マドンナと熱血兄




















ある日の放課後。はまた校内を散策するため教室を出ようとした。が、それはとある人物によって阻まれた。

ちゃん、一緒に帰ろう?」

ちゃん・・・」

思わず口元がひくっと引きつる。呼ばれ慣れない呼び方に、妙な気分になった。

「あっ、ごめんね。急に名前で呼んで、嫌だった?」

「no.そうじゃなくて、その・・・“ちゃん”ってのが、呼ばれ慣れなくてさ・・・」

「そうなの?」

でも、嫌じゃなくてよかった!
そう言って笑うこの笹川京子には、勝てない気がする。ちなみに彼女は、ツナの想い人である。

「それで、どうかな?」

「別に、いいけど・・・」

「よかった!それじゃあ、帰ろ!」

純粋で清純な笑顔だなぁ眩しいなぁと思いながら、は教室を出る京子のあとに続いた。





















校門に行くと、もう見慣れた後ろ姿がいくつかあった。

「あ、ツナくん!」

「きょ、京子ちゃん!」

ツナ、獄寺、山本の3人だった。野球部である山本は、今日は部活は休みらしい。そしてもう1人、こちらはは初めて見る顔だった。

「お兄ちゃんも一緒だったんだ」

「お兄ちゃん!?」

「おぉ、京子!と、誰だ?」

左目の上に傷、鼻の頭には絆創膏、右手にはテーピング。明るいが大人しい方であろう京子とは反対に、快活でポジティブそうな兄だ。

「この間転入してきた、 ちゃん」

はたで獄寺の「ちゃん・・・だと・・・」という声がきこえたがスルーした。

「京子の兄の笹川了平だ!極限によろしく頼む!!」

(極限?)

熱い、いや、あつぐるしい。そんな印象をもった兄だった。


















あとから聞いた話、了平もファミリー候補なのだという。彼はボクシング部の主将で、その熱い心とパワフルなパンチが、リボーンのお眼鏡にかなったようだ。さらには先日対峙した雲雀も、リボーンは目をつけているらしい。獄寺、山本、了平、雲雀、氷月・・・この5人が、今の所のツナの側近候補というわけだ。

「おぉ、ではないか!」

「あぁ、了平」

今日は休日だ。学校外でも会うなんて、ファミリー候補の縁か?とは内心少し面白かった。

「了平はトレーニング中?」

「そうだ!極限、トレーニング中だ!」

「せいがでるねぇ」

シュッシュと拳を突き出す了平を見て感心する。なんだか身体を動かしたくなったは、ストレッチを始めた。

「お?もトレーニングするか?」

「ちょっと競争しようよ」

「よぉし!極限!俺が勝つぞぉ!!」

最後にぐーっと背伸びをし、準備完了だ。通り過ぎの人に「よーい、どん!」を言ってもらって、同時にスタートした。ボクシングはフィールドが広くない。持久力はあっても速さはそうでもないだろうと踏んでいたが、あまかったようだ。鍛えられた全身の筋肉は速さも持ち合わせているらしい。

(これは・・・キツイな)

気合いの叫びを発しながら駆ける了平をすぐななめ後ろに見、は全力疾走した。これでもスピードには自信があるのだ。負けてなるものか。最後にさしかかるのは神社の階段。ゴールはこの階段上だ。

「極限〜〜〜〜〜!!!!」

叫びながら、了平がスピードを上げた。トレーニングにこういった長い階段を使うことはよくある。了平もその1人なのだろう。慣れた階段を猛ダッシュで上がって行く。

「負け、ないっ!」

も意地で駆けあがった。もう少し、どちらが勝つか。ダンッと最後の段を先に踏みしめたのは、了平だった。

「極限勝ったぞ〜〜〜!!!」

「はぁーーーー・・・まさか負けるとは・・・」

「やるな!女とは思えんぞ!!」

「そりゃどうも」

息の整えと筋肉のほぐしのために少しだけ歩いて、は地面に腰をおろした。

「いいトレーニングになった。礼を言うぞ!」

「こちらこそ」

熱く、あつすぎるくらい熱い男、笹川了平。まだまだわからないが、彼が真っ直ぐな性格であることはわかったであった。



















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