を後にする。
ふう、と一息ついて出されていた紅茶を口にした時、ふと視線を感じて、跡部は出入り口に目を向けた。
そこには、じーっとこちらを見てくる友香里の姿。
「・・・なんだ?」
「・・・ちぃと、ききたいことがあんねん」
まるで誰かに見つからないようにするために、友香里はこっそり客間に入った。すすす、とそのまま静かに跡部の前で正座する。
「もう、ズバッときくんやけど、カノちゃんのこと好きなん?」
跡部は問いの内容に一瞬きょとんとしたが、ふっと笑うと、あぁそうだと答えた。
「カノちゃんの、どこが好きなん?」
「どこが、だと?」
「やってカノちゃん、見ての通りクーちゃんと同じ顔で男前やし、性格かておしとやかとかとちゃうし、
今までカノちゃんに恋する人なんて見た事あらへんもん。女子しか」
自分の姉に対してそれか、と思わずつっこみたくなりつつ、跡部は答える。
「・・・確かにアイツは男に間違われることも多い。だが、アイツは充分女らしいと、俺は思う」
友香里は何も言わない。続きを待っているのだろう。
「どこが、ときかれれば、全て、と答えるしかないな。
少々無鉄砲なところも、時折見せる女らしい部分も、自分が自分らしくあるように進む姿勢も、全てが、好きだ」
言いきって友香里を見ると、それはもう、キラキラと目を輝かせていた。
「景ちゃんはカノちゃんのことよぉわかっとるんやね!」
「・・・景ちゃん?」
跡部の顔が歪む。だがそんなことお構いなしに友香里は続けた。
「うん、うち、景ちゃんのこと応援したる!」
「・・・それはありがたいがその呼び方は止めろ」
「クーちゃんはなんや気にいらんみたいやけど、うちは景ちゃんの味方や!」
「人の話を聞け」
「よろしゅーな、景ちゃん!」
「・・・もういい」
諦めたのか、跡部がはぁとため息をつく。ちょうど、風呂場のドアが開く音がし、が出てきた。
「なんや?二人仲ようなったん?」
客間に顔をのぞかせたが嬉しそうに聞く。にこにこしている友香里に対して跡部は疲れた顔をしているが、それも仲良くなったからこそだろう。
「うちらもうダチやんねー、景ちゃん」
「・・・景ちゃん?」
「・・・るせ」
どこでどうなったのだろうと思いつつ、は妹と友人が仲良くなったことを素直に喜ぶのだった。
そして跡部は、想い人の妹を味方につけた。
―――――
友香里が小6と思えないコレ(笑)
長女は捏造です。
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