ちゅーからうちなーんちゅ!





















4月。桜の咲く季節だが、ここの桜はすでに散ってしまって緑が生い茂っている。
少し残念に思うが、これからここで暮らすのならまた見られるだろう。そう思いながら歩を進める。
は、今年の春、広島県から沖縄県に引っ越してきた。両親が沖縄で喫茶店を開きたいと言い出したのだ。
特に異論も無かったは頷き、沖縄についてきたのだ。まぁ、せめて中学卒業まで待ってくれてもとは思ったが。
そして今日は、転校初日。は3年なのに真新しい比嘉中の制服を着て、担任のあとに続いていた。
担任が先に教室に入る。教室のプレートを見ると、『3年2組』と書かれていた。
しばらくすると担任に呼ばれたので、教室に踏み入れた。教室内の景色が目に飛び込んでくる。ここが今日から、自分の教室。


「初めまして、です。広島から来たので沖縄の事全然わかりません。いろいろ教えてもらえたらと思います。よろしくお願いします」


教壇で自己紹介をし、ぺこりと一礼する。担任に席を言い渡されてそちらに向かう。
席は窓際だ。着席すると視線を感じて隣を見る。茶髪長髪の男子がを見ていた。


わん、甲斐裕次郎。ゆたしくな!」

「ゆた・・・?」

「よろしくって意味さー」


ハテナを飛ばすと、甲斐の前の席の金髪長髪男子が後ろを向いて言った。


「あ、なるほど」

わんは平古場凛。ゆたしくさー」

「ゆたしくー!」


真似して言ってみると甲斐と平古場はぱちくりと目を瞬かせ、笑った。


お前やー、面白い奴やっしー」

「そう?」

「確かに面白いさー」


三人で笑う。どうやら楽しくやっていけそうだ。
そのすぐあと担任に「仲良くなったようで何よりだが、授業始めるぞー」と言われてまた、小さく笑い合うのだった。



















木手は、甲斐にスケジュール表を渡すために3年2組に訪れ、目を丸くした。
甲斐と平古場が、見知らぬ女子と楽しそうに話しをしているではないか。
二人とも女子とはそれなりに仲がいいが、こんな風に話している姿はあまり見ない。しかも、見慣れない女子。
木手は疑問を覚えつつも近づいた。


「甲斐くん」

「お、木手!」

「おぉ永四郎」

「?」


木手はくい、と眼鏡を上げてをちら見すると、甲斐に向き直った。


「甲斐くん、ホームルームが終ったら来るように言っていたはずですが?」

「あ・・・すっかり忘れてたぜ。わっさん!」


がこっそり平古場にきく。「わっさんって?」「ごめん、って意味さー」そんな会話を目を向けずにきいて、木手は甲斐にプリントを差し出した。


「仕方ないから持ってきてあげましたよ」

「にふぇーでーびる、木手ー」

「にふぇ・・・?」

「ありがとうって意味さー」

「おぉ、なるほど・・・」

「ところで」


木手が、に目を向ける。


「彼女は一体誰ですか?」

「あぁ、今日転校してきた、さー」

「ほう・・・」


木手がじっとを見る。観察されている様で居心地が悪く、は身じろぎした。


「えーと、よろしく!・・・えっと」

「木手永四郎です」

「よろしく、木手!」


へら、と笑うと木手も、小さく、小さく笑った。それを偶然見た甲斐が目を驚きに見開いた。


(木手のあんな顔、滅多に見れないさー)


どうやら木手ものことを気に入ったようだ。なんだか嬉しくて、甲斐は笑みをこぼした。
も心中で、これから楽しそうだと、改めて思うのだった。



















―――――
沖縄っ子の口調がわかりません(笑)

タイトル訳「今日から沖縄人!」

Created by DreamEditor