重たい身体を引きずりながら、どれだけ歩いただろうか。主君はきっと、佐和山城に戻って今後について策を練っている。そう信じ、それを糧に、ただ気力のみで歩いていた。










遠くに騒然たる声があがっていることに気づき、はぼんやりする頭と目でそちらを見た。あれは、なんだ。誰の。の目がゆっくりと、限界まで見開かれた。そこには、会

いたかった方の、ソレが、あった。全身の力が一気に抜けて膝が折れる。絶望に突き落とされ、額を地につけて突っ伏した。呼吸が乱れて苦しい。現実に引きずり込まれて、苦し

い。震える身体で、整わぬ呼吸で、声を、絞り出す。


「・・・ッつ、な、り・・・さ、ま・・・」


視界はもはや真っ白な閃光で埋め尽くされてなにもうつっていなかった。目をぎゅっと閉じ、そして、戦後だというのに澄み渡った青空を仰いだ。


「三成様ああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!・・・・・っく・・・・・」


力の限り絞り出した声はこだまにすらならない。大きく肩を上下させ、嗚咽を残したままふらりと立ち上がる。おぼつかない足を動かし、崖際の木のそばに寄った。


「・・・約束・・・」


ずるずると木を背に座り込んでいき、正座する。懐に手を入れ、銀色に輝くそれを抜く。


「三成様・・・がすぐ・・・参ります・・・」


スッと肩筋に上げられる腕。切っ先は、自ら。


「三成様は、意外と寂しがり屋だから・・・今度こそ、永久に、共に、そばにおります」


痛みは一瞬だった。すぐに頭がくらりとして全身の力が抜ける。支えを失った身体は体勢を崩し、支えの無い空白の場所へ、放り出された。


(三成様・・・この想い・・・来世ではお伝えできると・・・嬉しいです・・・)


もうすぐ会えます。もう少しだけ待っていてください。私の、愛しい方―――



















数日後、崖下で女武者の死体が発見された。発見した徳川家臣の数名は、その疲れ果てた中の、どこか安らかな顔を見て、涙したという。
























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補足。
三成の最期は史実とほぼ同じです。とてもじゃないがつらくて直接書けなかった・・・。



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