生は光の先に





















真っ白だった世界が、光を帯びたものに変化したと感じた。いや、そもそもそんなことを感じることすらおかしいのかもしれない。確かにあのとき爆発に巻き込まれ、そして・・・。


「・・・?」


目が、開く。そんな意識があることもおかしいと思うのに、の身体は勝手にそれを行っていた。光がまぶしくて目を細める。透けたガラスがそのまま空を写していた。だがこれは、つい先ほどまで見ていた空とは違う。これは、しばらく離れている、本国の。


「プラント・・・?」


ゆっくり、ゆっくり身体を起こしてみる。頭がズキリと痛んだ。またここか、とは頭の包帯をさすった。いつまでこいつと付き合っていけばいいのやら。


「・・・いつまで」


むしろ生きていることが奇跡だというのに。苦笑とも失笑ともとれる笑いをもらし、はベッドから抜け出そうとした。


「あらあらだめですわよ、。まだ動いては」

「・・・ラク、ス?」

「はい」


足を片方下ろした状態で目をぱちくりさせて彼女を見る。ピンクの髪の少女は、まさしく宇宙(そら)で別れた彼女だった。


「ほら、ベッドにお戻りになって」

「え、えぇ・・・」


促され、しぶしぶベッドに潜りなおす。ラクスがいるということは、ここは本当にプラントということだ。


「私、なんで・・・」

「マルキオ様が、浜辺に倒れていたあなた方を助けてくださったんです」

「マルキオ様・・・?・・・あなた、方!?っ」

、無茶をなさってはいけませんわ」


ラクスの発言に声を上げたは、反動で頭をおさえた。


「キラ・・・?それとも、アスラン・・・?」

「・・・お会いになりますか?まだ、目覚めてはいらっしゃいませんけれど」

「・・・うん」


先ほどはベッドから抜け出すことを許してくれなかったが、今度はゆっくりとベッドを出ることを止められない。そのままラクスに付き添われ、は別のテラスへと案内された。



















光が差しこむその場所に、彼はいた。と同じように、テラスに置かれたベッドに横たわっている。呼吸は規則正しく、命の危険は無いことが見て取れた。は彼の姿を目視してベッドに寄り、膝を崩してベッドに突っ伏した。


「・・・よかった・・・キラ・・・」


自然と涙が溢れ出し、即座にシーツに染みていく。肩を震わせるのそばでハロが跳ねた。


「あなたまで喪ったら、私は・・・」

「・・・

「キラとアスランが、戦っていたの。二人とも大切なものを奪われて、本当に、討つ覚悟で。でも、やっぱり、やっぱりだめだって、思っ・・・」


の言葉は続かなかった。嗚咽に負けて、涙が次々に溢れ出してくる。何度も嗚咽を繰り返しながら、は言葉を絞り出していた。


「ふたり、とも、喪いたくない、って、だから、わたっ、し」

はまた無茶をなさったのですね」

「っ・・・」


キラの無事はこの目で確認が取れた。アスランは、無事だろうか。脱出はしていたのだから、キラよりも生存率は高いはずだ。彼の生存を信じ、今しばらく、はキラの寝顔を愛おしそうに見つめていた。



















しばらくして、キラが目覚めたとの話をきいて、は傷が痛むのも我慢してキラの元に駆けつけた。


「キラ・・・っ!」

「え、・・・?わっ!?」


そのままキラをぎゅっと抱きしめ、その存在を確かめる。キラは戸惑い、また傷の痛みに身体を震わせた。


、キラが」

「あっ、あぁ、ごめん・・・」


ラクスに言われて我に返り、はキラを解放する。と同時に自分も傷の痛みを思い出して「いたた」と頭をおさえた。


・・・どうして、きみも・・・」

「え?あぁ、キラは私に気づいてなかったのね」


罰が悪そうに頬をかき、「そのぉ」とが話し出す。


「イージスがストライクに組み付いて自爆しようとしたとき、その、咄嗟に突っ込んで・・・」

「巻き込まれ、た?」

「・・・うん」

「なんて無茶を!?」

「む、無茶して怒られるのはラクスでやった!」


思わず声を荒げるキラに勘弁してと訴えかける。そしては両手でキラの顔を包み込み、その顔を見つめた。


「キラが無事で、よかった」

「・・・っ、でも」

「アスランは、きっと、大丈夫」

「え・・・っ?」


目を瞠るキラに、「勘だけどね」と一言つげて手を離す。


「先にアスランは脱出していたし、生存率としてはむしろキラより高いと推測できるわ。そのキラが生きて無事なんだもの。アスランだって、きっと大丈夫」

「きみは・・・。・・・僕が、憎くない、の?」

「・・・・・」


キラに討たれたニコルや他の仲間たちのことを言っているのだろう。だが、それを言われてしまっては。は黙って目を伏せた。


「・・・正直なところ、綺麗さっぱり、とは、今のところできていないわ。でも、私たちは軍人だから。戦争をしているから。・・・みんな、戦争で散っていったから」

「・・・・・」

「私はそれもひっくるめながら、キラが無事だったことを、喜んでいるのよ」

・・・」


微笑みか、苦笑か。キラの目にどう写ったかはわからない。


「今はとりあえず休みましょう。ゆっくり休む時間がもらえるくらい、私たちは戦ってきたんだから」

「・・・うん」


キラが空を見上げた。プラントの空に馳せるのは、地球の空か。






















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