未来の為、明日の為
ミーアの遺体はアークエンジェルの霊安室に寝かされた。ラクスがミーアの荷物から一枚のディスクを発見し、キラたち四人はそれを見てみることにしたようだ。それは日記だったようで、ミーアがラクスの偽物をするにあたっての、彼女の想いがたくさん詰まっていた。彼女もまた、世界を救うために、戦争を終わらせたいという願いをもって、活動をしていたのだった。自分がラクスのかわりをして戦争が終わるならと。ミーアの遺体は白い花で包まれ、眠りについた。
その後デュランダルの全メディアを通しての演説がはじまった。デスティニープランの導入実行宣言。自分の役割を知り、それを全うすることで争いの無い世界を造る、完全に管理された世界。そんなもので人が本当に幸せだと思っているのだろうか。思っているからこその発言なのだろうが、そんなもの幸せでもなんでもない。デスティニープランの詳しい説明が流れてくるが、ただ白い目で見ていた。だが人々はすでにこれを受け入れようとしている可能性がある。デュランダルの夢物語のような言葉を信じ、データ採集に及んでいるかもしれない。反対に、否をとなえ暴動を起こす者も出てくる。その暴動を、おそらくデュランダルは容赦なく打ち滅ぼすだろう。アークエンジェルも面々もエターナルのバルトフェルドらと話あっていた。もちろん賛同する気などこれっぽっちもないのだが、どう行動するかである。地球においてはオーブとスカンジナビア王国は拒否を示して防衛体制に入っているようだ。他の国々はまだ判断しかねているらしい。
「拒否すれば、向こうも武力で押してくる。そうなれば、戦うしかない」
「うん・・・戦うしかない、か。プランも嫌だけど、戦うしかないってなることを、本当はもう終わらせたいのにね」
「はい・・・ですが、私たちもいまは、戦うしかありません」
ラクスの声が静かに響く。
「夢を見る、未来を望む、それは全ての命に与えられた、生きていくための力です。何を得ようと、夢と未来を封じられてしまったら、私たちはすでに滅びたものとして、ただ存在することしかできません」
それは本当に生きて幸せであるといえるのだろうか、本当にそうなのだろうか。
「全ての命は、未来を得るために戦うものです。戦ってよいものです。だから私たちも、戦わねばなりません。今を生きる命として。私たちを滅ぼそうとするもの、議長の示す、死の世界と」
夢や未来を守るために。人として生きる力を、守るために。
連合のアルザッフェルで動きあり、とのことで、ザフトが動き始めた。あるザッフェルの周辺に艦隊が集結し、そこにはミネルバの姿もあった。そして突如の高エネルギー発生。発生地点はダイダロス基地、あの、プラントを破壊したレクイエムだった。ザフトが奪取したものを使ったのだ、デュランダルは。警告と、これを使ってあっという間に破壊することができるのだという脅しを込めて。レクイエムはアルザッフェルの地表を切り裂き、破壊した。これで連合はザフトに対して抗う力をほぼ失くしたと言える。次はきっとオーブだ。オーブに連絡をとり、アークエンジェルはエターナルと合流すべく動いた。
アークエンジェルとエターナルが合流し、彼らは行動を開始した。まずはレクイエムの一時中継点を墜とす。ここを早々におとさなければ、どこでも狙える°ー怖はなくならないからである。鍵となってくるのはスピードだ。
『キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!』
『アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!』
「・、ワルキューレ、出撃する!」
エターナルからフリーダムとジャスティスが発進し、ミーティアを装着、アークエンジェルからはワルキューレが発進した。速さを誇るこの三機で、一刻でも一分でもはやく、おとさなければ。
ラクスの、ザフトへの言葉をききながら機体をはしらせる。ここにいるのがボルテールであればよかった。イザークがいるのであれば話はできるから。だがおそらくジュール隊はあのままダイダロス付近であろう。すぐにこれを望んでも仕方がない。今はここにいるザフト軍が聞き入れてくれることを願うしか。聞き入れてもらえないなら、戦うしかないが。そして残念なことに聞き入れてもらうことはできず、戦闘は開始された。向かってくるザフト軍を戦闘不能にしつつ走る。だが数は多くなかなか進むことができないでいた。ラクスが語りかけ続けると戸惑い動きを止めるものもいる。希望はあるはずなのだ。諦めず、突き進んでいけば。だがそこへザフトの増援が現れた。艦隊と、ミネルバだった。
「どうあっても、戦うしかないのね」
向かってくるミネルバに一度目を伏せる。戦うしか、ないのだ。
アークエンジェルからアカツキとムラサメが数機、エターナルからドムトルーパー三機が発進する。二隻の道を切り開くため次々と向かってくるザフト軍をうちたおしていった。次は、とが戦場に巡らせたとき、ピピと何かを感知した。向かってくる複数のMS。その先頭に白いグフを視認しては目を瞠り、そして笑みを浮かべた。彼らがどういう思いをもって出てきたのかはわからない。もじかしたらザフトの増援なのかもしれない。だが、それでもは笑みを浮かべずにはいられなかった。
「アスラン!覚悟しておいたほうがいいわよ!」
『は!?何を言ってるんだこんなときにっ・・・っ!?』
ジャスティスにミサイルが向かい、それが他方向から撃ち落とされる。ではない、キラは他のところにいる。では誰が、とアスランが困惑したそのとき、聴き慣れた怒声がコックピットに響き渡った。
『貴様らぁ!またこんなところで何をやっている!?』
「あら、私も含まれちゃった」
『イザーク!』
『何をって、こいつを落とそうとしてんじゃんかよ』
『ディアッカ・・・』
の顔に笑みが浮かぶ。よかった、手助けをしてくれたということは、そういうことだろう。
『俺が言っているのはそういうことじゃない!』
『もういいだろ、そんなことは。それよりはやくやることやっちまおうぜ』
『え?』
アスランの口から間の抜けた声がもれる。それはそうだ、相手は今自分達が戦っているはずのザフトなのだから。
『ディアッカ貴様ぁ!』
『こいつを落とすんだろ?』
そしてディアッカがはしっていく。は思わず「あははっ」と声をもらした。
『何がおかしい!?』
「いやーごめんごめん。ほんとあんたたちってかわんないわねって思って。・・・すごく頼もしいわ」
『・・・』
「いきましょう。あんなもので、人の未来を壊させちゃいけない」
『・・・あぁ!』
イザークが、アスランが、が、中継ステーションに向かった。そしてようやくキラとアスランが中継ステーションにとりつくことができ、ミーティアの刃で巨大なそれを一刀両断する。一時中継点を破壊しひとまずは難を逃れた。だがこれで安心ではない。アークエンジェルらはデュランダルのいるであろう基地へと向かっていた。そして不意に彼らは、アンノーンの反応をキャッチした。それは要塞だった。高エネルギーを感知し、はっと気づく。
「まずい!ジェネシスだわ!!」
だがすでにエネルギーは充填完了しており、それは発射された。目標はアークエンジェルらではなく、ダイダロスから合流してきたオーブ艦隊。ジェネシスは地表を削り、艦隊を一瞬にして消し去った。
「まだあんなものを・・・!」
前方には要塞メサイアにジェネシス、後方にはミネルバらザフト艦隊。だがここでひくわけにも、やられるわけにもいかない。フリーダムとジャスティスがミーティアを外し、メサイアから出撃してきたレジェンド、デスティニーと対峙した。キラと、レイ。
「レイ・・・」
彼が戦う理由はなんなのか、その奥底には誰がいるのか。はそれが、気がかりでならなかった。
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