火種は尽きず、宇宙を舞う





















C.E.73
先の戦いが終結を迎え、平和が訪れた。もちろん、軍事がなくなったわけではない。“いざ”というときへの備えとして軍は残っている。その“いざ”というときがこないことを、ただ願うばかりであった。



















プラント、アーモリーワン。明日、新型戦艦の進水式が行われるのだという。新型なんて作ってどうするつもりだ、というのは愚問だ。力がなくては自分の身も守れない、と返されるのがオチである。そんな新型を一目拝んでやろうとアーモリーワンから少し離れたところで待機していただったが、不意にレーザー反応をききとって眼前を見た。


「あれは・・・戦闘!?」


ザフトの戦艦が攻撃を受けている。相手は地球連合軍だろうか。データには入っていないから、新型であろう。さすがに戦艦がここまで接近してきていたら察知できる。それが察知されなかったということは。


「相手はミラージュコロイドもちってことね・・・!」


禁じられたはずのミラージュコロイド。それを使い接近してきたのだろう。となるとこれは、と考えて、約2年前の出来事がよみがえる。自分たちがおこした側だった、新型MSの奪取。今度は地球軍がザフトから奪おうというのか。


「こんなことをするから、戦争は終わらないのよ・・・!!」


はすぐさま簡易チェックを済ませ、ワルキューレを発進させた。



















いったい何隻おとされたんだ。あちこちで爆発がおき、艦が動かなくなっている。状況把握をすることもままならず、は舌打ちした。この状態なら容易にアーモリーワン内へ入れるだろう。だが、これがもしヘリオポリスのような状況だったら。ギリ、と奥歯をかみしめ、そして不意に、ピリッと頭にはしるものがあった。


「ッ・・・いまの、は・・・!」


ソレはすでに存在しないはず。なのになぜ、この感覚が残っているのか。この近くにいるのだろうか。そこへ、不意にピピピと電子音がはしる。


「!」


背後からの攻撃。放たれたビームを回避して相手と対面した。


「あれは・・・!」


その機体に思い出されるのは、先の戦争で逝った青年。このタイプの機体を扱えるのは、“とある家系”の血筋のみときいている。ならばやはり先ほどのはこの機体か、とは拳を握りしめた。


「まだ・・・こんな・・・!」


撃ってくる相手に応戦するが、その数方向からの射撃に対応するのは骨がいる。だが不意に敵はこちらへの攻撃を止めて離脱していった。プラント内での奪取が終わったということだろうか。


「・・・・・」


あってしまったからには放っておくこともできない。はその機体をマークし、あとを追った。



















「ッ!」


再び頭にはしった痛みに眉をしかめる。この因縁はぬぐいさらなければならない。先ほどの機体は、追いついたときには戦闘に入っていた。一機はザクファントム、もう一機は見たことのない型の、ガンダムだった。


「ザフトの新型・・・!?」


もしや連合の狙いはあの新型か。どうしてこうも新型を奪い合うのが好きなのだろうか。していた自分が思うのも変な話ではあるが。は再び頭にピリッとはしるものを感じた後、ひとつ深呼吸をした。


「・・・」


覚悟は、決めた。


「そこのザクと新型MSに告ぐ。そのMAエグザスはただのメビウスじゃないわ。空間認識に長けていないと相手は難易よ」

『なっ・・・突然出てきてなんだあんたは!?』

「ひとまずガンバレルの網から脱出しなさい。一台ずつ確実に破壊していけば対処できるわ」

『無視かよ!!?』

『そのMS・・・ワルキューレ・・・?』


吠える新型のパイロットを流しつつ指示を出すと、ザクのパイロットから呟きがこぼれた。


か』

『は?それって、確か・・・』

「今は私が何者かなんてどうでもいい。沈めたいの?沈められたいの?」

『沈める!』

「なら指示に従って」


言うなりはワルキューレを動かす。必然的にガンバレルはワルキューレをおとそうと細かく動きながらビームを放ってくる。


「ガンバレル相手は久しぶりなのよ・・・!」


ちょこまかと動くのが鬱陶しい!とつい口からはきだしつつ、照準をガンバレルにあわせて撃つ。二機は、と巡らせば、ザクはそれなりに動けているようだった。新型は言われたとおり網の外へ。従ってくれてよかったとひとまず安堵する。そこへ、大きな感知信号が出て、エグザスが戦線を離脱した。おそらく母艦が狙われているから引き返したのだろう。大型感知は二件。一件は連合の母艦、もう一件はもしや、ザフトの新型だろうか。帰艦信号が放たれ、ザフトの二機もそちらへ向かおうとする。


さん』


エグザスが遠ざかったというのになぜかピリッとはしる頭を押さえながら、ザクのパイロットに「なに?」と返す。


『我々とともにきませんか?』

『っはぁ!?レイ、なにいってんだよ!?』

『俺たちは彼女に助けてもらった。ワルキューレも消耗しているだろう』

「・・・・・」


思いもよらなかった言葉には一瞬固まった。だがその申し出は、正直なところありがたい。ワルキューレの消耗はほとんどしていないが、状況把握もしたいところである。


「・・・可能なら、お願いするわ」


もうザフトの艦に乗ることはないと思っていたのだが。ひとつ息をはき、は二機のあとを追った。



















進んでいくと、戦艦が見えた。その形状は、先でザフトが“足付き”と読んでいたものによく似ている。これがザフトの新型戦艦だと把握するのに時間はかからなかった。


「そういえば、艦長に知らせなくてもいいの?」

『今は戦闘中であちらも緊迫状態。乗艦許可が得られぬ場合は・・・』

「宇宙に放り出されるってわけね」


OK、かまわないわ、と肩をすくめてみせて二機に続いて艦に乗り込む。案の定騒がれたが、詳しくは戦闘配備解除後だとレイと呼ばれたザクのパイロットが言った。ではこのままコックピット待機がいいか、とはひとまずヘルメットだけ脱ぐ。薄暗い中、耳元でみっつの石が淡く光った。


















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