宇宙へ























キラたちが帰ってきた。声をきけば事態がどうなったかは容易に把握できて、のアスランへの怒りがまた募った。問答無用に「オーブへ帰れ」と言われてきたらしい。理解はできる、だが理解はできないと。そしてこれからどうするべきなのか。プラントの、デュランダルの真意は。それを見るために、ラクスがプラントへ行くと言い出した。


「止めても、きかないのね?」

「はい」

「・・・わかった」


は大きく息をはき、なら、と付け足した。


「私も行く」

「え?」

「うん、そうしてくれると僕も少しは安心できるよ」

「キラ、


ラクスがキラとを交互に見る。姉弟は同時にラクスに微笑みを向けた。


「なにか策はあるの?」

「はい、ぴったりなものが」


にこりと笑んだラクスは、どこか楽しそうな顔をしていた。



















ラクスの策とは、ザフト軍基地ツアーをしている偽ラクスになりすまして潜入する≠セった。。本物のラクスが偽物になりすますというのもおかしな話だが、それがはやいかと頷く他なかった。同行するのはバルトフェルド。バルトフェルドが偽ラクスのマネージャーになりすまし、偽ラクスが使うはずのシャトルをちょうだいしようという寸法だ。は別所でワルキューレにて待機。バルトフェルドが一緒だし、問題ないだろうとの判断だ。はシャトル奪取の合図をワルキューレにて待つ。そしてしばらくしたとき、ワルキューレに通信が入った。


『準備完了だ。飛ばすぞ』

「了解、援護するわ!」


シャトルが発信されると、基地から追撃とMS発進がなされた。


「うわ、すごい数のMS出てきたわよ」

『頼むぜ、、キラ』

『はい!』


ワルキューレと同じく別所にて待機していたフリーダムも空に飛び出てくる。ワルキューレとフリーダムでミサイルを撃ち落としていき、シャトルは無事軌道に乗った。撃ってくるMSを戦闘不能にし、基地に打撃を与え、二機はシャトルの護衛へとつく。


『やっぱり心配だ、ラクス。僕も一緒に』

「いいえ、それはいけません、キラ。あなたはアークエンジェルにいてくださらなければ。マリューさんやカガリさんはどうなります?」

『でも・・・』

「私なら大丈夫ですわ。必ず帰ってきます、あなたの元へ。だから・・・」


キラとラクスが画面越しに見つめ合う。


「キラ、大丈夫。ラクスは私達が必ず守るから」

・・・』

『そうだぞキラ、ここまできてわがままを言うな。お前の代わりに、ラクスは守る。命懸けでな』

『バルトフェルドさん・・・』

「砂漠の虎と黄金のヴァルキリーのタッグなんて、そうそう見れないんだからね!」


ね、とバルトフェルドにウインクしてみせると彼も笑った。


『信じて任せろ』

「キラ」

『・・・わかりました。お願いします』


やがて磁場が乱れ、通信が乱れる。シャトルからフリーダムが離れていく。歌姫は宇宙へと飛び立った。



















宇宙に着くと、ザフトに探知される前にラクスらは小型シャトルに乗り換え、目的地へと向かった。浮遊物の多いこの場所はレーダーに引っかかりにくく、隠しもの≠するにはうってつけだ。そして彼女らはその艦に乗り込んだ。先の戦いで三隻同盟に数えられた桃色の艦、エターナルに。ラクスとバルトフェルドは以前もエターナル乗艦時に着ていた戦闘服≠ノ着替えていた。


「久しぶりね、ダコスタくん」

「お久しぶりです、さん」


しばらく会っていなかったバルトフェルドの部下ダコスタと挨拶を交わす。そしてはきょろとあたりを見渡した。


「しばらくは待機よね?ブリッジは正直居場所無いんだけど」

「艦長席にでも座るか?」

「勘弁してちょうだい・・・」


冗談で言ってくるバルトフェルドにジト目で返す。ひとまずはラクスが座る艦長席の後部に待機することになった。



















それから数日しばらく後のこと。今後の作戦を練りながら、モニターでデュランダルの演説をきいていた。デュランダルはロゴスを討つと布告した。どこのかはわからないが、おそらくエクステンデットの研究施設であろう映像を流す。血を流して死んでいるこども、無理矢理実験している様。こんなことをするロゴスを許せない。だから討つ、と。これはプラント本国のザフトにも命令が下っているだろう。どこぞの誰かが頭沸騰させていないといいけどと冷静を装いつつ、の頭もまた噴火しそうになっていた。


「・・・あんたがそれを言うのかっての」

?」

「・・・・・」


呟いた言葉がきこえたのか否か、バルトフェルドがの顔を見る。バルトフェルドには話していないことだから話すのが躊躇われる。結局「なんでもない」とかぶりを振ってモニターに目を戻した。殺したいわけではない、だが戦いを終わらせるためには戦わなくてはならない。歩み寄り、話し合い、そんな表向きの偽善に、は虫唾が走っていた。




















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