消えゆく優しい笑顔
成果が得られなかった一行は、一度海に戻った。しかし得られなかったと思っているのは半数のみで、アスラン、そしては確信を持っていた。キラがいるのならばアークエンジェルもいる。むろんそれをイザークたちにいうわけにはいかないが、アスランはここで補給して出てくるAAを迎え撃つという作戦を発表した。なぜそんな根拠のないことが言える、とイザークたちの反論がきたが、アスランは頑なに、ここにAAがいると言い切ったのであった。そうしてAAを待つこと二日。未だAAはオーブから出てくる様子はない。そろそろイザークが痺れを切らしている頃かもしれないとがイザークとディアッカの部屋をのぞくと、案外落ち着いてはいるようで、思わず呟いてしまった。
「・・・意外」
「何が意外だ!」
「いや、うん、ごめん」
何に対するごめんなのか、含まれた意味は複数あってごめんでは言い切れない気がする。
「癇癪起こすと思ってたんだろ」
「いや、あの・・・うん」
「お前らな!?」
「癇癪起こしてたのは事実だろ?」
ディアッカの言葉に、そうなのか・・・とイザークを見る。本当らしく、イザークは反論できずにいた。それでもクーデターまでは起こさないあたり、すぐ噛み付きにいかなくなったあたり、成長したということだろうか。
「まぁ、おとなしくしててくれて何よりね。・・・そろそろいつでも動けるようにしときなさい」
「え?」
「何?」
の発言に二人は怪訝そうな顔をする。
「おそらく、もうすぐ来る」
の予感は当たり、しばらくしてオーブ側に動きがあったとの通達が入った。
オーブ軍からの軍艦出港。予定にない演習かとも思われるが、それはカモフラージュだろう。パイロットはそれぞれ戦闘準備に入っていた。そして入ってきたのは、AAの特定通達だった。
『出撃する。今日こそ足つきを墜とすぞ!』
アスランの号令で、5機は空へ飛び立った。
目視できるところまで近づいて、実際にAAを確認する。おそらく、キラもこちらが出てくると判断してすでに戦闘待機はしているだろう。そして向こうはとにかく逃げることを一番に考える。アラスカ領域が近づいてしまえば、こちらは手が出せなくなってしまうからだ。案の定AAは煙幕を張ってきた。ストライクはおそらく艦上から仕掛けてくるだろう。飛んでくるとしたらスカイグラスパーだ。
「みんな、油断は禁物よ。ストライクはおそらく艦上から砲撃、飛んで出てくるのはジェットタイプ!」
『わかっている!』
の言うとおり、煙幕からスカイグラスパーが飛び出してきた。しかし予想は外れてそのスカイグラスパーは、二機。
(一機は鷹、じゃあもう一機は・・・!?)
さすがにカガリはもうAAには乗っていないだろう。だとすれば地球軍の誰かとなる。乗れる者がほかにもいたのだろうか。それなら初めから乗っているような気もするが。
(考えていても仕方がない。誰であろうと、墜とす!)
イザークがビームガンで応戦したが、煙幕のしたから強力な砲撃が放たれてきて、こちら側は怯んでしまった。
「鷹が撹乱、もう一機がストライクへこちらの座標とかのデータ送り、そしてストライクが砲撃・・・良い連携プレーしてくれるじゃない!」
『散開!』
アスランの合図でバラバラに散る。標的が散らばってしまえば一方向にしか放つことができない砲撃は効力ダウンとなる。だがそれで諦めるわけもなく、ストライクはAAを離れて飛び立ってきた。
『ストライク!!』
『こっから先には行かせねぇよ!』
ストライクが飛んだ方にはデュエルとバスター。彼らはストライクを迎え撃ったが、グールから落とされて戦闘不能となった。
「イザーク!ディアッカ!」
グールを撃たれただけなら機体は無事だろう。向かってくるストライクを三機で応戦した。だが、ストライクにばかり気を取られていてはいけなかった。
「アスラン!」
『くっ・・・!』
海上付近からの攻撃。AAだ。煙幕をくぐり抜けてきたAAにストライクが着艦する。これでますます手が出しにくくなる。AAも攻撃に加わり、そして今度はストライクの換装。ストライクのずるいと思うところは、換装してしまえばエネルギーパック交換完了となるところだった。ストライクがビームサーベルを抜き、再び向かってくる。さらにはムウも攻撃に加わり、手一杯となってしまった。
「こんのちょこまかと!!」
小回りのきくスカイグラスパー相手にグールに乗ってでの応戦は厳しい。そしてさらに、支援だけかと思っていたスカイグラスパーまでもが突っ込んできた。ブリッツに攻撃をしかけ、ひるんだ隙にストライクがブリッツを蹴落としてグールを奪い取った。
「ニコル!・・・っく!」
はムウの相手でアスランの援護には回れない。一対二ではアスランもさすがに厳しいだろう。アスランとキラが対峙している、それだけで胸が痛む。互いのグールが破壊され、ストライクはAAへ着艦、アスランも近くの岩場へ降り立ったが、そろそろエネルギーが切れる頃だ。
「アスラン!ここはもう・・・!」
目を向けたときには、ストライクがイージスに迫っていた。
「アスラン・・・キラ・・・っ」
そしてついに、イージスのフェイズシフト装甲がダウンした。
「アスラン!」
呼んでどうとなるものではない。はわずらわしいスカイグラスパーに舌打ちし、背筋が凍りそうになるのを感じていた。ストライクが剣をふりかぶる。そこへ飛び込んだのは、黒い影。
『アスラン!下がって!』
「ニコル!?」
ミラージュコロイドを使って接近していたらしい。片腕を失ってなお、ストライクへと突っ込んでいった。
「だめ、ニコル、だめ・・・!」
そんな破損した機体では、キラには。
「ニコル!!」
の叫びもむなしく、ブリッツはストライクへ突っ込む。ストライクは振り上げていたサーベルを咄嗟に切り返し、そして。
『うわああああああああ!!!!!』
そこは、ピンポイントに、コックピットだった。イージスの目の前で、ブリッツが電気を帯びている。
『アスラン・・・逃げ』
声はそこで消えた。
『ニコルー―――――!!!』
アスランの悲愴な叫び声がの耳でこだました。優しい微笑みは、爆発と共に消えてしまった。
なんとか這い上がってきたデュエルとバスターもその場に到着した。その光景を目にして声を震わせる。
『くっそおおおおストライクうううう!!!』
『アスラン!』
イザークとディアッカがストライクへ撃ち込む。いつの間にかAAは上空へ、スカイグラスパーも引き上げており、もアスランたちと合流した。ストライクもAAへ引き上げていく。させるまいと撃ち込むが、それはAAからの射撃により阻まれてしまう。
『よせイザーク、今は下がるんだ!』
『くっ・・・!』
「こっちもそろそろパワー切れだしね・・・」
メーターはすでにレッドゾーンだ。威嚇射撃をしながらでも後退するしかない。ブリッツの残骸を残し、たちは艦へと引き上げた。
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