ようこそ、眞魔国へ
王都の門が開かれ、懐かしさに思わず顔が緩む。前帰ったのはいつだろうか。
「おかえりなさい、陛下。あなたの、そして我々の国である、偉大なる眞王とその民たる魔族に栄えあれああ世界の全ては我等魔族から始まったのだということを忘れてはならない創主たちをも打ち倒した力と叡智と勇気をもって魔族の繁栄は永遠なるものなり、王国、王都にようこそ」
・・・これも懐かしい、ね。覚えさせられた時の記憶がよみがえる・・・。
「略して眞魔国」
「思い切った略し方よね。まぁ、眞魔国の方だけ覚えておけばいいから」
「そのつもり」
ハナから正式名を覚えるつもりはないらしい。
住民たちが頭を下げるのに合わせて、ユーリは律儀に頭を下げる。ギュンターには「もっと威厳をおもちになって」と言われる始末。みなさんこれが新王です。とっても気安い方です。ユーリは色んな容姿の人たちに興味津々のようで、ギュンターから“緑色の髪の人”の説明を受けていた。
「じゃ、じゃあ、あの紫の髪の人は?」
「湖畔族です。生まれつき魔力の高い者が多いのです。お気づきかも知れませんが、陛下、私とも湖畔族の血を受け継いでおります」
「スミレ色の瞳がそうなのかぁ。あれ、でもは?」
「私は外見はとう・・・父上の血を多く継いでいるらしくて」
父さんと言いかけたところをギュンターに睨まれ、訂正する。細かいなぁ。
「母上が湖畔族の血を・・・というか、母上はギュンターと同じ血を持っているの」
「へー・・・え、の母さんつまり瑠璃さんがギュンターと同じ血つまりきょうだい!?」
「はい。の母ルシェリーは、私の姉です」
「じゃあ、ギュンターはの・・・」
「<b>叔父b>」
「・・・うっわー・・・世の中わかんないもんだな・・・」
私と叔父上似てないしね。まぁ、世の中分かんないことだらけよ。
「母さんに会った時ギュンターを思い浮かべてみなよ。似すぎて<b>笑えるからb>」
「・・・覚えとこ」
そんなこんなで王城到着。王城の名は『血盟城』。血判を押したのではないのであしからず。
「なぁ」
「何?」
「どうしてここの人たちは大抵“フォン”とか“卿”とかがつくんだ?」
「この国は王の直轄地と魔王に従う十貴族の領地に別れていて、フォンは十貴族の姓につくの。治めている地方名の頭にフォンがつく。ギュンターはクライスト地方を治めている十貴族の出だから、フォンクライスト卿。卿がつくのは、戦場に赴く者だから。戦う意思があるなら、成人するとそう呼ばれるようになる。男も女も関係なく寝。ちなみに私の姓につく“ヴェル”は、“フォン”のつく十貴族と同等の位にある証なのよ」
「へー・・・」
私にしては長い説明だった。これでも簡潔にしたつもりだけど、ユーリの頭に入りきったかな。物覚えはいいはずだけど。
「話変わるけど、フォンシュピッツヴェーグ卿シュトッフェルの口車には乗らないでね」
「誰?」
「前魔王陛下の兄君で、摂政として権力をほしいままにしていた男よ。前王が辞意を表明した今、ユーリに取り入ろうとするかもしれないから」
「わかった、覚えとくよ」
数秒後、ユーリを乗せた闇毛のアオ(命名ユーリ)が暴走した。猛スピードで駆けていく彼女を、慌てて追う。
「今さっき、ブーンって聞こえた気が、するんだけどっ」
「さすがの俺にも、花アブが耳に、入るとこまで、想定した訓練は、してなかったなっ」
「ユーリっ、手綱引いてー、腿で挟んでーっ!とりあえず落ちるなーっ!」
「陛下ぁーっ!!」
アオは城に向けてどんどん走って行く。
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