歌姫の出陣





















胸騒ぎがする。何かのひっかりを感じる。その一心ではキーボードを叩いていた。デュランダルは地球へ降りたというから、プラント本国ではない、ジブラルタルだ。そしては、胸騒ぎの原因を探り当ててしまった。


「アスランと・・・メイリン、が?」


情報操作、グフを奪っての逃走、そして、新型であろう、デスティニー、レジェンドにより撃墜。何がどうしてそうなったかはわからないが、これは非常にまずい事態になるかもしれない。早々アスランが死ぬとも思えないが、ロゴスを討たんとしているザフト、そして地球連合の矛はすぐに向けられるだろう。案の定、ジブラルタルからロゴスの基地、ヘブンズベースに向けて通告が行われた。


「我らザフト及び地球連合軍は、ヘブンズベースに対し、以下を要求する。一、先に公表した、ロゴス構成メンバーの即時引渡し。ニ、全軍の武装解除、基地施設の放棄・・・これはいよいよ・・・」


はやくしなければ間に合わなくなる。ヘブンズベースが落ちれば、次に矛が向くのはおそらくオーブだ。はワルキューレのコックピットから飛び出してブリッジへ急いだ。


「ラクス!今の・・・っ」

「はい、確認しました。はやくしなければなりません。このままでは彼を、止められなくなります」


は頷いた。刻限は迫っている。とそこへ、アークエンジェルから通信が入った。


「キラ?」

『よかった、なんとか繋がって』

「キラ・・・!!」


がぱっと顔を明るくさせる。軽傷を負ったとのことだったがそれももう大丈夫のようで安堵の息を吐いた。


『心配かけてごめん。そっちの様子は?』

「もう少し時間がかかりそうです。けれどあのような通告があった以上、一刻もはやく実行しなければと急いでいますわ」

『うん、僕もそれが気になってたんだ』


わかっているなら大丈夫、キラはそういうように頷いて、それから、と切り出した。


『ジブラルタルで起きたことは、きいた?』

「・・・アスランとメイリンのこと?」

『うん』


ラクスやバルトフェルドらが何事かとを見る。説明はあとで、と今はキラの言葉をきく。


『二人とも、生きてるよ』

「ほんと!?」

『うん。連合に潜入していたキサカさんが回収してくれたんだ。まだ意識は戻ってないけど、命に別状はないって』

「よかった・・・・・・・・アスランにはまた、覚悟してもらわないとね」

、目が本気だね・・・』


あたりまえじゃない、と返して息をつく。事情はわからないが、メイリンをも巻き込んだのだ。叱咤くらいさせてくれても罰はあたらないだろう。
そしてキラとの通信が切れてしばらく後、ヘブンズベースにて戦闘が開始されたとの情報が入った。刻限よりもはやい戦闘開始、これは、ロゴスの方から仕掛けられたことだった。戦場はあっという間に混戦状態となった。ザフトの宇宙からの降下部隊はまるで先の戦いでのサイクロプスのような磁場攻撃により壊滅させられた。だがそれでもザフトの猛攻は止まらない。シンのデスティニーが、レイのレジェンドが、ルナマリアのインパルスが戦場を翔ぶ。五機のデストロイも次々と破壊され、戦勝はザフト軍が得た。ヘブンズベースは、墜ちた。ロゴスの幹部はザフト軍によって連行されていったが、ブルーコスモスの盟主ジブリールはヘブンズベースが堕ちる直前に脱出していたようで、確保できなかったという。これでいよいよ、オーブが危うくなった。オーブには力があり、またその理念も強い。デュランダルにとっては邪魔な存在でしかないはずだ。
エターナルの一室で休んでいたはピピピという音で顔を上げた。モニターに焦り顔のラクスが映し出される。


「ラクス?どうしたの?」

『ザフトに発見されてしまいました』

「え!?」


コロニー・メンデルに調査に出ていたダコスタが尾行されていたらしい。用意周到である。メンデルはまだまだ重要な資料が残っているから見張っていたのだろう。


『これからエターナルを発進させます。あれらと、力を貸してくださったファクトリーを守るために』

「・・・了解。なら私はいつ戦闘になってもいいようにワルキューレで待機するわ。調整は終わってるのよね?」

『はい。ですが、あの二機とは違いオプションパーツなので少し機動力が落ちるかもしれません』

「了解、気をつけるわ」

『・・・


準備しながら話していたが、ラクスのトーンの変わった声をきいてモニターを向く。心配そうなラクスには笑ってみせた。


「大丈夫よ、ラクス。戦わせて」

・・・』

「私は、戦うために、在るんだから」


ラクスの目にの表情はどううつっただろうか。そのまま通信を切り、はドッグへと向かった。




















オプションパーツエタニティ≠ェ組み込まれたワルキューレに搭乗し、いつでも出られるようにパーツ調整を行う。やがてラクスの号令により、エターナルが発進された。


「・・・オプションのレベル越えてるわね、これ」


最もが驚いたのは、ドラグーン・システムの組み込みだった。本来ならば一から機体を造る際に調整しながら組み込むのだろうが、これはの空間把握能力があってこその荒業である。おそらくファクトリーにはの今までの戦闘記録がほぼ全部受け渡されたのであろう。それを元にドラグーン・システムを搭載したのだ。
やがて、エターナルを追ってきたナスカ級三隻から、大量のグフ、ザクが発進されてきた。いよいよの出番である。


「ラクス、出るわよ!」

『はい。お願いします、


ラクスにしっかりと頷いて、発進準備が行われる。オールグリーンで、発進可能となった。


、ワルキューレ、出撃する!』


黄金の翼は壮大さを増し、今再び宇宙そらを飛翔する。






















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