中学三年生の受験先
















中学三年生は高校受験真っ盛りの頃。は嬉しいような、悲しいような知らせを聞いた。


「廉が西浦を受ける!?」


廉、というのはの一つ下の弟の事だ。彼は今、群馬県で祖父が理事長を務める、三星学園の中等部にいる。三星学園は高校へエスカレーターでいける。しかし彼がそうしなかったのには訳がある。はその訳を知っているため、嬉しい反面、悲しいのだ。だがやはり弟が同じ高校、しかも自分が手伝っている新設硬式野球部ができる年に入ってくる嬉しさの方が強かった。まだ受けたわけでも、受かったわけでもないのに、は胸を躍らせていた。














母から受けた知らせを本人から直接聞くため、電話をかける。何度かのコールが鳴り、相手が出た。


『もしもし・・・?』

「あ、廉?あたし」

『ねえちゃん』

「うん。きいたよ、高校の事。西浦受けるんだってね」

『う、うん・・・』

「あんたが三星を出る訳はわかる。・・・後悔はしてない?」

『・・・して、ないよ』

「・・・修になんか言われたでしょ」


ビクっと震えたのが、電話越しでもわかった。


『な、なんで・・・』

「なんとなく。修ならなんか言うと思って。あたしは、あんたが後悔しないならいいけどね。帰って来てくれるの嬉しいし」

『・・・・・』

「野球は?続けるの?」

『う・・・わかん、ない・・・』

「・・・そっか。まぁ、廉の好きにしたらいいよ。あんたの人生だし」

『・・・うん』

「ちゃんと勉強しなさいよ。三星と違って勉強しないと入れないんだから」

『う、うん』

「じゃ、またね」

『うん。おやすみ・・・』

「おやすみ」


電話が切れる音を聞き、は携帯電話を閉じた。


「・・・ま、あんたが野球無しで生きていけるとは思ってないけどね」


それは今後の彼の行動を予想した言葉だった。

















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