事態は未だ混沌の中に
スカイグラスパーは被弾してアークエンジェルへ緊急着艦、フリーダムは未だデスティニーとレジェンドの猛攻に苦戦していた。そこへ、アスランの声が響き渡る。アスランが生きていたことへの動揺か、その言葉への動揺か、デスティニーの動きが止まった。だがレジェンドが攻撃を再開し、アスランの訴えを遮ろうとする。それでもアスランは諦めずシンに語りかけた。お前がオーブを撃ってはいけないと。それとは別にはフリーダムとレジェンドの、キラとレイの戦いも気がかりだった。レイが狂気に囚われないかが、心配だった。
アークエンジェルが海中に潜るとミネルバが手を出せなくなり、ザフト艦は次々と沈んでいった。そこへ、オノゴロ島の裏側から飛び立つシャトルがあった。紋章はセイラン家のもの。あれにジブリールが乗っている可能性が高かった。ムラサメが、ミネルバから発進したインパルスが追うが、ブラスターも無しに追いかけるのは無理だった。ジブリールを乗せたと思われるシャトルは宇宙へと飛び立ってしまい、戦況が不利になり目標も見失ってしまったミネルバは、一時オーブ領海外へと撤退していった。気を張っていたのが切れたのか、ジャスティスが急停止して墜落していく。フリーダムがなんとか空中で受け止め、アークエンジェルへと帰投した。
戦後処理はまた慌ただしくなるだろう。はアークエンジェルの、ミリアリアに直接繋いで状況をきいた。
『あたし達も必死に戦って、キラが戻ってきてくれて、アスランが飛び出していって、ラクスの味方って人たちとか、オーブの人たちの力でなんとかザフトは追い返せたけど、被害はやっぱり大きいわね・・・』
「・・・アスランの様子は?」
『キラも真っ青!傷口開きまくっちゃって、また医務室いきよ』
これにはミリアリアも呆れて肩をすくめてみせた。
『メイリンちゃんが今はついててくれてるわ。カガリはオーブの方で手一杯だし』
「そう・・・キラとラクスは?」
『今頃アスランのとこじゃないかしらねぇ』
「しっかり叱ってくれればいいのに、キラもラクスも」
『それはの役目だからって、キラ言ってたわよ』
怒ること、見透かされてる。我が弟ながら読みがいい、とは苦笑した。
『あ、さん、今からカガリが声明出すんだけど、観る?』
「観る!」
言うとミリアリアは「ちょっと待ってね」とモニターをいじった。テレビが映し出され、そこにカガリの姿が映る。それは全メディアを通しての、カガリから、デュランダルへのメッセージ。だが、それは途中で乗っ取られた。映し出されたのは、偽のラクス・クライン、ミーア。ミーアが世界に訴えかける。ジブリールを匿ったオーブが理解できないと。は自分が今凄まじい顔をしているであろうことを自覚しながら、乱暴にデスクを殴りつけ、睨みつけた。だが続いてまた画面が歪み、違う姿が映し出され、は目を瞠った。
『その方の姿に、惑わされないでください』
それはラクスだった。今のを観て、カガリが中継をしているところに向かったのだろう。ラクスもまた決断し、彼女と戦うことを選んだ。カガリとラクスの並んでいる姿が、テレビに流れている。
『私は、ラクス・クラインです』
は動揺、混乱するザフト、プラントを想像して、不謹慎とわかっていながらも、笑みを浮かべたのであった。
ラクスの演説が終わると、はワルキューレに移動していた。細かな場所を調べるには、エターナルよりワルキューレのほうがハッキングと探知がしやすいからである。キーボードを叩いていると、妙なものを引っ掛けた。12宙域に、動くコロニー≠ェいる。護衛艦隊もおり、正体はよくわからないが、防衛に出たザフトと戦闘を開始しているとのこと。防衛に出ているのはチャニス隊と、ジュール隊。は映像をハッキングしてきてモニターに映し出していた。パイプを切ったような形のそれをイザークたちが停止させるため奔走する。何か、何か嫌な予感がする。そしてそれは、放たれた。月の裏側から高エネルギーが発射され、パイプを通じてビームを曲げるようにはしっていくそれは、砂時計の形をしたそれを、貫いた。
「・・・っ!?」
衝撃的な出来事に息をつまらせ、目を瞠る。ビームはそれらを切り裂き、ヤヌアリウスとディゼンベルが、破壊された。外で何が起きているか知らず、ただ普通にすごしていた人たちの命が、何十、何百と消えた。
「こんな・・・こんなものが・・・!」
ダンっとコックピットを殴りつける。拳が震え、ギリ、と歯ぎしりがおきた。
「こんなものを!!まだ!!」
やったのはブルーコスモスの盟主ジブリールだろう。コーディネイターを毛嫌いし、憎む者だからこそ成せることだ。
戦闘はまだ続いていた。イザークらが敵艦隊を撃沈していく。あんなものをもう二度と撃たせてはならないと、奮闘している。
「イザーク、お願い・・・!」
照準のコースからみると、やつが狙ったのはアプリリウスだった可能性もある。あそこには、大切な家族がいるのだ。いや、アプリリウスでなかったにしても、プラントを破壊させることは、多くの何の罪も無い命を消させることは、もう絶対に阻止しなくてはならない。ジュール隊、チャニス隊の激闘によりそれはひとつ破壊された。だがおそらく同じものがまだいくつかある。コースによっては何度でもプラントを狙えることに、かわりはなかった。
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