シュン、という音での意識は浮上した。ぼうっとする頭でドアの方を見ると、ピンクの髪が、目に入る。
「ラクス!・・・ッ」
「!無茶をなさらないで」
急に半身を起こした反動で頭が痛んだ。どうやら血は止まってくれたようだが、ズキズキと響いている。
「こいつは・・・」
「・・・なんでもありません。それより、ラクスを、どうしたんですか」
ラクスの付き添いできた士官に尋ねる。彼は苦い顔でから目をそらした。
「彼女と、君を人質扱いにして、戦闘を中止させたよ・・・」
「ッ!!なんてことを・・・!!」
拘束されたままの拳をぎゅっと握る。
「民間人を人質に取るなんてね。それがあんたらのやり方?」
「・・・あぁするしか、なかったんだ・・・!」
「それでも追跡はしてくるでしょうね。追ってきてるのはどこの隊?」
声色はあくまで冷静に。だがその声色も、視線も、そこにはあたたかみの欠片もなかった。
「・・・・・」
「私たちをダシに使った料金くらいはくれてもいいんじゃないの?」
「・・・ナスカ級だ、イージスを乗せた」
ナスカ級、イージス、その二つのキーワードだけで、それがヴェサリウスだと判断する。手傷を負わされた修理はとっくに終わっていたようだ。
「なら安心ね。クルーゼ隊長はしつこいもの」
「・・・」
「情報どうも、サヨウナラ」
追い出すような視線を向けると、彼は背を向けて部屋を出ていった。
「・・・・・・」
「・・・わかってる。半分はやつあたりよ」
ラクスを守れなかった、自分への苛立ち。ギリ、と歯ぎしりすると、そっと自分を包み込む暖かさを感じた。
「・・・ラクス?」
「私は大丈夫ですわ、」
「・・・ラクスは強いわね。ごめん・・・ありがとう」
自分より二つも年下で背も低い少女の腕の温もりを、はありがたいと感じていた。
休んでください、とベッドに強制的に押し込まれ、は横になっていた。やはり血を失った分は補おうとするもので、ほどなくしては睡魔に襲われた。そしてしばらく
して目を覚ますと、ラクスの姿が、無い。
「・・・やられた」
どこへ行ったのだろうか。さすがに自分一人で出歩くのはまずいか?考え抜いた結果、はラクスを探すことにした。
人の気配を感じるのは得意だ。要は余計な人物たちに会わないようにすればいい。しばらく進んでいると、話し声と機械音がきこえてきた。この独特な機械音は間違いなくハロだ
。
「ラクス、こんなところにいたのね」
「まぁ、」
「勝手に出ていかないでちょうだい。心配するから」
ごめんなさい、とラクスは言うが、その表情は反省しているのかいないのかよくわからない。
「今キラ様と、アスランのことをお話していましたの」
「あぁ、なるほど」
両手が拘束されているというのに、は無重力の中で器用にラクスのそばに降り立つ。
「も、アスランのことを知ってるみたいでしたよね」
キラにきかれてこくんと頷く。
「アスランは後輩なの。ヴェサリウス・・・ナスカ級に、一緒に乗っているし」
「そう、なんだ・・・」
「ほんと・・・あなたたちが戦わなくてすむなら、それにこしたことはないのにね」
えっ、とキラは目を丸くした。はそんなキラに苦笑を向ける。
「そうも言ってられないのが戦争なんだけどね。やらなきゃやられる、戦わなきゃ守れない。相手には知り合いとか、大事な人もいるかもしれない。でも、守りたいものが別々の
ところにあったら、どちらかをとるしかない・・・難しいわね」
さ、戻るわよラクス。促して、とラクスはキラとわかれた。
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