守りたいものと受け継がれていく意思





















ワルキューレの整備をして休息をとっていると、連合の例の三機とミサイルが接近しているとの報が入った。急ぎ迎撃にかかるため、ワルキューレを機動させる。キラとアスランが話しているのが目に入る。そして、ディアッカ。何を話しているのかまではきこえないが、きっと悪いものではないだろう。は口元を緩め、二人に向けてスピーカーから声を発した。


『そこのお馬鹿二人!ぼやぼやしてると踏み潰しちゃうわよ!』

「はぁ!?」


そしてそのまま外へと向かう。戦闘はもう始まっているのだ。はとっくに覚悟など決めている。大切なものを守るために、戦うのだ。


、ワルキューレ、出撃する!」


再びオーブが戦場になる。だがそれでも、貫く意思があるのだ。戦場に、金色の羽が広がった。




















フリーダムが昨日の三機、フォビドゥン、レイダー、カラミティを相手にしているところに、ジャスティスが応援に入った。アスランもまた、覚悟を決めたようだ。ならばあちらは問題ない。はAAの援護にまわった。相変わらず数は多いく、それを蹴散らしていくのは正直はがゆい。舌打ちをしながら応戦していたのだが、そこへAAより通信が入る。


「こんな時に何!?」

さん、アスハ代表より離脱命令よ』

「離脱!?なぜ!」

『・・・アークエンジェルは、ただちにカグヤへとの命令よ』

「まさか・・・」


カグヤはオーブのマスドライバーの名だ。このタイミングでカグヤへとの命令ということは、宇宙そらへ飛ぶということなのだろう。フォビドゥンら三機はエネルギー切れなのか退却し、フリーダムらもAAの方へと戻った。カグヤでウズミの話をきく。オーブを放棄し、宇宙そらへ飛び立つ。の読みに違いは無かった。


「例えオーブを失っても、失ってはならぬものがある。地球軍の背後には、ブルーコスモスの盟主、ムルタ・アズラエルの姿がある」

「!!」


ディアッカの隣で話をきいていたの手がぴくりと震えた。一気に動悸がはしり、瞳孔が開く。ちら、とウズミの目がを見た。落ち着け、と言われているようで、は静かに呼吸を繰り返して落ち着かせた。


「そしてプラントも今や、コーディネイターこそが新たな種とする、パトリック・ザラの手の内だ」


父の名が出て、アスランが俯いた。


「このまま続けば、世界は認めぬ者同士が際限なく争うばかりのものとなる。そんなものでよいか?君たちの未来は。別の未来を知る者なら、今ここにある小さな火を抱いて、そこへ向かえ。またも過酷な道だが、わかってもらえような?マリュー・ラミアス」

「・・・」


言われ、マリューが目を伏せた。この先の未来のために、オーブを捨て、この先で戦ってくれと、そういうことだ。


「小さくても強い火は消えぬと、私たちも信じております」

「では、急ぎ準備を」


覚悟を決め、宇宙へたつ準備にとりかかる。ウズミが心配そうに見つめるカガリの頭を撫で、そしてキラへと視線を向けた。キラがなぜ自分に、と首を傾げる。そしてさらに、へ。はウズミへ小さく頷きを見せた。この子たちの未来は、私が守ります。そう、ウズミに誓うかのように。



















カグヤにて、AAと、オーブの戦艦、クサナギの発進準備が行われていた。キラたちもまた機体のそばで、準備にとりかかっている。


「そりゃ、このままカーペンタリアに戻ってもいいんだろうけどさ。どうせ敵対してるのは、地球軍なんだし」

「あんたねぇ・・・」


軽い物言いに呆れの息が出る。これがディアッカといえばディアッカなのだが。


「・・・ザフトのアスラン・ザラか」

「ん?」


不意にアスランがこぼした言葉に、キラ、ディアッカ、が怪訝な顔をする。


「彼女にはわかってたんだな」

「アスラン?」


彼女が誰なのかを瞬時に把握したは、遠き地にいる友を案じて視線を落とした。


「国・・・軍の命令に従って敵を討つ。それでいいんだと思っていた。仕方ないと。それで、こんな戦争が一日でもはやく終わるならと。でも、俺達は本当は、何とどう戦わなくちゃいけなかったんだ?」


