銀の輝光
医務室に寄ってから自室に戻り、個人コードはどこだったかと探る。探しながら、個人回線繋げたくないなぁとため息をついた。だがここでしておかないと後で合流したときに余計に怒られる。それはごめんだと思って、は覚悟して回線を繋げた。
ピーとしばらく鳴った後、相手が回線を拾った。コードでとわかった相手は、目を見開いてを見ている。
「あー、えっと・・・ただいま?」
『ッ・・・!おまえはっ!!』
「―ッ!」
キーンと甲高い声が耳をついた。決して地声が高すぎるわけではないのだが、彼の、イザークの怒声は耳と頭に響く。おそるおそる目を開いてモニターを見ると、それはそれは怒りに満ちあふれたイザークがいた。
『俺たちを逃がしておまえが捕らえられてどうする!?』
「・・・ごめん」
ここは下手な言い訳反論をせず謝っておくのが一番だ。だが彼はそんな一言ではおさまらないらしい。
『これでは・・・っ、これでは“あのとき”と同じじゃないか!!』
“あのとき”・・・それはおそらく、彼らルーキーの初陣の、イザークをかばってが重傷を負った、あのときだ。
『あのとき・・・おまえをもう傷つけさせないと、誓ったというのに・・・っ』
「・・・イザーク」
『また俺が・・・っ』
「イザーク、顔、上げて?」
苦渋に顔を歪めてうつむいていくイザークにそっと言う。イザークはその表情のままゆっくりと顔を上げた。
「あのときもそうだけど、イザークが責任を感じる必要はないの。私が勝手に飛び込んだんだから」
『・・・だがっ』
「みんなを守りたかった。それじゃ、だめ?」
『・・・・・』
沈黙が流れる。イザークは一度目を伏せた後、まっすぐを見つめた。
『おまえに守られてばかりは、嫌だ』
その言葉に軽く目をみはり、小さく笑みをこぼす。彼は普段「嫌」なんてこぼす人物ではないから。
「なら次は、もっと働いてもらおうかしらね」
『・・・無論だ!お前たちがラクス様をお届けしている間に、俺たちが足付きを討つ!』
「・・・頼もしいわね」
『ところで・・・』
ふとまたイザークの表情が曇る。何事だろうかとは首を傾げた。
『その、頭の包帯は・・・』
「あー・・・目立つとこにあるって嫌ね。何度でも聞かれちゃう」
は苦笑しながら額をさすった。
「頭に傷2、3カ所、何度か開いちゃって治るのに時間がかかっちゃってるの。それだけだから、大丈夫よ」
『・・・そう、か』
だがイザークの表情は晴れぬまま。
「もう、そんな顔しないで。せっかくの綺麗な顔が台無しよ?」
『んなっ・・・!?』
突然のことに、イザークは頬を朱に染めて飛び上がりそうになる。そんな様子を見てはふふっと笑った。
「そうそう、イザークはにはそうやって元気でいてもらわないと。・・・私のことで、イザークが気に病むことなんて、ないわ」
『俺は・・・っ!』
イザークが声を荒げて発しようとしたとき、ビーッと機械音が響いた。こちらではなく向こう側で、どうやら呼び出しのようだ。言いかけた言葉を飲み込んで、イザークは知らせが浮かび出ているであろう画面の端をうらめしそうに見ている。
「イザーク」
通信を切ろうとするイザークを、一度止める。
「死ぬんじゃないわよ」
『・・・誰にものを言っている!』
ピ、と通信が切れ、モニターが黒に戻る。はふぅと息をついて椅子に深く身体を沈めた。そして、変わらぬイザークに安堵し、ザフト側に戻ってきたことを実感したのだった。
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