守り、守られるもの
「!」
背後から呼ばれ、は振り向いた。そこには自分と同じ作業着を身にした銀髪の少年。
「どうしたの?イザーク」
「その・・・こんな時でなんだが・・・」
ん?と首を傾げるがイザークは黙ったまま。なかなか言い出しにくいことなのかと思い、気分転換も兼ねて移動することにした。
街の外れに二人立つ。潮風が吹いて心地よかった。
「イザークも地球はこの降下が初めてなんでしょう?」
「あぁ」
隣に立つイザークの髪先が揺れる。も帽子を外し、髪を風になびかせた。
「これが自然の風よ。美しい、母なる大地」
「・・・・・」
「プラントのがすべて造り物で悪いなんて言わないけど、やっぱり
地球は大切にしたいわ」
「・・・」
独り言をぼやくように呟くをイザークが呼ぶ。ん?とイザークに顔を向けると、彼はずいとに小さな紙袋を差し出した。
「これは?」
「・・・やる」
半ば押しつけるようにそれはの手の中におさめられる。開けていい?ときくが返事はない。否定しないならいいかとは紙袋を開けた。
「・・・これ」
取り出したのは、ピアスだった。紫の石がついた、好みのピアス。
「たっ、たまたま情報収集に入った店で
たまたま見つけただけだ!お前の瞳の色と同じ色で魔除けの石だと言うし、お前に合いそうだとおもったからで・・・!」
それはもはや
たまたまでは無い気がすると内心思いながらも、喜びが顔に現れているのが自分でもわかった。だがふと思い当たって、少しだけ残念そうな顔をする。
「んー・・・でもこの身振りだといつもつけてるわけにはいかないわねぇ」
3つの穴が空いているとはいえ、がいつもつけているのは小さなワンポイントのものだ。アメジストの石と少しの飾りがあるこれは、さすがにつけられない。うーんと少しうなり、「あ」と声を上げる。
「イザーク、これどこで買った?」
「は?」
「買ったお店、どこ?」
突然言われたイザークは戸惑いながらもその店へ案内するのだった。
イザークを店の外で待たせ、は買い物を済ませた。上機嫌で出てきたの様子にイザークが軽く首をかしげるが、は構わず歩みを進める。しばらく歩いて。じゃんっ、とが出したのは小さな袋だった。
「それは・・・守り袋か」
「うん。“お守り”はこれに入れるといいんでしょ?」
民俗学が好きなイザークは「あぁ」と答える。魔除けの石と言っていたからは“お守り”としてこれを選んだのだった。先ほどイザークからもらったピアスを袋にいれ、は作業着の前を少し開けた。
「ッ?」
突然の行動に戸惑いイザークは軽く顔を背ける。その間には袋についた長い紐を首から下げてそのまま服の下にしまった。前を留め終えると、これでよし、とが満足そうに呟く。
「イザーク、こっちきて」
手招きをしてはイザークを自分の前に立たせた。二人の距離が二歩程度にまで近くなる。
「そのままじっとしててね」
「?何を・・・」
ガサ、とは自分が買ってきたほうの紙袋を動かした。そのままずいっと一気に距離を詰める。
「ッ、!?」
「はいそのままそのまま」
イザークの首にの腕が回される。の横髪がイザークの頬を撫でて、イザークは勝手に熱が上昇するのを感じていた。小さくカチ、という音との「よし」という声がきこえると、がゆっくりと離れる。詰まりそうになった息を大きく吐くと、胸元で何かが揺れた。
「これは・・・?」
「見つけたから買っちゃった」
言ってその石をイザークの顔元―目元まで持ち上げる。
「イザークの瞳と同じ色」
「ッ・・・!」
嬉しそうに微笑むに赤くなった顔を見られたくなくて、イザークは顔を逸らした。
「イザーク」
呼ばれたので目だけ向けると、はイザークのペンダントから目を離し、自分の胸元をトンと示した。
「ありがとう」
「・・・俺の方も、な」
しばらくイザークの頬はそのままだったが、夕陽のせいにした。の頬も少しだけ染まっていたが、これは夕陽のせいだったのだろうか。
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