苦悩に歪むアスランの顔を見て、キラは微笑んだ。


「一緒に行こう、アスラン」


え、とアスランのみならずディアッカまでも驚きの声を上げた。とうにそのつもりのは、キラの言葉にただ笑みを浮かべるばかり。


「みんなで一緒に探せばいいよ、それもさ・・・」


そして、アスランも、ディアッカも頷いた。は「よし!」と声を上げて、男三人の背中を叩いた。


「って!なんだよ!」

「まったくあんたたちは男なのにうじうじとしてさ!」

「うじうじって・・・」

「ようは何を守りたいか、でしょ?」

「・・・はなんなんだ?」


アスランの問いに、は笑って答えた。


「大切な人が生きるプラントと、大切な人が生きる地球。そのふたつを守るために、私は戦うのよ」

「まんまじゃねぇかよ・・・って!いちいち叩くなよな!」


そう言うディアッカの顔にも笑みが浮かんでいる。ディアッカもまた、守りたい“何か”を見つけたのだろう。


「さぁ、地球軍もそう簡単には逃がしてくれないわよ。といっても、出るのはキラとアスランだけかしらね」

「え?」

「機動力の問題でバスターは無理。で、アスランが来ないなら私がって思ってたけど、アスランがいるなら私は引っ込んでていいでしょ?ワルキューレは微妙にフリーダム、ジャスティスより劣るし」

「まぁ・・・」

「キラとアスランは息ぴったりだしね。さすがというところよねぇ。だから、頼むわね、キラ、アスラン」


言われた二人はしっかりと頷き、機体に向かった。ディアッカともまた、機体をAAに積み込むために行動を開始した。




















一方、カガリはウズミに手を引かれ、クサナギへと連れて行かれていた。目に涙を溜め、自分が先に脱出することを嘆いている。


「我らには我らの役目、お前にはお前の役目があるのだ!」

「っ、でも!!」

「想いを継ぐ者無くば、すべて終わりぞ!なぜそれがわからん!?」


ウズミの言葉に、カガリはただただ涙をこらえる。そしてクサナギへとつき、カガリはウズミから、キサカへと託される。


「急げキサカ!この馬鹿娘を頼むぞ!」

「はっ」

「お父様!!」


ウズミの手が、優しくカガリの頭を撫でた。


「そんな顔をするな、オーブの師事の娘が」

「でも!!」

「父とは別れるが、お前は一人ではない。―――きょうだいもおる」


そうしてウズミが胸ポケットから取り出してカガリに渡したのは、一枚の写真だった。女性が二人の赤ん坊を抱き、そのベッドのそばに、小さな少女が付き添っている。カガリは写真を受け取り、おもむろに裏返した。そこに書かれていたのは、『Yuri』『Kira』『Cagali』の三人の名前。カガリが目を見開いてウズミを見た。


「そなたの父で、幸せであったよ」


それが、最期の言葉。クサナギの扉が閉まり、ウズミの姿が遠ざかっていく。カガリは必死に扉を叩き、泣き叫び父を呼んだ。クサナギが、発進された。
クサナギを援護し、フリーダムとジャスティスがしがみつく。クサナギになんとか着艦し、フリーダムとジャスティスは、フォビドゥンらを振り切った。クサナギが完全にモスドライバーから離れたのを確認し、ウズミたちは、そのスイッチを押した。




モスドライバーとモルゲンレーテが爆発し、大いなる意思を持った者たちが、大いなる火をかかげ、炎に消えた。




















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