初めての4月14日
4月14日。は、今までとは違う朝を迎えた。
「4月14日・・・一人とか、初めてや・・・」
4月14日はと、彼女の兄の誕生日だ。いつもは朝起きて一番に互いに「おめでとう」を言い、母に「ありがとう」を言うのだが、今年はそれが無い。
寂しさを覚えつつ、は時計を見てはっとし、急いで支度を始めた。
入学して日が浅いうちに誕生日がある人は、たいてい1年目は祝ってもらえない。も例外ではなかった。
「どないしたん?」
「んー?いや、なんでもあらへんよ?」
「ほうか?」
屋上にて昼食を食べている時、忍足が声を掛けて来た。様子がおかしいと思ったのだろう。苦笑いをすると、今度は宍戸がの顔を覗き込む。
「調子悪いんだったら、保健室行くか?」
「大丈夫やて。体調悪いわけやないし。ちょっと・・・いつもと違っただけや」
「?」
意味が解らずみんな首を傾げたが、は気づかなかった。
そこへ、の制服のポケットで、携帯が揺れた。
「誰や・・・?・・・!あ、ごめん、ちょっと、失礼するわ」
が立ち上がり、みんなから離れて通話を押す。みんな、自然とそちらに視線が向かっていた。
「びっくりしたわ、こないな時間にかけてくるなんて。・・・ん?・・・うん、せやね、うん」
「、誰と話してるんだろうな」
「さぁなぁ」
(あんなに穏やかなあいつの顔は、初めて見る・・・)
「・・・ん、ありがとう、蔵ノ介。おめでとう、蔵ノ介。・・・うん、あとで電話しとくわ」
「蔵ノ介・・・?」
「あぁ・・・なるほどなぁ」
「?」
跡部が呟き、忍足が納得の声を漏らす。怪訝そうに跡部が忍足を見るが、忍足は気づかずにやにやを見るばかり。
「ん、大丈夫や。あ、チャイムなっとるで。ん、また夜電話するわ。ほなな」
ピ、とが携帯を切って戻って来た。早々に、忍足がにやにや顔のまま一言浴びせる。
「ラブコールはもう終わりでええんか?」
「「!?」」
「は?」
「ラブコール!?」
跡部と宍戸が勢いよく忍足、を見、が間の抜けた声をもらし、向日が驚きの声を上げる。
「電話、アイツからやったんやろ?」
「あー、うん、せや」
「・・・おい」
どこかトーンの低い跡部に、と忍足が顔を向ける。
「・・・誰だ、その、蔵ノ介ってのは」
「・・・・・知りたいん?」
「・・・・・」
「知りたいん?」
「・・・・・・・・・・・あぁ」
顔をさらに歪ませ、跡部が頷く。しゃーないなぁ、とが言うのに、知らぬ三人、プラスいつのまにか起きていた芥川がごくりと唾を飲む。
「兄や」
「「「「・・・・は?」」」」
あっさりとしたの答えに、四人は間抜けな声をもらした。
「せやから、兄やて。双子の」
「・・・双子の」
「あー・・・が男顔負けな顔してるわけがわかった気がするぜ・・・」
「せやね、うち、蔵ノ介とおんなし顔しとるさかい」
「なんだよ、驚いて損したぜ!」
「損とか言わんとってぇな岳人」
「双子なんて素っ晴らCーね!」
「おおきに。蔵ノ介はちょっとアホなとこもあるけど、イケメンで、自慢の兄やねん」
「自分の兄貴をイケメン言うとかどないやねん・・・」
「黙っとり、侑士」
四者四様、五者五様の反応で、はこっそり笑った。
「今日様子がおかしかったんは?」
「・・・今日な、うちと蔵ノ介の誕生日やねんけど・・・」
「誕生日なのか!?」
「せや。で、朝起きて、違和感あってん。
毎年誕生日は、お互いにおめでとう′セい合ってオカンにありがとう′セうんやけど、今日はそれがのうて・・・寂しいなって思うて」
「電話すらよかったやん。白石がしてきたみたいに」
「時間無かったんや。支度とかで」
一人暮らしの朝は早く、余分な時間も少ない。電話をする時間はとてもではないがなかった。
「吹っ切れたようやな、アイツが電話してきて」
「せやね!あとでオカンに電話したらなあかんわ」
そう言うの顔は晴れやかだった。
「・・・よし、部活終わったらの誕生パーティやろうぜ!」
「え?」
「そりゃいいぜ!場所は部室か?」
「え、ちょ」
「いや、むしろの家でえぇんちゃう?帰りになんか買うて」
「さーんせーい!たっのしそー!」
「いや、だから・・・」
いつの間にか自分を置いて話が進んでいる。
「ふん・・・仕方ねぇな。今年からは、俺様たちも祝ってやるよ、お前の生まれた日を」
そう言う跡部の顔はなんとも言えぬくらい輝いている。
「・・・おおきに」
もまた、嬉しそうに笑った。
誕生日がまた、楽しみになる。
―――――
誕生日ネタ。
4月生まれの人っていつの間にか誕生日過ぎちゃってるんですよね。友達でそういうのありましたわ。「え、もうすぎちゃったの!?」って。
跡部たま無意識にジェラってくれてたらいい←
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