やるせないおもい






















ラクス、バルトフェルド、キサカやカガリはアークエンジェルのブリッジに来ていた。当面の問題は月で、地球連合軍はザフトから奪還したヴィクトリアから、次々と宇宙へ部隊を送ってきているとのことだ。


「プラント総攻撃ということなのかしらね」

「元々それがやりたくて仕方がない連中がいっぱいいるようだからな。“青き清浄なる世界の為に”?」

「・・・っ」


バルトフェルドの言葉にマリューが顔を沈め、が拳を握った。


「よせよ」

「僕が言ってるわけじゃないよ」


ムウの咎めにバルトフェルドは肩をすくめてみせ、に口だけで「悪い」と言った。小さくかぶりを振り、も冷静を取り戻す。


「ま、事実だけどな」

「なんでコーディネイターを討つのが青き清浄なる世界の為なんだか・・・そもそも、その青き清浄なる世界がなんなんだか知らんが、プラントとしちゃあ、そんなわけのわからん理由で討たれるのはたまらんさ」


ふと、カガリがブリッジを出ていくのが見えた。アスランのところへいくのだろうか、と止めることをせず、話をきき続けた。


「しかし、プラントもすでにナチュラルを邪魔者だっていう風潮だしなぁ、トップは。当然防戦し、反撃に出る。二度とそんなことのないように、ってねぇ。それがどこまで続くんだか」

「・・・酷い時代よね」

「あぁ」


マリューがムウの肩を掴み、寄り添った。


「でもそうしてしまうのも、また止めるのも私たち、人なのです。いつの時代も、私たちと同じ思いの人もたくさんいるのです。作りたいと思いますわね、そうでない時代を」

「うん」


ラクスの語りにキラが頷く。コーディネイターだから、ナチュラルだからと差別し合うことのない時代をつくりたい。それが我々の願いだった。



















エターナルに積み込んでいた物資をアークエンジェルとクサナギにわける作業が行われた。エターナルはフリーダム、ジャスティスの運用戦艦ということで、二機、二人はエターナルへ移ることになった。アークエンジェルにはストライク、バスター、ワルキューレがいることとなる。はワルキューレのコックピットで調整を行っていた。そこへ、緊急アラームが鳴り響く。


『総員、第一戦闘配備!』

「戦闘!?」


ここが知れるのがはやい。ザフトだろうか、それとも、連合か。敵戦艦がアンノーンなので直接見るまではしりようがない。どちらにせよ、攻めて来るのなら迎え撃つしかない。はすぐさま調整を終え、戦闘準備にかかった。直接コロニーに砲撃を食らい、アークエンジェルも港の外へと発進した。


『こちらは、地球連合軍、宇宙戦闘艦、ドミニオン。アークエンジェル、きこえるか?』

「!」


突然響き渡る通信。きいたことのある声に、も目を瞬かせた。


「これって・・・アークエンジェルの副官だった・・・?」

『本艦は、反乱艦である貴艦に対し、即時の無条件降伏を要求する。この命令に従えない場合は、貴艦を撃破する』

「・・・先に忠告、ってこと」


そしてナタルは直接マリューと繋いで話した。ナタルの誘いを、マリューは断固拒否する。アラスカだけのことではない、地球軍そのものに疑念があるのだと。


『あっはっは、何をしだすのかと思えば。言ってわかればこの世に争いなんて無くなります。わからないから敵になるんですしょう?そして敵は、討たねば』

『アズラエル理事・・・!』

「!!!」


きこえてきた男性の声。彼の名をナタルが発し、それが誰なのかを把握する。


「ムルタ・アズラエル・・・ブルーコスモスの盟主・・・!!!」


がグッと拳を握り、ギリと歯ぎしりをした。ブルーコスモスの親玉が、この宇宙に、もうどれほどかの距離のところにいる。


「・・・沈めてやる」


ブルーコスモスは、大切なものたちを奪った。そしてまた、大切なものを奪おうとしている。ドミニオンからMSが出撃したのを確認し、こちらも発進する。キラのフリーダムが、ムウのストライクが、アスランのジャスティスが、ディアッカのバスターが発進した。は深呼吸で落ち着かせて前を見据えた。


