下忍となる9人が決まった夜。担当上忍である、はたけカカシ、猿飛アスマ、夕日紅、そして彼らと縁深いは、4人で居酒屋に来ていた。
「みんな無事合格できたようね。安心したわ」
「お前の大事な妹分、弟分がいるからな」
「そうなのよー。ヒナタもサスケも無事に下忍になれてよかったわ」
日向ヒナタ。紅班のくのいちで、日向一族宗家の娘だ。同じ木の葉の里の血継限界を持つ者として、サスケ同様ヒナタやその従兄で昨年下忍となったネジとも交流を持っている。それゆえも心配していたのだった。
「アスマの班には誰も知ってる子いないんだっけ?」
「えーと、1人、わりと最近知り合った子が」
「ん?誰だ?」
紅の問いに答え、アスマの疑問に「シカマル」と答える。木の葉の古い一族である奈良一族の奈良シカマル。さぼっていたところを発見し、少し話をした仲だ。
「他の子達とも関わる機会あるかな?」
「何?あんた担当したかったの?」
「いや、それはいい」
紅の言葉をあっさり一蹴すると、アスマが「ははっ」と笑った。
「お前は下のモンに教えんの苦手だからな」
「それヒルゼン様にも言われた」
「ム・・・」
三代目火影である猿飛ヒルゼンは、アスマの父だ。父とかぶったことを複雑に思ってアスマの口がへの字に曲がる。
「まぁ仕方ないでしょ。にとって火影様は“父親”で、アスマは“兄貴”なわけだし」
言ってを見るカカシに視線が集まる。確かにそうなのだが。
「お前の口からそれをきくとはなぁ」
「どういう意味よ?」
「いや、深い意味は無い」
カカシに軽く言うと、アスマは酒をあおった。小さく首を傾げるカカシを見ては小さく笑みを浮かべ、こちらもお猪口をあおった。
「呑みっぷりまでそっくりって?」
「いや、コイツは弱いぞ」
「知ってる」
何度も一緒に呑みに行っては潰れたのを家まで送ってる、というカカシの発言に、3人ともが固まった。そしてアスマと紅がカカシに急接近して詰め寄る。
「お前っ!まさかに手を出してはいないだろうな・・・!?」
「あのねぇ、俺のこと何だと思ってくれちゃってんの?」
「だっ、だってあんた」
「ちゃんと理性はありますー。・・・必死だけど」
「!!!」
最後にボソッとこぼされた言葉に反応して、紅がの前に立ちふさがった。今までかたまっていたがはっと我に返って「ああああの」とどもり声を出す。
「ほ、ほんとに大丈夫だから!つぶれはするけど、ちゃんと意識はあるし!記憶とんでないし!」
「幻術だったらどうするの!」
「紅ひどくない?」
「つーかつぶれるまで飲ませるなよ」
「だってがいつの間にかつぶれるまで飲んでんだもん」
俺のせいじゃないし、と言うカカシを後ろでききながら、アスマと紅の顔がに向く。はというと明後日の方向を向いて乾き笑いをもらしていた。
「お前なぁ・・・」
「いやぁ、お酒が美味しくてつい」
「ついじゃないだろ!自分の限界をしっかりはかれ!」
「は、はかってるから意識あって記憶もとんでないんじゃないの!」
「自分の足で歩けないならはかれてないも同然だ!」
ギャンギャン言い合う義兄妹を咎める者はいない。ここは居酒屋で、にぎやかで、気にするものはほとんどいないからだ。気にする者がいるとすれば、彼らの知人が珍しく喧嘩しているな、と目を向ける程度である。実際身近にいるカカシと紅も、目をぱちくりさせていた。
「久しぶりに見たなぁ、2人がこんなに言い合うの」
「そうね。確かにご無沙汰たったかも」
「ま、喧嘩するほど仲がいいってやつだな」
「そうね」
しばらくの間2人はこの義兄妹の口喧嘩を微笑ましく見守り、ヒートアップして手が出そうになった所を必死に止めたのであった。
ほどよい時間とほどよい酔いになり、一同は解散した。アスマは紅を送って行き、カカシはを送って行く事に。送り狼になるなよ、はお互いに言えることなのでどちらも口にはしなかった。
「今日は酔いきってないわよ?」
「いいじゃない、送らせてくれても。ちょっとでも長くといたいしさ」
「・・・ふーん」
がスイ、と目をそらす。頬がほんのり赤いのは、酔いか、照れか。
「ところでさ、来週ヒマ?」
「暇・・・かと言われればまぁ非番の日もあるだろうけど」
「ちょっと付き合ってくんない?」
「?」
首を傾げると、カカシの右目がおもしろそうに弧を描く。「え、何」と言うと、カカシはちょいちょいと手招きし、の耳に口を寄せた。
「―――」
「・・・何それ面白そう!」
パッとの顔が明るくなる。その反応を見てカカシはうんうんと頷いた。一気に来週が楽しみになったは、意気込んで帰宅したのであった。