並盛最強の男



















並盛中に転入して3日。は校内で迷子になっていた。授業をサボって散策していたバチがあたったのだろうか。大きくため息をついて歩き出そうとした。

「こんなところで、なにをしているんだい?」

という声をきくまでは。
は勢いよく振り向いた。その表情は驚愕に満ちている。

(今、私が気配を感じられなかった・・・?)

何者だ、こいつ。
並盛中の既定の制服はブレザーだが、この男は学ランを羽織っている。その左腕には、“風紀”の腕章。何より幼い頃から戦闘訓練を受けてきた自分に気配を感じさせなかった事実。は無意識に腰のポーチに手をかけていた。

「今はもう授業中だよ。堂々とサボリかい?」

「・・・迷ってしまったんだよ」

「あぁ、転入生ってやつかい?仕方ないね・・・とでも、言うと思った?」

「!?」

急に繰り出されたソレを、は三節棍でなんとか受け止めた。

「ワオ」

「・・・これが、校内で迷った生徒に対する風紀委員の接し方?」

「君、やるね、気に入ったよ」

「は?」

の言葉をまったくきいていない。彼はどこから出したのかわからない仕込みトンファーを次々に繰り出してきた。そのはやさと鋭さに、は防ぐので精一杯だった。

(なんだ!?こいつ、強い・・・!)

反撃するも、棍を組み立てる暇もない。どんどん後方に追いやられていく。そして、ついに階段まで追い詰められた。一歩後退したら落ちるであろうその位置。はそれを、利用した。

「!」

後ろに飛びのいたの眼前で彼のトンファーが空を切る。は踊り場に着地し、棍の組み立てにかかった。彼がその隙を逃すまいと駆け降りてくる。それは、一瞬の差だった。

「・・・」

「・・・」

彼のトンファーがに届く前に、リーチの伸びた棍が彼の喉元をとらえていた。

「・・・ほんと、気に入ったよ、君」

スッと彼のトンファーがおろされる。

「君、名前は?」

「・・・ 。というか、あんたは誰?」

「僕は雲雀恭弥。並盛の風紀を正す、風紀委員長だよ」

雲雀恭弥と名乗った彼は、もう戦う気がないのか、トンファーをおさめた。それを見ても棍を解体し、ポーチに戻す。

「あのさ、きいていい?」

「なんだい?」

「なんで風紀委員長が風紀破って学ラン着てるわけ?」

「文句でもあるの?」

雲雀はまたトンファーを出しそうな目つきでを見た。

「いや、カッコイイなと思って」

「・・・」

の発言に雲雀は沈黙した。そして背を向けて歩き出す。と思えば、立ち止まった。

「?」

「なにしてるの、ついてきなよ」

「え?」

「迷ってたんだろう?教室まで連れて行ってあげるから、きなよ」

「え、あ、あぁ」

氷月は雲雀の変わり様に戸惑いつつも、彼の後について行った。



















教室に着き、は雲雀を振り返った。

「ありがとう、助かったよ」

「別に。僕は群れるヤツは嫌いだけど、君の事は気に入ったからね」

そう言って雲雀は去って行った。気に入られた、というのは戦って、という意味だろうか。厄介な相手に気に入られたかな、とは乾き笑いを漏らした。その後。

「ちょっ、!なんで雲雀さんと!?」

「え?いや、校内で迷っちゃってさ。あの人が案内してくれたんだよ」

「あいつが!?」

「まさか!?」

「まぁ、一戦交えたけど」

「ええええ!!?」

「お前、よく無事だったな・・・」

驚愕の声を上げるツナと同じく驚いている獄寺に、は首を傾げるのだった。














そして翌日。
のもとに、風紀委員のよって学ランが送られてきて、また周囲が騒然とするのであった。





















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