さん!』

「・・えぇ。、ワルキューレ、出撃する!」


私怨に惑わされてはいけない。今は向かってくる敵を討たなければ。フォビドゥンら三機はキラとアスランに任せ、ストライクらはアークエンジェルの援護に入る。フォビドゥンらとは別に発進してきたストライクダガーを撃っていると、出てきたクサナギが何かに引っかかったらしく身動きがとれなくなっていた。フォビドゥンがそちらへ向かい、アスランが援護に入る。と、いつの間にかドミニオンが岩陰に回り込んでいて、アークエンジェルはなんとかそれを回避した。さらに、潜ませていたらしいミサイルが襲ってくる。は舌打ちをし、それらを撃破した。


「やってくれるじゃない・・・!」


全部は落としきれず、数発食らわせてしまった。フリーダムはドミニオン、カラミティ、レイダーを相手に苦戦している。そこへ突如、頭に奔るものがあった。


「・・・っ、こんなときに!」

!?お前にもあるのか?』

「えぇまぁね!そっち頼むわ!」

『あぁ!』


ムウがコロニーの方へとストライクを飛ばしていく。それをバスターがおっていった。


「マリューさん、ザフトが反対側から来てるわ!」

『なんですって!?でも反応は・・・』

「まだ遠いからね。私と鷹には、とある一人の男に対して、機械以上の探知能力があるのよ。ひとまず鷹と、ディアッカもそっちに向かったわ。私はこのまま援護を続ける!」

『お願い!』


さすがにクルーゼ単騎で来ることはないだろう。ついてくるとしたら、おそらく。


「・・・イザーク」


ディアッカが向かったのは幸か不幸か。こんなところで再会させたくはなかったが、自分まで行ってAAの守りを手薄にさせるわけにもいかない。


「ほんと、こんな戦いはやく・・・」


終わらせなければ。は歯を噛み締めながら、ただ前方の敵を迎え撃った。
















しばらくしたらドミニオンから信号弾があがり、三機のMSが退いていった。これでひとまず戦闘は終了した。はこちらが片付いたと確認すると、すぐさま踵を返す。


「私はこのまま、ザフトの方へ向かう!」

さん!』

『ザフト?ザフトがいるんですか!?』


反応したのはキラだった。


『僕も行きます!いまのうちに補給と整備をしていてください』

『ジャスティスも問題ない』

『いや、いつまたドミニオンが来るかわからないからアスランはこっちにいて』

『キラ!』

「そうよアスラン。あんたまで来たら誰がこっちを守るの」

『・・・』


納得したらしく、アスランはそれ以上は言わなかった。
フリーダムと共にコロニー内部へ侵入すると、ストライクとゲイツ、バスターとデュエルの戦闘が行われていた。バスターとデュエルの方は停止しているが、これはディアッカが声を発したのかもしれない。


「ディアッカ!・・・イザーク・・・っ」

!』

・・・!!』


アラスカで少し会話をしただけ。ただ「ごめん」と言っただけ。イザークはキラの、フリーダムの姿があるのを認めると、そちらに向かおうとした。それをバスターが阻む。


『やめろ、イザーク!キラも!』

『!?』


これにはキラも驚きの声をもらした。はディアッカの行動に安堵の笑みを浮かべる。


『こいつは俺に任せてくれ』

『いいんですか?』

『あぁ!』


ディアッカはイザークを討つつもりがない。それが感じ取られて、よかったと息をつく。


『わかりました。でも、僕とアスランみたいなことにはならないでくださいね』


キラが言い、フリーダムが飛び立つ。その言葉をイザークがどうくみとったのかはわからない。


も』

「そうね、ここはあんたの方がいいでしょうから・・・。でも、ひとつだけ言わせて、イザーク」


返事は無いが、そのまま続ける。


「私は私の意思でここにいる。私が守りたいもの、守りたい世界のために。大切な人のいるプラントと、大切な人のいる地球を守る為に戦っているの。それだけは、わかってほしい」

『・・・っ』

「それじゃディアッカ、任せたわ!」

『あぁ!』


イザークから発せられた言葉は無いが、そのままワルキューレをはしらせた。今ので伝わってくれると、信じている。





















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