新たな青と紅の翼
敵は容赦なくうち込んでくる。はエターナルに当てないよう必死に一斉射撃でミサイルを撃ち落としていった。ドラグーン・システムも一度使用してみたが、慣れるのに幾度か試さないと無理そうである。さすがにオプションパーツでは感度の限界があるのであろう。
「くっ、そ・・・!!」
エターナルも迎撃をしているがどこまでもつか。数が多すぎてだけでは対処がしきれない。おとしてもおとしてもキリがない。やがてバルトフェルドも彼用に造られたガイアで出撃してきたが、それでもやはり数の多さに苦戦した。
「数多すぎ!」
だがここでエターナルをおとさせるわけにはいかない。なんとしても守らなければならない。手一杯になっていると、エターナルにむけてザクがキャノンを構えた。まずい、さすがにザクのキャノンは。ワルキューレのアクセルを思い切り踏み込み全速で走らせるが、間に合うか。
「だめ・・・っ」
が歯を食いしばったとき、ピリ、と頭にはしるものがあった。え、と目を瞠って見やると、白と青の機体がそこにいた。
「ストライク!?」
『ストライク!?』
とバルトフェルドの声が重なる。以前キラが、ムウが乗っていたストライクはもう無い。ということはあれはストライクルージュということになる。乗っているのは。
「キラ!?」
『ラクス、、バルトフェルドさん』
『キラ!』
『お前っ』
『すみません!でも、心配で!』
ブースターを装着して宇宙へのぼってきたのだ。まったく無茶をと思ったが、これで勝機は見えてきた。
『馬鹿が!だったらはやくエターナルに入れ!』
『えっ?』
『お前の機体をとってこい!』
今まさに、ポッドでアークエンジェルにおろそうと思っていた機体。ストライクはエターナルにはしった。
『持ちこたえるぞ!』
「えぇ!」
まだまだ撃ってくる敵を迎撃しながらキラを待つ。やがて、白と、青と、そして金を散りばめた、ストライクフリーダムが宇宙に飛翔した。
ストライクフリーダムは出撃後わずか2分で25のザクとグフを撃退した。フリーダムに搭載されたドラグーン・システムもすぐに使いこなし、さすがとは感心した。そしてナスカ級3隻も、エンジンと砲台を破壊して航行不能とさせた。これでキラはまた、キラの戦いができるようになったのであった。3機はエターナルへと帰投し、今後について話し合った。
「ヘブンズベースから逃げたジブリールは、オーブにいるそうよ」
「なっ・・・」
「けど、オーブは・・・セイランはそれを否定した。ザフトがジブリールの引渡しを通告したにも関わらず」
ザフトはすでにオーブ領海へ進軍している。証拠も無しにしているわけもなく、これは決定的なことなのだ。それなのに虚偽の応答。これはもう、開戦は免れない。ザフトが狙ったのは、虚偽の応答をしたセイラン家だった。そして領海、港で防衛戦が繰り広げられる。
「戻らないと」
「そうね、でも・・・」
ガイアがいるとはいえ、このままエターナルを残していくのも心配だ。エターナルは完全な宇宙艦で地球への降下はできない。
「・・・アークエンジェルには、アスランがいる」
キラの声にラクスとの顔が彼に向く。
「でも、アスランはまだ・・・」
「うん、でも、アスランならきっと大丈夫」
「キラ・・・」
それは身体二重の意味でであろう。キラにはわかっているのだ、アスランのことが。
「それで、インフィニットジャスティスには、ラクスを」
「え?」
「は!?」
キラの発言にとラクスの声が重なる。二人とも、後ろできいていたバルトフェルドも驚きに目を瞬かせた。
「の、乗せるの?ラクスを?でもラクス、操縦なんて・・・」
「ほんの少し動かすだけなら、私にもできると思いますけれど・・・」
「で、でもラクス、降りる場所は戦場だから、危険よ!?」
「その危険な場所で、あなた方はいつも戦っているのでしょう?」
ラクスに小さく微笑まれ、は言葉が出なかった。まだ納得できなくてがうめき声を上げる。だが正直なところ、こうして言い合っている時間すら惜しかった。
「ラクスはキラが守ってやれ、それでいけるだろう」
「アンディ、でも」
「それで、俺とお前でエターナルを守る。いいな?」
「・・・わかった」
は大きくため息をついて、そしてキラを見た。
「ラクスと、カガリと、アークエンジェルのみんなと、オーブを頼んだわよ」
「うん」
キラはしっかり頷いて、ラクスの手を引いていく。
「あっ、ちょ、待ちなさいキラっ」
「え?」
ブリッジを出ようとしたキラを、が慌てて止めた。
「着替えは、私が手伝うわ・・・」
「・・・あ」
思わずキラとラクスは見合い、小さく笑ったのであった。
ラクスのパイロットスーツは新鮮で、思わずじっと眺めていたくなるようだった。カガリのとはまた違って薄桃色のパイロットスーツなんて誰のために用意していたのかとききたくなるものだが。フリーダムに乗り込んだキラと、ジャスティスに乗り込んだラクスを見送る。ジャスティスはフリーダムに手を引かれながら降下するようだ。はブリッジでひたすらキーボードを叩いた。少しでもはやく多くの情報を得るために。
オーブは苦戦を強いられていたが、ウズミがカガリに遺したアカツキにカガリが搭乗して出撃、それによりめちゃくちゃだったオーブの指揮並びに士気は整い高められ、ザフトをおし始めた。アークエンジェルも発進し、オーブを守るために戦線に加わる。しかしそれで終わるザフトではなかった。ジブラルタルにいたはずのミネルバがカーペンタリアの軍に合流し、デスティニーが戦場に現れたのだった。アカツキとデスティニーがぶつかり合う。しかし、カガリにシンの相手は荷が重かった。アカツキの左腕が切り落とされ、デスティニーの刃がアカツキに襲いかかろうとした、その時。青の翼がアカツキを救い、デスティニーの前に立ち塞がった。アカツキを国府本部の方へ向かわせ、フリーダムとデスティニーが交戦を開始する。ジャスティスはアークエンジェルへと入り、そしてミネルバがアークエンジェルへと向かってき、こちらも因縁の戦いが始まった。続いて上空からの降下部隊、製造元はザフトになっているが、これらはラクス派の新型だった。ファクトリーで制作していたドムトルーパーが完成したのだ。ヒルダ、ヘルベルト、マーズはザフト軍を打ち払っていった。
しばらくするとエネルギー切れが、デスティニーが下がっていった。アークエンジェルとミネルバの交戦は続いており、アークエンジェルにミサイルが撃ち込まれそうになる。そこを救ったのは、一機のスカイグラスパーだった。誰が乗っているのかはわからないが、助けてくれたのなら味方でいい。は引き続き情報収集に勤しんだ。
今度はデスティニーとともにレジェンドも出てきた。二機がフリーダムに襲いかかる。二機同時の相手にキラも手こずっていた。そこへ、新たな機体が空に舞い上がる。クリムゾンレッドの機体はかつて守るために散っていった機体とよく似たそれ。アスランの乗ったインフィットジャスティスが空を駆けた。まだ乗れる状態ではないとキラは言っていたが、大丈夫だろうか。だが事実乗っているのなら、大丈夫なのだろう。心配とは反対に、の口元には笑みが浮かんでいた。同時に少しのもどかしさ。こちらを守ることも大切なことだが、キラたちが戦っているのに自分がここにいるのが、ほんの少し歯がゆかった。
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