麗しの上王陛下
晩餐会の会場にはすでにグウェンダルとヴォルフラムがいた。
「やはりにはそちらの方が似合う」
「それはどーも」
うんうんとうなづくヴォルフラムに苦笑しながら答え、グウェンダルに向く。彼もこくんとうなづいた後だった。
「そうそうグウェン。3コほど増えてたけど」
「・・・嫌だったか?」
あの編みぐるみの製作者が、いつも眉間に皺を寄せた強面のグウェンダルだとは、普通は思いもしないだろう。
「ううん、可愛いからいい」
「そうか」
グウェンダルはほんの少し不安そうな顔をしていたが、私の返事を聞いて安心したように息をついた。
少しすると、ユーリたちが入って来た。ユーリが私を見て首を傾げる。先ほどとは姿の違う、私を見て。
「あれ、あんたは?まさかコンラッドたちの妹ってわけじゃないよな」
「陛下、彼女は」
コンラッドが説明しようとするのを手で制して、私は薄く笑った。
「“お初にお目にかかります”、陛下。私は、ヴェル・と申します」
「へ?」
「以後、お見知りおきを」
「・・・えぇぇぇ!!?」
名乗ってからまたにこりと笑ってみせると、ユーリは大声を上げた。やはり、私だと気づいていなかったらしい。珍しいものを見るように下から上までじーっとみられる。
「うーわー、なんか別人だなぁ。髪染めてカラコン?」
「うん」
「、そんな奴の相手をするな」
「やめなさい、ヴォルフ。ほらユーリ、席について」
「あぁ、うん」
また悪態をつくヴォルフラムを軽く睨み、ユーリを席に座らせる。王族でない私は眞王陛下の晩餐会の席につけないので、座ったユーリの斜め後ろに立った。コンラッドがグウェンダルとヴォルフラムをユーリに紹介する。ヴォルフラムの行動は不快なものがあったけれど、その場は我慢した。その流れで、コンラッドが自分が十貴族でないわけにいく。
「俺の父親は人間だったんです。剣以外何の取り柄もない、薄茶の髪と瞳で、無一文の」
コンラッドが自分の父親の事を締めくくった、その時。
「そしてとってもいい男だったの」
新たな人物が彼の父親について語った。
「ツェリ様」
「母上!」
「母上!?」
ユーリは彼女を“母”と呼んだヴォルフラムと、ツェリ様を何度も交互に見た。ただ見た目から驚いたのではなさそう。どこかですでに会っていたのだろうか。ツェリ様はまず身近にいた
次男に抱きついて、親子らしからぬ会話を披露した。確かにツェリ様は綺麗で美しい方だけど、息子が母に向かって「麗しい」って・・・。続いて
長男、そして
三男。三男に至っては見事な親バカ子バカっぷりを見せてくれた。次はユーリ・・・かと思いきや。
「っ」
「えっ?」
ツェリ様はユーリの後ろに控えていた私に抱きついてきた。
「、久しぶりね。ますます可愛らしく美しくなって!多くの殿方が放っていないのではなくて?でもやっぱりには、ぜひあたくしの娘になってもらいたいわ。三人のうち、誰でも好きな子でいいのよ。結婚してあたくしの娘になってv」
またこの話か。久しぶりに会うといつもこれだ。
「ツェリ様、前にも申し上げましたように、私は今のところ誰とも結婚する気はありません」
「もーう!の今のところはっていつまでなの?でもでも、嫌ではないのでしょう?が三人のこと大好きだって、よぉーく知ってるものv」
「・・・・・」
ツェリ様、こんなところでそんな恥ずかしい事言わないでください。三兄弟のみならず、ギュンター、さらになぜかユーリまでもが私をじっと見ている。なんで?
「考えておいてねv」
「・・・はい」
負けて返事をすると、ツェリ様は嬉しそうに笑ってユーリの元へ。ユーリはツェリ様と湯殿・・・風呂場であったとの事。魔王専用の風呂だから、ツェリ様は「いつものクセで」とか言って入っちゃったんだろうな。この方ならやりかねない。
「ね、ユーリ陛下、恋人はいらして?」
「そこまでです!」
「やぁーん」
少しユーリがやばくなってきたところで、ギュンターがツェリ様をユーリから離した。その表情には少々怒りが含まれているような?
「新魔王陛下と恋に落ちるのはおやめください、上王陛下!」
「いやーねぇ、ギュンター。をあたくしの息子にとられるのがそんなに嫌なのかしら?」
「そ、そういうことではありません!私は、前魔王陛下が新魔王陛下を愛人に・・・いえ失礼、恋人にするような不適切な関係はさけたいのです」
どもるってことは図星ですか叔父上。
「前魔王?この・・・彼女が?」
ツェリ様が微笑んでユーリに手を差し出した。
「眞魔国へようこそ、ユーリ陛下。あなたの先代にあたる、フォンシュピッツヴェーグ・ツェツィーリエよ。ツェリって呼んで。ツェ、リ。王位を退く事を、お兄様は考え直すようにっておっしゃるけど、恋愛も自由にできないなんてもううんざり!」
ユーリの方もうんざりしてそうだ。
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