その強さ、驚愕もの




















「ごめんね、ちゃん。今日、ツナはもうでかけちゃったのよ」

どうせだからあがってく?という奈々の誘いを丁重に断り、は目的もなく歩き出した。なんでも今日はディーノが朝早くからツナを連れ出したらしい。ある意味、遅く来て正解だったというわけだ。

(もれなくいるからな・・・)

兄・大気はディーノの側近だ。ロマーリオらと共に大抵ディーノの側にいる。兄の様子を思い出して溜息をついたは、そのままぶらりと歩いた。曲がり角をまがったとき、人垣にあたって首を傾げる。10人以上の、ガラの悪い男達。いや、ガタイはいいが、男というよりは少年の年頃だろう。だがいつも見る並盛中の制服ではない。もちろん、風紀委員の学ランでもない。他校生か、関わると面倒だな、と思ったは、避けて通ろうとした。が、残念なことに通れる隙間がない。しかたなく、声をかけることにした。

「あの、ここ通りたいんですけど」

「あぁ?何言ってやがんだ、てめぇ」

一番近くにいた男がガンを飛ばしてくる。典型的な不良だ。

「ここ以外にも道はあんだろうが。そっち通りやがれ」

「遠回りになるんですけど」

ぶらぶらしているだけなのでとくに遠回りも何もないが、このまま引き下がるのはシャクだ。“アクマでしたで”に出て、様子を伺う。だが、不良はそんな空気なんて、読んではくれなかった。

「あぁ?頼んでんじゃねぇんだよ、命令してんだ。消えやがれ」

「・・・」

プチッ、と何かがキレるような音が気がしたような。できるだけ穏便に片づけようとしていたのだが、仕方がない。

「そこどけって言ってんだよ」

「あぁ?てめぇ、そんな口きいていいと思ってんのか?」

不良がの胸倉を掴んだ、直後。ドサッと大きな音がして、その男はコンクリートに伏せていた。あまりのはやさに、他の不良たちは唖然としていた。

「そっちこそ誰に命令してるんだよ。したでにでてりゃいい気になりやがって」

その言葉で我にかえり、不良たちはを睨みつける。

「お前、自分がなにしたかわかってんだろうなぁ。ガリガリチビだからって容赦しねぇぞ」

私服まではスカートでないは、完全に男だと思われているようだ。ちょうどいい、男なら本当に容赦しないだろう。の口角が上がった。暇つぶしには、よさそうだ。

「Ora, per intrattenere ?」(さぁ、楽しませてよ?)

不良の大群が、動いた。





















埃をはらうように手をたたく音が1人分、そこらに響いた。その道路両脇には、気絶した男達。これで通れる、と足を踏み出したが、後ろから新たな足音がきこえてとどまる。

(仲間か?面倒だな。あっさりだったし)

口がいいわりに喧嘩はあまり強くなかった。これで第2ラウンドは面倒だ。

「これは、一体誰が・・・」

だが、ひとまずそう呟く声の主を見ようと、は振り返った。そこには、リーゼントに学ランの男・・・否、少年がいた。はちらり、と両脇の男達を見る。転がっている男達と違う制服、むしろ見覚えがあるような気がする。とにかく、彼らの仲間ではないということだ。相手にしなくてすむかな、とは少し気を抜いた。

「まさか、君が・・・?」

「そうだけど?」

「・・・素手で?」

「素手でボコったけど」

「・・・・・」

素手でこれだけガタイのいい男達をボコった小柄な人物を見て、彼は動揺と困惑としているようだった。

「何か?」

「・・・いや、そうか、助かった。こいつらは最近並盛で風紀を乱していたんだ」

「風紀?・・・あ」

そうだ、この男の制服、これは。

「やぁ、また会ったね」

「!!?」

背後から声がし、勢いよく振り向いた。そこには、わずかに口元を緩めている、雲雀がいた。

(また気配しなかった・・・)

本当に、何者なんだ、この男は。1度ならず2度までも気づかせないとは。

「ここで逢ったのも何かの縁だよね。この間の続きといこうか:

と、はいつのまに取り出したのか、トンファーを構える。

「遠慮しておくよ・・・」

「君に拒否権はないんだよ」

「無茶苦茶だって・・・」

じりじりと後ずさって行き、ついに先程の男のそばまで来てしまった。

「どいてなよ、邪魔だから」

「僭越ながら、委員長」

雲雀を「委員長」と呼ぶ男。やはりこの男は風紀委員のようだ。

「・・・何?」

「この子がここにいる輩をすべて1人で倒したようです」

「へぇ・・・やっぱり君、強いんだ。なおさら決着つけないとね」

雲雀の口角が上がり、チャキ、とトンファーが構えられる。

「遠慮するって」

「やはり、強いんですか?」

「覚えておくといいよ、草壁。彼女が“ ”だ」

草壁と呼ばれた男が、はっとして氷月を見る。

「この子が・・・」

「何?何が?」

困惑した表情でが雲雀と草壁を交互に見る。いつの間に、どんな噂をされているんだ。すると、草壁と目が合った。

「申し遅れました。俺は草壁哲也。風紀委員副委員長を勤めています」

「はぁ、 です」

会釈され、会釈しかえすが、なぜ態度が急変したのかがわからない。一体どんなことをきかされていたのかがすごく気になる。

「あなたのことは委員長から伺っています。ぜひ風紀委員に入れたい方だとか」

「・・・初耳なんですけど。ていうか、力一杯遠慮します」

が顔を歪めると、草壁は苦笑した。

「しかし、それにしても、あの が、こんな華奢な女子だったとは・・・」

「ねぇ、ほんとどんなこときかされてたの?すごく気になるんだけど!」

「話は終わったかい?」

だがその質問に答えてはもらえず、しびれをきらした雲雀がトンファーを手にして割って入った。

「げ!ちょ、待って恭弥!」

の言い様に草壁がぎょっとする。まさか雲雀を下の名前で呼び捨てする女子がいるとは思わなかったのだろう。だが雲雀は気にする様子などなく、口元に笑みを浮かべてトンファーを振るう。時折棍で弾きかえしながら、その追いかけっこは日が沈むまで続いたのであった。


















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イタリア語はネット翻訳でやっています。
合っているとは限りませんのであしからず・・・。






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