プワソン・ダヴリル




















それは・・・芥川の一言から始まった・・・。





























東京都氷帝学園中等部男子テニス部所属芥川慈郎は、携帯電話を傍らに、いつものように眠っていた。
今日は土曜日、部活は昼休憩の時間なので、咎める者はいない。そんな彼の携帯がバイブで震えた。
煩わしいと感じたのだろう、彼がうっすら目を開ける。いつもなら、誰からなのかを確認してまた眠ってしまうが、今日は違った。
飛び起きてすぐさま携帯を開く。家族でもただの友達でもなく、そのメールの差出人は。









『丸井くん』









と、ディスプレイに表示されていた。そして芥川は、そのメールを読んで、また飛び上がったのだった。


























「忍足ー!忍足ー!」

「なんやねんジロー。珍しゅうテンションたこうして」


昼休憩も終わりに差し掛かる頃、忍足の前に芥川が駆けて来た。


「俺、すごいこと知っちゃったCー!」

「せやからなんやねん」

「忍足のイトコちゃん、彼氏できたんだって!!」








・ ・ ・ ・ ・








「は?」

「だから、彼氏できたんだって!ちゃん!」

「は・・・まさか、んなアホなことあるわけないやろ・・・あのやで・・・?」


忍足のイトコ、忍足は、恋愛に疎い。それはもう、疎い。
幼い頃から、同じくイトコの謙也と共によからぬ虫がつかないようガードしてきたが、全く気付いていないようだった。
三人とも学校がわかれてしまった今でも、そういったピンクな話は出なかったというのに・・・。


「ありえ、へんやろ」

「でもでも、ホントみたいだC〜」

「・・・ジロー、俺、腹痛なったから帰るわ」

「え?うん、わかった。お大事にー」


忍足は、荷物をまとめると足早に歩き出す。


携帯電話を片手に。





























部屋でくつろいでいた謙也は、携帯電話着うた3秒で通話ボタンを押した。


「なんや侑士。何か用か?」

『謙也・・・落ち着いてききや・・・』

「な、なんやねん不気味な声出して」

『あんな・・・』


侑士のただならぬ様子に、謙也は思わず息をのむ。


に・・・』

、に・・・?」

『彼氏ができたらしいねん・・・』




・ ・ ・ ・ ・




「は?」

『やっぱそんな反応やんな』

「は?ちょい待ち、なんやねんそれありえへんやろあのニブチンに限って!!」

『俺も半信半疑やねん』

「誰からの情報や!?」

『ジローや。あいつはこんな嘘つきはせんしな』

「ちょ・・・のやつ、騙されとるんとちゃうか!?」

『わからへん・・・謙也、明日、関東こっち来れるか?』

「むしろ今からでも行ってやるっちゅー話や!」

『よし、わかった。ほんなら明日、に直接確認しに行くで』

「おん!!」


通話が切れる。善は急げ、ということか。謙也らしい。ツーツーという音を切り、侑士は人知れずため息をついた。




























翌日。忍足イトコ’Sは、立海大附属中に来ていた。


「ほな・・・行くで」

「・・・おん!」


はここの男子テニス部でマネージャーをしている。幼い頃から従兄弟たちのテニスを見てきた影響だ。
まっすぐテニスコートへ向かうと、目的の人物が見えてきた。一目でわかるが、彼ら二人、どちらともあまり似てはいない。
自然と足取りが速くなり、彼女に向かって突っ込んで行った。























「「!!」」

「へ?なんで侑士と謙也がここに?」


こてん、と首を傾げる彼女の両肩を、一足先に着いた謙也ががしっと掴む。


、正直に、答えてや?」

「う、うん。なに?」

、お前・・・彼氏おるんか・・・?」

「おらんよ」

「「・・・は?」」


あっさり言ってのける彼女に、謙也と侑士の間の抜けた声がハモる。


「え、ちょ・・・ほんまか?」

「嘘付いてどうするの。おらんよ」

「・・・せやったらジローのあれはなんやったんや・・・?ジローはあないな嘘つくやつとちゃうで」

「ジローくんからの情報なの?・・・あ」


心当たりが何か見つかったらしく、が小さく呟く。


「・・・侑士、それはほんとにジローくんからの情報なのね?」

「あぁ、せやで」

「ジローくん、誰かからきいた風だった?」

「せやな・・・そないな感じやったわ」

「・・・謙也、今日、何月何日?」

「何月何日で・・・4月2日やろ」

「昨日は?」

「しがつついた、あーッ!!!」


謙也ふぁ大声を上げる。侑士もハッと気づいてを見た。


「エイプリルフールっちゅー話か・・・!」

「せやけど、ジローはエイプリルフール引っかけるより引っかかる方やで?」

「だから、引っかかったんよ」

「誰から・・・」

「ん?なんでイトコたちがいんだ?」


第四者の声がし、三人の忍足がそちらを向く。そこには、フーセンガムを膨らませた丸井がいた。


「ブン太・・・」

「あ、もしかして芥川の奴引っかかったのか?やっぱ俺は何しても天才的だな」

「天才的、じゃなーい!人を巻き込むな!!」

「被害はその辺で済んだろぃ?」

「そのへんてなんやねん!俺は大阪から来とるんやで!?」

「だまされる方が悪いんだろぃ?エイプリルフールなんだからよ」

「だからってあたしをネタにしなくても・・・」

「大体冷静に考えてみろぃ。こいつに彼氏ができると思うか?」

「「・・・・・」」


言われて忍足男組がを見る。


「「・・・無いな」」

「ひっどー!侑士と謙也にいじめられたって恵里奈姉に言いつけてやる!!」

「ちょ、待ち、早まったらあかん!!」

、それはあかん。姉貴に言うんわあかん・・・!!」

「問答無用!ブン太の事も言うからね!」

「え、おい、俺も!?」









その後三人はにあやまり続けたがきいてもらえなかった。
後日、侑士の頭には鉄拳が降り、謙也には長―――――――――い圧力メール、ブン太には短かったものの寒気のする電話が、送られたそうな。

















―――――
友人Pからのリクエスト(?)、忍足ズのイトコネタ(笑)
姉貴最強説。
タイトル「プワソン・ダヴリル」は、フランス語で「エイプリルフール」とのこと(by.wiki先生)書くと「Poisson d'avril」

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