落ちた者たちとの再会
ジブラルタからイザークとディアッカが移動してきたときき、は心を弾ませていた。もっとも、バルトフェルドはバクゥを回してもらえなかったことが少々お気に召さなかったようだが。そしてもう一つ。バルトフェルドはクルーゼがお嫌いだ。
「私もクルーゼ隊」
「お前は別だ」
自分を指さして言うと、がしがし頭を撫でられる。もー、と髪を直している間にバルトフェルドは2人の出迎えに行ってしまった。も申し出たのだが、ひとまず形式上、隊長と副隊長が迎えにでることになったのだった。
レセップス内にバルトフェルドとダコスタ、そして見知った2人が入艦したのを見つけて、は一心に走り出した。
「イザーク!ディアッカ!」
「!」
バルトフェルドの手前2人はかけよりはしなかったが、すぐにと対面する。
「無事で何よ・・・イザーク!?」
「!?」
突然がしっと両肩を掴まれると同時に一気に顔が近づき、イザークが無意識に頬を染め身を反らす。「おお?」とバルトフェルドが小さく声をもらしたのをきいたのはおそらくディアッカのみだ。
「その傷・・・っ!」
「・・・・・」
が眉を寄せて声を上げるとイザークの顔に苦渋が浮かぶ。は敏感にそれを読みとり、少し切なそうにイザークを見た。両肩から手を離し、右手を彼の頬に添える。
「っ!」
「綺麗な顔なのに・・・もったいない」
「・・・ッ、ストライクを討つまでは消さん!」
こし、と親指で目の下をこすると、乱暴にならない程度に手を振り払われた。
「、察してやることも大事だぞ?」
「・・・わかってるわよ。率直な気持ちを言っただけ」
「率直ねぇ」
バルトフェルドはちら、とイザークを見、その頬が少々赤くなっていることに片口角を上げたのだった。
戯れるのもそこまでで、アークエンジェルが動いたとの情報が入り、レセップスも発進することになった。
「、お前何で出る?」
「タルタロス」
「即答だな」
「今はあれが私の専用機だもの」
「ならお前も艦上だな」
「了解」
パイロットスーツに着替えてそんな会話をしていると、イザークとディアッカが強面の形相で駆けてきた。
「バルトフェルド隊長!なぜ我々の配置がレセップス艦上なのです!?」
「イザーク」
「おやおや、クルーゼ隊では上官の命令にそうやって異議を唱えていいのかね?」
「いや、しかし・・・やつらとの戦闘経験は、俺達の方が・・・!」
「負けの経験でしょ?」
「・・・アイシャ、今の私にもグサッときた」
苦い顔をしてが胸を押さえると、アイシャは小さく笑った。
「あら、ごめんなさい」
悪びれない様子でアイシャが一歩さがる。は苦笑したが、イザークはまださがろうとしない。そんなイザークをなだめようとが踏み出した。
「イザーク、私たちの人型MSとバクゥでは性能が違う。地球の、それも砂漠では、私たちのMSよりバクゥのほうが機動性に長けているのよ。地上に降りてしまえば、私たちは邪魔にしかならない」
「・・・」
「私も艦上だから、抑えて」
「イザーク、もこう言ってるし、いい加減にしとけ。これは、命令なんだ」
「・・・」
舌打ちでも聞こえてきそうな表情だったが、ディアッカにも言われてしまってはイザークも抑えるしかない。失礼しました、と二人はさがっていった。
「活きのいい後輩をもつと大変だな、」
「・・・まぁ」
否定はしない。だが可愛い後輩たちだ。見捨てもしない。
「あんな調整が即座にできるのは、お前やあの少年くらいだろうからな」
「・・・」
これも否定は、しない。さすがにキラほどはやくはなかったものの、も砂漠でのパラメータ調整ははやかったほうだ。
「私も準備に入るわ」
「あぁ、気をつけてな」
「アンディとアイシャも」
軽く手を振り、二人に背を向ける。また戦いだ。また多くの命が消える。いつまでこんなことが続くのだろう。
「戦いを終わらせるために戦う・・・か。矛盾してるけど、残念ながらこれが今の世の中なのかしらね・・・」
それは誰が言ったことだったか。はタルタロスに乗り込み、しばし目を伏せた。
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