閃光の先には
陽が昇り始め、戦闘が開始された。まずは距離のあるところからバスターが撃ち込み仕掛ける。近づいてきたところでデュエル、イージス、タルタロスも銃撃を開始した。ストライクは艦上、飛び出てきたのはスカイグラスパー一機。ストライクにはアスランとイザークが、スカイグラスパーはディアッカとで応戦していた。アスランがAAを被弾させ、こちらに有利な状況となる。これを逃す手はない。
「・・・キラ」
大事なものを守るために戦っている。そのはずなのに大事なものを討たねばならないとは、なんと皮肉なことか。
「戦いを終わらせるために戦う・・・そんなもの、ただの永遠の連鎖でしかないのにね」
つぶやきながらスカイグラスパーを目で追う。ピピピという電子音でデュエルが足場を失ったことを悟った。イージスとストライクの一騎打ちだ。アスランもグールを失ったらしく、二機は小島へと降り立った。そこで新たな反応が響く。
「もう一機のスカイグラスパー・・・!?」
このタイミングでとは、ストライクへの換装用意だろうか。はチッと舌打ちをして、ディアッカへ通信を繋げた。
「ディアッカ!そいつ任せた!私は今出てきたやつを追う!」
『!?』
正直ディアッカだけにムウとAAの相手をさせるのは酷だと思ったが、胸騒ぎが尽きない。はストライクの元へ向かうスカイグラスパーを追いかけた。
小島で赤と白の機体が撃ち合っている。雨の中、雷鳴が響く中、閃光が舞う。そこへスカイグラスパーが、イージスへの攻撃を開始した。それだけでもう、には目に見えてしまった。
「・・・終わらない」
イージスがシールドをスカイグラスパーへ向けて投げつける。スカイグラスパーは咄嗟の出来事に対応できず、もろにそれをくらってしまった。
「戦いは、終わらない」
目の前で、またひとつ命が消えた。それが引き金となったのか、ストライクの動きが突然変わった。イージスの左腕が切り落とされ、だがまたイージスの動きも格段に上がった。そこに割り込むこともできず、はただ呆然とその光景を見つめる。
『アスラあああああン!!』
『キラああああああ!!』
ストライクのコックピットが割れ、そこへイージスがMA形態になってとりついた。そのまま撃つ、かと思いきや、イージスのパワーがロストした。
「アスラン!」
『離れていろ!!』
それを意味するのは、ひとつしかない。
「イージスを自爆させるつもりなの・・・!?」
コックピットが開き、アスランが脱出した。しかしこの数秒ではそう遠くへはいけない。さらに、の背筋を冷たいものが走った。
「・・・だめ」
残り何秒だろうか。は無意識にアクセルを踏んでいた。
「だめえええええ!!!キラああああ!!アスラああああン!!」
白と、赤と、黄が、爆炎に消えた。
夢にみるのは、いつも背中ばかり。金と緑の背は決して振り返らない。褐色の肌と白い肌の二人は決して振り返らない。若草色と赤の背は決して振り返らない。手を伸ばしても届かない。待ってなんてくれない。さらには、茶と水色の背、蒼と赤の背が遠ざかっていく。
やめて、いかないで。これ以上、私から大切なものを奪わないで。
そんな願いもむなしく、一面は真っ白に包まれた。
なんとか回収され傷の手当てを終えたイザークは、操舵室を訪れた。アスラン、ディアッカ、の生存不明をきき、そんな馬鹿なと声を荒げる。
「すぐに艦を戻せ!あの三人がそう簡単にやられるか!伊達に赤を着ているわけじゃないんだぞ!?」
だがそれは一蹴される。クルーゼから帰投命令が出ており、なおかつ今ここにあるのは損傷したデュエル一機。AAも被弾しているとはいえ、とてもではないが相手などできはしない。イザークは、悔しさを噛み締めるしかなかった。
「・・・」
部屋に戻って冷静になり、最初に出た言葉はそれだった。まさか、あいつまで?そんな馬鹿な。
「・・・くっ、そおおお!!!」
ダンっと壁を打ち付けたイザークの左手は、ぎゅっと胸元を握り締めている。そこにはからもらった、水色の石が、あった。
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